File130 惑星オルランゲアでの休日③ 親しき仲にこそ、最低限の礼儀が必要
用事が3つ終了した時点で丁度昼時だったので、フードコートのサンライトイエローリップルに行き、俺はミックスグリル。アディルは迷った末にカルボナーラを注文した。
流石に昼食時な事もあってなかなか混雑をしており、呼び出し用のプレートを手に座る席を探していたところ、
「はあいショウンちゃん。こっちいらっしゃいよ」
貨物輸送業者であり、服飾・宝石のデザイナーをやっているバルスィン・チェンシーが俺達を手招きした。
席もないことだし、せっかくなのでその席に向かうと、
「あ、ショウン久しぶり。ねえ、甘いもの食べたくない?」
「今から昼飯だ」
バルスィン・チェンシーの弟子ともいえる『借金女王』の異名をもつアルニー・エスフォルに、
「昨年末は友人が本当に失礼しました…」
「あのバイタリティーは凄いと思ったよ…」
他人をゲームのキャラクターとして世に送り出してくれた、副業がBL同人作家のキャロライン・ウィルソンに、
「いやー今日はついてるぜ!華麗な華が4つも並ぶなんてな」
「飽きないよなあんたも…」
ガンマニアでナンパ野郎のシュルゲート・ウッドベイルが座っていた。
不思議な組み合わせだったが、昼時でたまたま席が近くなったりしたのだろう。
そうして空いている席に座ったところ、ウッドベイルの発言にバルスィンが食いついた。
「ちょっと。4つじゃなくて5つでしょう?その目は節穴なの?」
「はっ!俺は心が女性なら女性として扱うのが信念だが、お前だけは別なんだよ!」
「懐の狭い男ね。そんなんだから本命の彼女にも逃げられるのよ!」
「逃げられたんじゃなくて綺麗にわかれたんだ!」
実はこの2人は学生時代には同級生だったらしく、過去に何があったかは知らないがいがみ合う事が多い。
とはいえ、殴り合いになったり付き合いをやめたりすることはないらしい。
「まあいいわ。今はあんたなんかよりこっちよね」
バルスィンはウッドベイルといがみ合うのをやめて、アディルをみつめてきた。
「ショウンちゃん。この子は誰なのかしら?」
「そうよね。ショウンは今まで1人で活動していたはず。新人…なの?」
バルスィンの質問に、キャロライン=キャシーも乗っかってきた。
「はい!私はバイオロイドのアディルと申します!この度マスターに購入していただきました!」
その質問に対して、アディルは椅子から立ち上がると、丁寧にお辞儀をした。
「ああ。バイオロイドなのね。私はバルスィン・チェンシー。貨物輸送業者兼デザイナーよ」
「私はキャロライン・ウィルソン。よろしくね」
キャシーは握手をするべくにっこりと手をさしだした。
「アディルです!よろしくおねがいします!」
アディルは緊張した様子でキャシーの握手に応じていた。
バルスィンとキャシーの2人は、アディルの挨拶をにっこりしながら受け入れてくれた。
「俺はシュルゲート・ウッドベイル。背の高いお嬢さんもなかなか魅力的だ。今のショウンと並んでいるとそれぞれの魅力が引き立つ。でも、2人で俺の横に並んでくれるともっと引き立つんだけどな」
「え?あ、あの…」
ウッドベイルの奴はいつもの調子でナンパをしてきた為に、アディルは困惑したが、
「あれがあの人の挨拶みたいなものだから聞き流していいから」
いつもの事だから聞き流すようにと言い含めた。
「はあい。私はアルニー・エスフォル。ところでアディルっていくらぐらいするの?」
アルニーのやつは、アンドロイドやバイオロイド相手じゃなきゃかなり失礼な事を聞いてきた。
「え?ええっと…」
話していいのかどうか迷ったアディルが俺に助けを求めてきたので、代わりに答えてやる。
「アディルはパートナードールズ社の『シールダーシリーズ』だから、多分安くても5~600万クレジットはするはずだ」
たしか今現在販売されている『シールダーシリーズ』のスタンダードな奴がそれくらいだったはずだ。
「600万?!だったらなんで私を雇ってくれなかったのよ?!丸1日しっかりご奉仕したのに!」
それを聞いた瞬間、アルニーが目の色を変えて俺に迫ってきた。
「1日働いただけで600万ももらえるわけないでしょ!」
そのアルニーの後頭部にキャシーが軽くチョップを入れると、アルニーは沈黙した。
どうやらこの4人には、アディルはそれなりに受け入れてもらえたらしい。
一通り挨拶が終わったところで、注文したものが出来上がったとプレートに表示があったので受け取りにいった。
軽く近況報告なんかをしながら、にやにやしているウッドベイルを無視して食事をすすめていると、
「なんだなんだぁ?オカマ野郎が珍しく女の姿してやがるぜ!」
不愉快なセリフが聞こえてきた。
が、その発言者はすぐに後ろから蹴りつけられた。
「それは問題発言…だっ!」
「そうですよ!常識がないんです…かっ!」
発言者は腐れ縁のジャン・インフェッド。
そいつに蹴りをいれたのは、ライティス・グラザールさんとドラコニアル人の女の子のアルセリア・イーベッツだった。
「うるせえな!男か女かわからねえコイツが悪りぃん「私の前でそういう発言を平然とするなんて度胸あるわねジャン・インフェッドちゃん」ひいっ!」
ジャンの奴が、蹴られた尻と足を擦りながらもさらに悪態をついていると、バルスィンがジャンの頭を後ろからがっしりと掴み取った。
「アタシ前に教えてあげたわよねえ?シュメール人や私みたいな人間に対してそういう表現は良くないって」
「いや、別にアンタにいったんじゃなくて…」
「言い訳は見苦しいわ…よっ!」
「いでぇぇぇぇぇ!」
そしてジャンの奴のこめかみを拳で挟み、グリグリと締め上げはじめた。
何でもジャンの奴が新人の時にバルスィンに喧嘩を売り、フルボッコにされてからは苦手にしているらしい。
「ライティスちゃんおひさ。その子が噂の新クルーの子ね」
「噂のという訳ではありませんが」
「アルセリア・イーベッツです!」
そのバルスィンは、ジャンのこめかみをグリグリしながらライティスさんやアルセリアとにこやかに会話をはじめるが、その間もジャンが苦しそうにしているのは見ていてすっきりする。
バルスィンとの話が終わると、ライティスさんが話しかけてきた。
「やあショウン久しぶり。ところでその子は?」
そして話しかけてきて話題になるのは、アディルのことだ。
「バイオロイドのアディルです。縁あって引き取ることになったんですよ」
「アディルと申します!これからよろしくお願いいたします!」
アディルはまた椅子から立ち上がると、丁寧にお辞儀をした。
「僕はライティス・グラザール。ショウンとは古い付き合いなんだ。よろしくね」
ライティスさんはアディルに座るようにゼスチャーをすると、自分も近くの席に座った。
「それにしても君がパートナーをつけるとはね」
「まあ、色々ありまして」
そこにアルセリアもアディルに声をかけてきた。
「私はアルセリア・イーベッツといいます。アディルさん。ショウンさんに引き取られたということは、パートナーとして一緒に行動・生活するんですよね?」
「はい。そうですが…?」
アディルは、アルセリアが自分の名前を言った事にも驚いたが、俺と一緒に行動・生活することを尋ねられたことに驚いているようだった。
「羨ましいです!それはつまりショウンさんのお料理が毎日食べられるんですよね?」
「確かに現在はマスターに食事を用意していただいていますが…」
「いいなぁ…あの時のトルコライスとタンシチューとチョコプリンの味がおもいだされます…。そう思うとあの時のお土産が悔やまれます…」
アルセリアは、以前俺がもたせたトルコライスとチョコプリンとダックワーズをおじゃんにしたことを、いまだに後悔しているらしい。
「お前が意地汚く俺の分を奪おうとしたせいでな!」
そこに、しめあげられたままのジャンがアルセリアに文句を言う。
「一人占めしようとしたジャンさんが悪いんじゃないですか!」
「うるせえ!元はと言えばそこのカタツムリが人数分用意しなかったのが悪いんだよ!」
「まだ理解してないみたいねぇ…。それこそ立派な差別発言でしょうが!」
「いでぇぇぇぇぇ!」
ジャンの奴のカタツムリ発言に、バルスィンは更なる力を込めてこめかみを締め付ける。
「こいつと意見が一緒なのは気にくわないが、それだけは同意だな」
いままで静観していたウッドベイルまでが、珍しくジャンの奴を睨み付けていた。
「すみません。こいつ馬鹿なんでそこまで悪意はないんですよ。ショウン以外のシュメール人には言った事はないので」
「ショウンちゃん相手でも言っちゃダメでしょ?」
「その辺りの一般常識を勉強しなおしてこい」
ライティスさんがフォローをするが、焼け石に水だった。
「分かったからそろそろ勘弁してくれ…」
ジャンの奴は、こめかみの激痛のためか絞り出すような声で解放を懇願した。
仲間内での話は長くなってしまいそうです
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