File133 惑星リーシオ経由惑星ヤルマド行き貨物輸送② 家族に家族を紹介するという不思議な状況
惑星オルランゲアを出発してからの航海は実に平穏で、アディルに料理を教えたり、艦隊チェスをやったり、一緒にテレビを見たりしながら、何事もなく惑星リーシオに到着した。
到着して停泊地に船を止めたら、まずしないといけないのは荷降ろしの監視と確認だ。
間違ってヤルマド行きの荷物を降ろしてしまうと、大変ではすまない事になってしまう。
配達の期限が迫っているなら、降ろして直ぐに出発するが、そうでなければ安全運転のためにも一晩は宿泊するというのが、祖父バルクス・ライアットから習った貨物輸送業者としての鉄則の一つだ。
そうしてリーシオで降ろす荷物だけを全部降ろすと、貨物配達受付でリーシオ着の荷物の受け取りチェックと報酬を受け取り、次はヤルマドまでの荷物の輸送を請け負う。
できるだけ空荷にしないようにするというのも、祖父から習った貨物輸送業者としての鉄則の一つだ。
ちなみにこういった場合はいつもの店での食事はしないようにしている。
あれは荷物を全部運び終わった時にと決めているからだ。
ともかく時間が出来るので、生鮮食品売場で食料品の補充をし、アディルにリーシオ風の服を買ってやったりしてから船を泊めてある停泊地に戻ってきたところ、見覚えのある人達が船の前に並んでいた。
「お、帰ってきた帰ってきた」
「その荷物は買い出し?相変わらずね」
「レディを待たせるものじゃないわよ」
それは、血は繋がっていないが家族である、ドラコニアル人のサラ姉ちゃん・マヤ姉ちゃん・ティナ姉ちゃんの3人だった。
「姉ちゃん達、なんでここにいるんだ?」
姉ちゃん達が生まれ故郷であり、ドラッケングループの総本山があるリーシオに居る事自体はおかしくないが、俺がここに来ることを教えてもいないのに、停泊地に居る事は謎だ。
すると、三姉妹の中で一番人の話を聞いてくれる次女のマイルヤーナ=マヤ姉ちゃんが事情を説明してくれた。
「取引の為の商品を持ってきてくれる船の入港チェックをしていたときに、たまたま貴方の船の名前を見つけたの。それで姉さんとティナに声をかけて来てみたってわけ」
元々連絡はするつもりだったが、まさか向こうから来るとは思わなかった。
「マスター。こちらの方々はどのような方々なのですか?」
そこに困ったようなアディルの声が聞こえた。
見ると、荷物を抱えたアディルを、長女サラフィニア=サラ姉ちゃんと、三女ティナロッサ=ティナ姉ちゃんが囲んでジロジロと見回していた。
「おいショウン。なんだこいつ?」
「紹介はしてくれるわよね?」
2人は鋭い目付きで俺を見つめてくる。
多分心配をしてくれているのだろうからちゃんと紹介しないとな。
だがまず、荷物を船に積み込ませて欲しい。
船内に入り、姉ちゃん達をラウンジに案内してから、買ってきたものを倉庫や冷蔵庫にしまいにいった。
俺が船を買い替えたことは伝えていたが、乗るのは初めてなのでキョロキョロと見回していた。
そして案の定というかなんというか、ティナ姉ちゃんがピンボールに視線を向けていた。
ちなみにピンボールをプレイするには100クレジット硬貨がいる。
無料に設定しておいてもかまわないのだが、そこは雰囲気のためにそのままにしておいた。
あれの点数によって出す景品の資金になるだろうし。
そうして姉ちゃん達がダイニングテーブルに座り、アディルが人数分のコーヒーをもってきて、コーヒーをそれぞれの前に置き終わったのを見計らって、俺から口火を切り、
「姉ちゃん達。こっちはバイオロイドのアディル。縁があってパートナーとして迎え入れたんだ。
アディル。こちらはドラッケングループの令嬢で、
右から長女のサラフィニア・ドラッケン。
次女のマイルヤーナ・ドラッケン。
三女のティナロッサ・ドラッケンだ。
俺の祖父の代から、家族同然の付き合いをさせてもらっている」
姉ちゃん達にはアディルを、アディルには姉ちゃん達を紹介した。
するとアディルはきちんと立ち上がり、
「初めまして。私は、パートナードールズ社謹製、ナノマシン搭載型護衛用バイオロイド『シールダーシリーズ』のファーストロット、型式番号BNG-タイプF、製造番号ADL19635。いただいた名前はアディルです」
丁寧な御辞儀をしながらきちんと挨拶をした。
「私はマイルヤーナ。『シールダーシリーズ』のファーストロットは全部回収されたって聞きましたけど、貴女はよく残ってたわね」
「アタシはティナロッサだ。ティナでいいぜ。『シールダーシリーズ』は頑丈で動きもいいからな。警備用の補充要員に何体か購入した。お前の後輩ってとこだな!」
マヤ姉ちゃんとティナ姉ちゃんは好意的に受け止めてくれたようだが、サラ姉ちゃんだけは表情を一切変えることなく俺とアディルをじっと見つめていた。
「私はサラフィニア・ドラッケン。貴女のマスターであるショウンとは家族同然の付き合いをしているわ。縁があったって言ってたけど、どういう経緯があったか教えてくれるかしら?」
そのサラ姉ちゃんの表情はいつものだらしない感じではなく、『魔眼の女帝』と呼ばれている経営者のものだった。
こうなったサラ姉ちゃんに下手な誤魔化しは通用しないので、パートナーにした経緯を包み隠さず話した。
まあ、元々隠しだてをするつもりは一切なかったが。
そうして俺の説明を聞いた姉ちゃん達は、
「それは…酷いわね。そのまま放置せずに引き取ったのは良い判断よショウン!」
「アンドロイド・バイオロイドは物品扱いされるとはいえ、超新星爆発で処分しようってのはあんまりだよな…」
「パートナードールズ社は警戒する必要があるかしらね。そんなのを雇ってるなんて」
それぞれ納得をしてくれたらしい。
「ところでなんで3人とも集まってたの?」
休暇中に3人が集まってるのは珍しくないが、仕事をしている時に集まっているのは珍しいので、気になって尋ねてみた。
「実はちょっと大口の契約がまとまったから、その祝勝会が夜からあるの。
よかったら参加しない?仕事はまだ受けてないんでしょう?」
この大口の契約がまとまった時の祝勝会は昔からやっているらしいというのを聞いたことがある。
「ここは中継。正しい目的はヤルマドなんだ。朝には出発するかな」
しかしホームパーティならともかく、参加者は契約担当の社員達に幹部や子会社の社長や家族といった会社絡みの人達ばかりの祝勝会に参加していいものじゃないだろう。
ちなみに会場はドラッケン本宅のホールでささやかにやるらしい。
「じゃあ時間はあるんだよね!だったらパーティーにお料理提供してよ!」
「そうだな!最低でも煮卵と卵焼きくらいは!」
「あと果実酒もね?」
しかし姉ちゃん達は、ここぞとばかりに俺に料理を作れと迫ってきた。
「ど…どうするのですかマスター?」
その迫力を初めて見たアディルが、ちょっと引きながら俺の顔を見つめてきた。
ちなみにこうなった姉ちゃん達は諦めると言うことを知らない。
「しゃあないか…材料と補充分はそっち持ちで頼むよ」
「ありがとう!直ぐに貨物用移動板(軽トラック)を用意するわね!」
俺の返答に、姉ちゃん達は満面の笑みを浮かべていた。
そうして直ぐに貨物用移動板=軽トラックを手配し、船にあった煮卵と果実酒、さらには自家製ソーセージ・鮪の赤身の賽の目漬け・先だってのプリンの残りなどを全部持っていった。
そしてちょうど昼食前だったのもあって、クロイド元総帥とテレジア相談役。エドガー総帥、リチェリーナ副総帥も含めたドラッケン一家と昼食と相成った。
俺にとっては久しぶりの家族との食事だが、ビジネスマンやドラコニアル人から見れば、羨ましいことこの上ない状況なのかも知れない。
昼食が終了すると、ドラッケン邸の家族用のキッチンを借りて、追加分の煮卵の製作を始めた。
船でするといったのだが、持ってくる手間を考えると面倒だという理由で、ドラッケン邸の家族用のキッチンで作る事になってしまった。
とにかく半熟ゆで卵を製作し、自家製の醤油ダレに沈めて弱火でコトコト煮る。
普段は醤油ダレに漬け込んだまま放置しているが、煮るとタレの染み込みがよくなるので今回はそうしてみた。
ちなみに用意するのは煮卵と卵焼きだけで、あとは全部ケータリングだ。
ちなみに当たり前だけど『フライング・テーブルクロス』ではない。
そうして、アディルと一緒に煮卵作りに精出していたところ、何者かがキッチンにやってきた。
ドラッケン一族は共和国・帝国・星域連邦の三国に名前が知られており、本来は家族や友人でなければ簡単には面会できないセレブリティでVIPな方々です。
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