File143 惑星スティエージへの貨物輸送からの休暇① 短い休日とナンパへの対処法
スキーの技術関係の表現が間違っていたので訂正しました
『化粧餅』の味見を終えて船に戻ると、丁度依頼の荷物が運ばれて来たので、直ぐに積み込みを開始した。
そして積み込みが終了した13時には、直ぐに惑星ヤルマドを出発した。
目的地の惑星スティエージまでは3日と8時間。
客も乗らず、なんのトラブルもない、実に平和な航海だった。
最初は買いすぎたかとも思った『化粧餅』は、航海の間のいいおやつになってくれた。
惑星ヤルマドから800光年離れたこの惑星スティエージは、大気は呼吸可能で海があり、危険な生物は余りおらず、広い雪原に青々と葉を揺らす木々が生い茂る、宇宙空間から見れば白と緑と青のコントラストが美しい惑星となっている。
が、広い雪原とあるように、この惑星は常に寒い。
恒星からの絶妙な距離のせいで、もっとも暖かいとされる夏の時期の赤道上でも摂氏2℃。極付近では-40℃。
これが冬になれば、赤道上でも摂氏-8℃。極付近では-50℃。にまでなる。
どうして水が完全に凍ってしまわないのかは、いまだ解明されていない。
そんな極寒の惑星に人が集まってくるのは、この星が年間を通してウィンタースポーツが楽しめるからだ。
惑星全体がスキー・スノーボード・スケート・バイアスロン・犬ぞりレースといったウィンタースポーツの会場みたいなもの。
スポーツでないなら、氷上での釣り・雪像作り・地吹雪体験・砕氷船による観光クルージングなんかもある。
さらに変わり種は、雪山登山・雪中行軍・雪中サバイバルシューティングなんかもある。
そしてこの惑星で一番有名なのが、平均80m、最大だと130mを越える真っ白な巨体をもつ海生哺乳類『水晶鯨』だ。
別に身体が水晶で出来ているわけではなく、白い体色の美しさからそう呼ばれているらしい。
まあ、土産物屋には水晶で出来た『水晶鯨』の置物があったりはする。
ちなみに色は違うが、『星喰い鯨』の童話絵本の挿し絵のモデルにもなっている。
この鯨を見るために、この惑星にわざわざやってくる人達は数多い。
ちなみに子供の頃に、両親と祖父母、そしてドラッケンの一家と『水晶鯨』ウオッチングに来たことがあり、その時には幸運にも見ることができた。
アディルにも見せてやりたいものだが、ホエールウォッチングは予約が必要な上に、見れるかどうかは運任せなので仕事の合間には難しい。
とはいえせっかくなので、惑星上で1日だけでも雪を楽しんでもバチは当たらないだろう。
到着したのは午後9時だったので、その日は荷物を引き渡し、終了証明と報酬をもらったらすぐに船に戻った。
翌朝。
軌道エレベーターで惑星上に降り、建物の外にでると、当然の事だが一面が銀世界だった。
「やっぱり寒いなここは」
「雪冷たいです!」
街中なので多少は寒さが和らいではいるが、フライトジャケットではろくな防寒は出来ない。
なのですぐに服屋にいき、防寒着を購入した。
幸いアディルの着れるサイズがあったので、本人も喜んでいた。
「スキーかスノーボードでもやってみるか?」
「はい!」
軌道エレベーターのあるこの都市・フーノースルには、スキー場だけでなく様々なレジャースポットへのシャトルが5分毎で運行している。
そのスキー場へのシャトルの一つに乗り込み、スキー場に向かった。
スキー場のロッジでスキー用具一式を借りると、さっそくスキーを楽しんだ。
ちなみにリフトは完全無料と言うから有り難い。
ちなみに俺のスキーの腕は、初心者ゲレンデで両足を揃えて曲がらずに直滑降するか、滑降途中でボーゲンにしてターンするシュテムターン止まりで、上級者がやってる足を揃えたままのパラレルターンなんかは出来るはずがない。
アディルは生まれて初めてのスキーにも関わらず、ぐんぐんと上手くなっていった。
バイオロイドの学習能力は凄いな。
そうしてたっぷりとスキーを楽しみ、ちょっと休憩するべく板を外してベンチに座った。
丁度近くでコーヒーを売っていたのでそれを買って戻ってくると、
「ねえ彼女。さっきの彼氏?だったらあんなひょろそうなのほっといて俺達と滑ろうぜ」
アディルが3人組の男からナンパをされていた。
見た感じは大学生っぽいがヤルマドの時の連中と違い、明らかにヤバそうな雰囲気が漂っていた。
「私はマスターを待っていますので」
「あぁ?マスター?もしかしたらこいつアンドロイドなんじゃね?」
「これだけ人間っぽいなら多分アッチの機能もついてるっぽいよな」
「よし。持って帰ろうぜ。使った後は売っ払えばいいだろ」
予感は当たった。
アディルをアンドロイドと判断した瞬間に、誘拐を判断しやがった。
多分人間相手でも同じ事をやってる感じがする。
俺はそっと後ろから近づき、
「それは誘拐・婦女暴行・人身売買だな」
「がっ!」
アディルの腕を掴もうとした馬鹿の股間を全力で蹴り上げてやった。
スキーブーツだった事もあってめちゃくちゃ痛いだろうが、平然と誘拐・婦女暴行・人身売買をしようとする連中の事なんか気にする事じゃない。
潰れない様に手加減はしたしな。
「まあ法律上は窃盗にしかならないけどな」
「なんだてめえ?!」
最初に蹴った奴はその場に倒れて悶絶し、残りの2人は俺を睨み付ける。
「その子のマスターだよ」
なのでアディルのマスターだと教えてやると、急にニタニタと笑いだし、
「だったらそいつを慰謝料としてよこしな!」
「ついでに財布の中身もな!」
などと抜かしてきた。
なのでコーヒーをベンチに置き、
「いいかアディル。こういう奴は殺さない様に手加減しつつ、全力で排除していいからな」
「はい!覚えておきます!」
アディルに向かって馬鹿の対処法をレクチャーする。
すると当然、
「ふざけんなてめえ!」
と、襲いかかってきたので、俺は拳で1人の顎を打ち抜き、アディルは両手を組んで上から叩きつける、スレッジハンマーという技を相手の頭に叩き込んだ。
正直、アディルの身長から繰り出されるスレッジハンマーは相当な威力だと思う。
そして直ぐにスキー場のスタッフと警察を呼び、連中を連行してもらった。
その後も暫くスキーを楽しんだ後、軌道エレベーターのあるこの都市・フーノースルに戻ってくると、ずいぶんと騒がしくなっていた。
その騒ぎの中心はどうやら軌道エレベーターのある方向らしい。
話を聞いてみると、軌道エレベーターの宇宙港側の外壁に漂流物が衝突して停止してしまったらしい。
復旧は迅速に行われるそうだが、それでも明日まではかかるらしい。
そのため、惑星政府の軌道エレベーターの管理部署が慌てて宿泊場所を手配しているらしい。
とはいえ、宿泊施設に限りがあるだろうから、場合によっては軌道エレベーターの待ち合いロビーで夜明かしという事になるだろう。
どうしたものかと考えていると、
「あれ?ショウンさんじゃないですか!」
リキュキエル・エンタープライズ社CEO・ガリウス・リオアースの一人娘で副社長のレイアナ・リオアースが声をかけてきた。
久しぶりの副社長御嬢様の登場です。
実際に誘拐みたいなことをしてるバカがいたんですよね…
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