File139 惑星リーシオ経由惑星ヤルマド行き貨物輸送 ⑧ ヒューマンでもドラコニアル人でも、共通するものはある
サラ姉ちゃんをアディルから引き剥がして、マヤ姉ちゃんと秘書のルティネスさんに挨拶をする。
出発の直前まで居るのかと思っていたのだが、朝から会議があるとかで、嫌がるサラ姉ちゃんを引きずって帰っていった。
その後は配達の荷物を確認し、組合に依頼の承諾を通知してから、評議員御一行に乗り込んでもらった。
「以前と比べて広くなりましたね」
「中型の一歩手前ですからね」
ヴルヴィアさんは、一つ前の『ホワイトカーゴⅡ』に乗ったことがあるため、新しい『ホワイトカーゴⅢ』はかなり広くなったのがわかるだろう。
そして補佐官らしく、客室・トイレ・浴室・厨房・倉庫など、フッキネス評議員の安全のための確認をしていた。
その最中ふと気になった事を訪ねてみた。
「そういえば日程は大丈夫ですか?この船だと到着まで2日半は掛かるんですが…」
評議員専用の船は、巡航速度が時速5光年は出ると聞いている。
その計算でスケジュールを組んでいるなら、会議の予定に間に合わないことになる。
「大丈夫じゃよ。出発日は明後日。今日明日は『おふ』にしておる。そうでなければここにこれんかったわい」
その俺の疑問には、ソファーに座ったフッキネス評議員が答えてくれた。
しかしそれなら、今この瞬間には自分の船に五月蝿いのは張り付いていないのだから、そのまま出かければよかったのではないだろうか?
それにその船なら、五月蝿いのがいても12時間程度我慢すればいいだけなのではないだろうかとも思ったが、言わないでおいた。
そして、貨物室の扉・タラップからの入り口・貨物室に降りる為の降り口の蓋をしっかりと閉めたのを確認して、操縦室に入ろうとした時、フッキネス評議員の孫娘のサイア嬢が話しかけてきた。
「このたび、祖父の我が儘にお骨折りいただき、ありがとう御座います」
流石は評議員の孫娘といった、堂々とした感じだった。
「目的地変更とかでないなら、通常業務の範囲で問題はないので気にしないでください」
「そうですか。では、よろしくお願いします」
彼女の丁寧な挨拶を受けた後、内部のチェックを済ませたアディルと一緒に、操縦室に入った。
貨物室の扉が閉まっているのを知らせるランプを始めとして、全てのチェックを完了させると、管制塔に通信をいれる。
このとき初めて、アディルに通信士を任せてみた。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』です。出港許可を求めます」
すると、アディルの声と姿に驚いた様子で、黄緑の鱗に茶色の髪・青い目のドラコニアル人が画面に現れた。
『おいショウン!いつの間にこんな可愛い子を雇ったんだ?』
「新年の花火のときだ。これからよろしくたのむよ」
「バイオロイドのアディルと申します。よろしくお願いいたします」
『もちろんだ!初めまして可愛らしいお嬢さん!俺はテイミー・ジェビング!リーシオ管制塔イチのイケボの持ち主だ!これからは毎回可愛い子をみれる楽しみが増えたぜ!』
緊張した様子で挨拶をするアディルに、ジェビングはグッドサインを出しながら、嬉しそうに歯を見せて笑った。
このテイミー・ジェビングは、惑星リーシオの管制官のなかでは、一番馴染みのある人物であり、シュルゲート・ウッドベイルとおなじナンパ野郎だ。
『これでショウンが毎回女の姿で来てくれりゃあ最高なんだけどなぁ…』
ジェビングはちらちらこちらを見てくる。
つまりは、女の姿になってくれというアピールだ。
「いいからさっさと仕事をしろよ」
『いいじゃねえかちょっとぐらい』
大抵はこれで1分は無駄にするのだが、
「あの…それで、出港許可は頂けますでしょうか?」
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅢ』出港を許可する。良い航海を!』
アディルが頼んだら即反応しやがった。
俺が女の姿になればいいだけだが、なんとなくやりたくないので、これだけでもアディルが来てくれて良かったと思う。
「了解、管制塔。安全運転を心掛けるよ」
そうしてジェビングとの通信をさっさと終えると、再度チェックをしエンジンに火を入れる。
「エンジン点火。微速前進」
宇宙港の外縁部まで船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動すると、エネルギーチャージを開始。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星ヤルマド。エネルギーチャージ開始」
そしてチャージが完了すると、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
超空間のトンネルに突入し、
「超空間に侵入。これより自動航行装置に移行する」
超空間に入って安定航行になれば、あとは自動航行にお任せだ。
「突入の瞬間は緊張しますね」
何度か出発の手順を体験しているものの、アディルはまだまだ緊張しているようだ。
「直ぐに慣れるよ」
アディルの頭をぽんと撫でてやると、アディルは嬉しそうな表情を浮かべた。
リーシオを出発したのが9時ちょうど。
それから2時間たったので、昼食の準備を始めた。
アディルが手伝ってくれるのはわかるが、ヴルヴィアさん。いやヴルヴィア補佐官が厨房に入って手伝いをしているのはどうしてだろう?
ともかくそうして完成させた昼食は、シーフードピラフ・チキンのクリーム煮・トマトのスープの3つ。
もちろん量はドラコニアル人仕様だ。
「相変わらず美味しそうですね!」
「確かに美味しそうです。きちんと『顔』は覚えました」
ヴルヴィア補佐官とサイア嬢は、並べられた料理を凝視していた。
サイア嬢はともかく、ヴルヴィア補佐官は一緒に作っていたはずなのに何で凝視してるんだろうか?
するとフッキネス評議員が、
「そうだ。『宝珠煮卵』と『黄金煉瓦』をもらえんかね?」
と、笑顔を浮かべてきた。
『宝珠煮卵』はともかく『黄金煉瓦』まで知っているとは思わなかった。
まあ、マヤ姉ちゃんあたりが教えたんだろう。
そしてもちろん、ヴルヴィア補佐官とサイア嬢が『黄金煉瓦』に反応し、こちらを見つめてきた。
「なんの事ですか?は、通用しませんよね…。夕食でいいですか?今並べている料理とはちょっと合いませんからね」
「おお!では夕食に期待しようかの!」
「「よろしくお願いします!」」
フッキネス評議員は満足そうに笑い、ヴルヴィア補佐官とサイア嬢は力強く返事をしてきた。
なんだろう。
ヴルヴィア補佐官はともかく、サイア嬢のキリッとしたイメージが崩れつつあるのは気のせいだろうか。
そうして昼食は問題なく終了し、
「ご馳走さまでした…」
「なるほどなぁ。クロイドの奴が秘匿するのがよう分かる」
ヴルヴィア補佐官は満足そうに表情を緩め、フッキネス評議員は納得したように頷いていた。
そしてサイア嬢はというと、
「あの…どうして料理人にならないんですか?これだけの腕ならドラコニアル人が主体の惑星なら絶対に人気がでますよ!」
と、今まで何人もの人に言われてきたセリフを言ってきた。
なので、
「俺としては必要にせまられたり、趣味だったり、お客さんの要望に答えたりしただけなんでね。俺の本業は貨物輸送業者だよ」
と、お決まりの答えを返しておく。
そこにアディルが、作り置きしていたレーズンバターサンドを山にしてもってきた。
「皆様、デザートはどうなさいますか?」
「「いただきます!」」
そのアディルの言葉に、ヴルヴィア補佐官とサイア嬢は即座に反応した。
ドラコニアル人でも、やはり甘いものは別腹なんだろう。
実は普段から卵は多めに仕入れてあります
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