File145 惑星スティエージへの貨物輸送からの休暇③ おばさんという表現は甥・姪本人以外から言われると腹が立つ。って人は意外にいる
「「「「「「お帰りなさいませ。御嬢様」」」」」」
都市の郊外にあったリオアース家所有の巨大なお屋敷の内部に入ると、綺麗に整列した40人程のメイドさん達が、一矢乱れぬ綺麗なお辞儀で御嬢様を出迎えた。
俺はその光景に圧倒されたが、御嬢様と変態執事は平然としていて、アディルはなぜかその綺麗なお辞儀を真似しようとしていた。
「ただいま。軌道エレベーターの事故は聞いてる?」
「はい。旦那様と奥様がおいでになれないのは残念ですが、事故に巻き込まれなかったのは幸いです」
御嬢様の問いに答えたのは、責任者らしい20代後半くらいのメイドさんで、役職としてはメイド長といったところだろうか。
「その軌道エレベーターの被害を被った知人を連れてきたわ。よろしくお願いね」
「かしこまりました」
御嬢様がそう俺達を紹介すると、メイド長は承諾の意を示し、俺達に視線を向けてきた。
そうしてお互いが挨拶をしようとしていた時に、車のエンジン音が響き渡った。
そしてそのエンジン音が止まると、正面玄関の扉が勢いよく開かれた。
「はぁい!お久し振りねレイアナちゃん!トーマスも久しぶりね!あ、ヴェロニカも久しぶりね!」
そうして現れたのは、スニーカーにジーンズにダウンジャケット、その上からカメラマンがよく着ているポケットのいっぱいついたベストを着た、30代ぐらいの女性だった。
女性の様子からして御嬢様達とは知り合いのようだが、その女性を見た瞬間、御嬢様・変態執事・メイド長・メイドさん達全員が驚愕の表情を浮かべていた。
しかしすぐに御嬢様が意識を覚醒させ、
「叔母様!」
と、謎の女性に声をかけた。
「叔母様じゃなくてルビオラさんでしょ?レイアナちゃん♪」
「御父ひゃまの妹なんひゃから、私から見たら叔母ひゃまよ!」
「わかってるけど『おばさま』って響きが嫌なの!」
ルビオラなる謎の女性は、御嬢様のほっぺたを引っ張り、怖い笑顔を浮かべていた。
さっきの会話からCEOのガリウス氏の妹らしいのは理解できたが、彼女もリキュキエル・エンタープライズ社の役員なんだろうか?
このままでは埒が明かないので、変態執事に質問した。
「えーと…あの女性は?」
すると、俺に質問された変態執事ではなく、ほっぺた引っ張りから解放された御嬢様が質問に答えてくれた。
「この方はルビオラ・リオアース。フリーのルポライターで御父様の妹で私の叔母です」
「レイアナちゃん。『おばさま』は止めなさいって言ったでしょ?」
「いひゃいいひゃい!」
すると叔母様がまたもやほっぺた引っ張りを再開した。
「レイアナ様、ルビオラ様。つもるお話はエントランスではなくリビングでどうぞ。それにお客様を立たせたまま長話はよくありませんよ。お客様こちらへ」
2人の話が長くなると判断したメイド長さんが2人の話を遮り、俺達をリビングに案内してくれた。
そこで、まだ自己紹介をしていないのを思いだし、慌てて挨拶をすると、
「えー。軌道エレベーターの事故で宇宙港に戻れなくなったところをレイアナ嬢に声をかけられた貨物輸送業者のショウン・ライアットです。こっちはパートナーでバイオロイドのアディルです。挨拶が遅れて申し訳ありません」
「私はルビオラ・リオアース。フリーのルポライターよ。私の方こそ挨拶が遅れてごめんなさい」
ルビオラ嬢も同じように挨拶をしてきた。
「ところでルビオラさんは何故こちらに?」
御嬢様が、訝しげにルビオラ嬢に質問を投げかけた。
どうやら彼女の訪問は、彼女にも屋敷の人間にも予想外だったようだ。
「仕事で惑星スティエージの色んな施設やなんかを取材してたのよ。それで今日の分の取材が終わって宇宙港のホテルに帰ろうと思ったら、そちらのお2人と同じく例の事故でしょ。おまけに下では宿が取れなくて。仕方ないから兄さんに許可貰って管理人に別荘開けて貰ってコンビニご飯でもと思ったらここ使う予定があってレイアナちゃんが先乗りしてスタッフも居るって聞いたから、宿泊の許可を貰ったのよ。兄さんと御義姉さんも来てるとは思わなかったけど」
フリーのルポライターというだけあって、なかなかアグレッシブな人らしい。
そこに御嬢様がさらに声をかける。
「でも御父様に連絡したのなら、シャトルをチャーターしていただけばよかったのでは?」
娘に2人きりを勧められたリオアース夫妻はともかく、彼女もリオアース家の人間なのだから、ガリウス氏に頼めばシャトルぐらい用意してくれるだろう。
「なにかの緊急事態なら頼むかも知れないけど、これくらいでシャトルのチャーターをねだったりはしないわよ。ホテルには事故でもどれないことを連絡しておいたしね。それにいざとなれば軌道エレベーターのホールで寝泊まりくらい出来るわよ」
しかし彼女はそれを頼まず、惑星上で過ごす覚悟は出来ていたらしい。
なかなか逞しい人のようだ。
「そう言えば兄さんも御義姉さんも一緒って珍しいわね」
「はい!御父様も御母様も長めの休暇を取ってくれたんです!水晶鯨ウォッチングに行く予定なんですよ!」
やっぱり両親が来てくれるのは嬉しいのか、御嬢様はキラキラした笑顔を浮かべていた。
「私は明日は犬ぞりの取材よ」
「いいなあ私も行きたい!でもホエールウォッチングがあるから残念です」
「動画はしっかり撮ってきてあげるわよ!」
御嬢様との会話から考えると、この叔母様との関係はなかなか良好らしい。
家族・親戚で骨肉の争いを繰り広げる連中もいるのだから、それに比べれば非常に良いことだ。
「そう言えばレイアナちゃん。どうして、貨物輸送業者のライアットさんだっけ?この人と知り合いで、困っているからって別荘に呼んだの?」
ルビオラ嬢の発言はもっともだろう。
副社長を務めているとはいえ、10歳の女の子が成人の知り合いを別荘にまで連れてくるのは普通じゃあり得ない。
ルビオラ嬢としては警戒して当然だ。
「ライアットさんは、私も御父様も御母様も御世話になった事があるんです。それにお料理が凄くお上手なんですよ!」
そのルビオラ嬢の警戒ぶりを吹き飛ばす勢いで、御嬢様は俺が何者か説明をする。
「そう言えばそのお名前は何度か伺った事がございますね」
御嬢様のあまりのキラキラっぷりにメイド長さんが話に入ってきた。
「申し遅れました。私はリオアース家の家政を任されております、ヴェロニカ・ルクホスと申します」
メイド長さんは完璧なカーテシーをみせ、
「御嬢様がそこまで入れ込み、旦那様や奥様からも賛辞をいただいたお料理を、是非とも披露していただきたく思いますわ」
笑顔でこちらを見つめてきた。
「そうねえ。レイアナちゃんがそこまで言う料理って食べて見たいわ」
メイド長の言葉にルビオラ嬢までが便乗し、俺を笑顔で見つめてきた。
所用があり投稿の暇がありませんでした…
申し訳ないです
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