File148 惑星フェザーフへの貨物輸送① 貨物輸送業者の仕事の7割はチェック(点検と確認)作業
軌道エレベーターのロビーはかなりの人間がひしめき合っていた。
よく考えれば昇る人がいるなら降りる人だっていたわけだから、その被害者人数は相当な数になるだろう。
天災か人災か微妙な今回の事故は、責任の所在で今後かなりもめそうだな。
ともかく上にあがる列に並び、順番を待つことにする。
するとやはり、『事故のせいで取り引きが駄目になったどうしてくれる?』だの『ホテル代が余計な出費になった金払え』だの『待たされて不愉快だ!慰謝料を払え!』だのとわめく連中が続発していた。
そういう連中を、職員が別室に連れていってくれるのはいい判断だとおもう。
そのままだとうるさくて仕方ないからな。
そうしてかなりの時間待たされた後に俺達の順番がやってきて、無事に宇宙港に戻ってくることができた。
軌道エレベーターの列に並んだのが朝8時30分。
そして宇宙港に到着した現在の時間は午前10時30分。
食料のほうは、俺とアディルだけなら十分に余裕があるから補充の必要はないし、依頼の受注と搬入を急げば、正午過ぎには出発できるだろう。
アディルに船の補給や整備を任せて、俺は仕事を受けるべく、銀河貨物輸送業者組合の貨物配達受付に向かった。
「いらっしゃいませライアット様。昨日は大変でしたね」
惑星スティエージの貨物輸送業者組合の受付嬢は、疲れた感じながらも笑顔で対応してくれた。
「知り合いに泊めてもらわなかったらエレベーターホールで寝泊まりだったよ」
「こちらも大変でしたよ。『緊急事態なんだ!貨物船をタダで貸せ!』とか銀河貨物輸送業者組合を軌道エレベーターの管理部と勘違いして『責任者をだせ!慰謝料を払え!』とか喚く人もいましたし」
こういう時に一定のバカが湧くのはどこも一緒か。
「御用件は依頼の受注ですね。では腕輪型端末をどうぞ」
受付嬢は軽く咳払いをしてから、仕事の話を始めた。
俺が指示通り検査機に腕輪型端末をかざす。
『身分証明確認。各身体データ確認。本人と確定』
検査機は、縦45cm✕横60cm✕高さ100cmほどのボックスの上中央に、縦50cm✕横40cm✕厚さ2cmほどの長方形の板が斜め85度に設置されている。
大抵はカウンターに埋め込まれる形で設置されているため、カウンターの上に出ている斜めの板だけを検査機と勘違いしている人も多い。
検査機の正面に立ち、通常の汎用端末なり腕輪型端末なりを板にかざすと、身分証明書のチェックと同時に、顔認証・眼球の虹彩と眼球血管・端末を持っている手から指紋・静脈・DNAをチェック。
全身及び腕や目をサイボーグ化している人の場合は、脳波を測定して本人を特定する。
その全てのチェックにOKがでなけれは、仕事の受注や報酬の受け取りができなくなるという、高い保安性を誇っている。
そしてなにより、『応対する受付嬢の人を見る目』という、機械には真似出来ない保安能力も控えている。
なお身体や眼球、指紋の欠損。全身のサイボーグ化などがあった場合は、指定医療機関での受診と診断書及び使用義肢の明細書・関係者からの聞き取り調査などを経て、新規登録もしくは再登録する事なる。
その高い壁を乗り越え、
「はい結構です。一覧をどうぞ」
ようやく無事に仕事にありつけるわけだ。
「そうだな…じゃあこれとこれと…」
俺は同じ目的地で同じ配達期限の貨物を、ホワイトカーゴⅢの積載重量480tを越えないように依頼をチョイスしていく。
「ええと。全て惑星フェザーフ行きで『工業部品a』『工業部品b』『日用雑貨』『繊維』『プラスチック品』以上5品目、総量で474tの貨物輸送の受注でよろしいですね」
「はい、お願いします。搬入は30分後にお願いします」
「了解いたしました。では、よろしくお願いします」
受付嬢の言葉と同時に、全ての貨物の依頼書が俺の腕輪型端末間に送られてきた。
俺はすぐに停泊地に戻り、貨物の受け入れ準備を始めた。
燃料補給や航行に必要な各部のチェックはアディルがしてくれているので、俺がまず準備・チェックするのはコンテナのストッパーだ。
これがしっかり機能しないと、船内でコンテナが暴れて大変な事になる。
「失礼致シマス。ショウン・ライアット様ノ停泊地ハコチラデオ間違イ無イデショウカ?」
そこに、俺が依頼を受けた貨物が貨物搬入用ドロイド達によって運び込まれてきた。
この貨物搬入用ドロイドには、アディルの様なバイオロイドはもちろん、オルランゲアにいる『女性型アンドロイド・OHー328T:識別個体名ミツハ』のような全身外骨格の様な人間タイプ。
旧時代から使われていたようなずんぐりむっくりな一目でロボットとわかる二足歩行タイプ。
車輪と歩行を使い分け、貨物の牽引から人間の移動まで請け負う多足タイプ。
そして今目の前にいる、多機能な円筒型など様々なタイプがある。
「ああ、間違いない」
「デハ依頼書ヲ確認サセテイタダキマス」
「はい。じゃあスキャナーをよろしく」
「了解デス」
搬入されるコンテナはまずスキャナーをかける必要がある。
コンテナ内に爆発物や麻薬、その他違法なものが持ち込まれていないか確認するためだ。
船にもハンディタイプを用意しているが、宇宙港の貨物搬入用ドロイド達の使用している貨物用移動板には大型スキャナーを搭載しているので頼んだ方が早い。
特にこの多機能な円筒型は自分自身にスキャナーを搭載していたりする。
それで異常がなければ早速搬入だ。
ちなみに円筒型のドロイド達が、搬入用のフォークリフトに搭乗(搭載?)した状態でせっせとコンテナを運びいれている光景は、なんとなく微笑ましく思えてしまう。
「搬入終了。チェックヲオ願イシマス」
「はいよ」
全部のコンテナを運び入れ、ストッパーによるコンテナの固定を確認したあとは、貨物搬入用ドロイドの提示する受取証書にサインをする。
「相手方ノ受取ヲ確認。引渡シヲ完了シマシタ。ソレデハ良イ航海ヲ」
そうして貨物搬入用ドロイド達が居なくなったら、貨物室内部や周囲をチェックしてから貨物室の扉を閉める。
それから操縦室に入ってまずやらないといけないのは、各計測機器のチェックだ。が、今回はアディルが全部やってくれていた。
「マスター。燃料・船体外壁・全計測機器、異状無しです」
「了解。再度チェックする」
これはアディルの仕事を信用してないわけではなく、操縦室に2人座るのなら、2人共がチェックをするのが当たり前の事だからだ。
今までは自分1人だったから1回でおわらせていただけだ。
「チェック終了。異状無し」
俺の方のチェックが終了すれば、いよいよ最終段階だ。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』。出港許可を求む」
まずは管制塔に出港許可をもらう。
これをもらわずに勝手に出港すると、事故にあったとしても保険などが適用されなかったりする。
まあ、犯罪者になったジザン・ヤウサルは平然とやってたがな。
あいつが事故らなかったのは、たまたま相手が上手く避けてくれただけであの犯罪者の腕がいいわけではない。
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅢ』出港を許可する。下での休暇はどうだった?』
「了解、管制塔。軌道エレベーターがデブリとデートしなけりゃさらによかったよ」
今回は管制塔から早めに許可がでた。
混み合ってる場合は30分以上も待たされたりする事もある。
そして許可が出たなら、他に迷惑をかけないように素早く出港する必要がある。
「エンジン点火。微速前進」
宇宙港の外縁部までゆっくりと船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動すると、エネルギーチャージを開始する。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星フェザーフ。エネルギーチャージ開始」
エネルギーチャージは、ホワイトカーゴⅠ・Ⅱだと3分程、ホワイトカーゴⅢだと1分でチャージが完了する。
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
ジャンプすると回りの景色がねじ曲がり、オレンジの鈍い光のトンネルに入る。
これが超空間だ。
「超空間に侵入。これより自動航行装置に移行する」
ジャンプの瞬間は緊張するが、超空間に入ってしまえば、あとは自動航行にお任せだ。
惑星フェザーフまでは1000光年だが、距離を10分の1にする超空間を利用すれば100光年。時速1光年なら4日と4時間。
その間何もトラブルが起きなければ、実に平穏な時間になるわけだ。
貨物搬入用ドロイドのイメージ
アンドロイド&バイオロイド=人間そっくり
全身外骨格の様な人間タイプ=ファ○タシー○ターシリーズのキャ○ト
一目でロボットとわかる二足歩行タイプ=人間サイズのモビ○スーツ
車輪と歩行を使い分け、貨物の牽引から人間の移動まで請け負う多足タイプ=タチ○マ
多機能な円筒型=R2○2
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