File125 惑星ダナークズでの待機時間⑥ リピーターは商売繁盛の元
翌日は朝から色々と慌ただしかった。
とはいえ、貨物の積み込みがないためそこまではなく、朝食の準備と船体のチェックをしているうちに、シャトルの発着場から連絡があった。
そうして到着したシャトルからは、
「おはようございます。ショウン様、アディルちゃん。ほらチャーリー様。しっかり歩いて下さい」
「よお…」
まず最初に、商売人兼仲介人のチャーリーと、その秘書のティラナが姿を表した。
「おはようございますチャーリーさん!ティラナさん!」
アディルの元気な挨拶に、チャーリーは顔を歪める。
「もっ申し訳ありません!私、なにか失礼なことを…」
チャーリーの表情に、アディルはおろおろしながら謝罪をする。
どうやらチャーリーの奴は、二日酔いで頭がガンガンしているらしい。
「大丈夫よ。ただの二日酔いだから」
ティラナが呆れた口調で説明し、
「別にお前さんが失礼をしたわけじゃないから気にしなくていい。だから静かにしてくれ…」
「は…はい」
チャーリーは頭痛に耐えながらアディルにフォローを入れた。
「飲み過ぎだな」
「ブローカー仲間とちょっとな…」
「お水いただきますね」
チャーリーはソファーに座ると、そのままぐったりしてしまった。
ティラナは、勝手知ったる他人の家とばかりに厨房に水を取りにいったが、厨房には入りづらい人もいるだろうから給水器を設置した方がいいかもな。
そしてチャーリー達の次に姿を現したのは、
「おはようございま~す!」
「今日はよろしくお願いいたします」
シンガーソングライターのシャーロ・レツィナと、そのマネージャーの人だった。
たしかコンサートはすでに終わってるはずだし、ストーカーは前に逮捕されたはずだから、定期便に乗っても安全なはずだ。
にも関わらずダナークズにいたのは、間違いなく超新星爆発を見物してたのだろう。
「御利用有り難うございます。それにしてもなんでまた俺の船に?」
だとしても、俺の船に乗ってくる理由がわからない。
「あの果実酒がまた飲みたくてさ~。マネージャーも気に入っちゃって~」
なるほど。呑兵衛だったなこの人。
「申し訳ありません。この子がどうしてもと聞かないので」
ニコニコしているレツィナ嬢とは対照的に、申し訳なさそうに謝罪をしてきたのは、黒い目にウェーブのかかった黒く長い髪の、スーツを着た女性だった。
「以前はご挨拶する間もなく失礼いたしました。私、株式会社コメットライブプロモーションで、シャーロ・レツィナのチーフマネージャーを担当しております伊都谷咲那と申します。以前は、当社所属のシンガーソングライターであるシャーロ・レツィナが大変お世話になりました」
丁寧に挨拶しながら名刺を渡してきた。
そういえば名刺をまだ作ってなかったな。
「あ、どうも。ショウン・ライアットです。こっちはクルーのアディル」
「アディルと申します。よろしくお願いいたします」
俺の紹介に、アディルが頭を下げる。
「前の時はいなかったよね?」
「はい。マスターに購入していただきました」
「あ、アンドロイドなんだ」
するとレツィナ嬢が、まるで臭いを嗅ぐようにアディルの周りをくるくると回りはじめた。
「シャーロ。失礼よ」
が、イトヤ女史が注意するとあっさりと引き下がった。
そして彼女達が奥にむかうと、賞金稼ぎのザウズ・ダルカが、チャーリーと同じく、具合の悪そうな顔をして入ってきた。
「よお…。世話になるぜ…」
もしかしてこいつも二日酔いか?
「仕事は終わったんじゃないんですか?」
「終わったぜ。そのあとまた仕事が入って見事解決…。で、その打ち上げで飲む前にチェックしたらアンタの船があったんでな。
悪魔の目を盗んで予約し、酒で酔い潰して抜け出てきたんだ。悪魔のいない酒盛りは実に快適だからな。っていたたた…」
どういう理屈だ。
まあ、二日酔いに間違いないのでソファーに座るように促した。
「ところで、この背の高い…胸部の非常にけしからん女は新入りか?」
チャーリーと一緒にぐったりしているダルカ氏は、ティラナを倣って水をもってきたアディルを指差した。
「アディルと申します。マスターに購入していただきました」
アディルは、2人が二日酔いなのを考えて控え目な挨拶をした。
「いい買い物したな…!これで目の保養が増えた…ぜ…」
ダルカ氏は水を一気飲みすると、ぐったりしたまま、親指を立てるサインを出した。
「セクハラしたら叩き出しますからね」
そんな話をしている間に、午前7時55分になり、宇宙港から探査用無人探査機が発射された。
そして様々な調査がなされ、午前8時になった時点で全ての船舶の航行が解禁された。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』。出港許可を求む」
俺は直ぐ様、管制塔に連絡し、出航許可を請求した。
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅢ』出航を許可する。しかし、ずいぶん早い出発だな』
「混まないうちに出発したかったんでね」
『いい心掛けだな。気をつけてな』
管制官と軽く挨拶をかわし、簡易停泊地からゆっくりと離れ、超空間跳躍可能な宙域まで移動したら、オルランゲアに向けて超空間跳躍を実行する。
船が超空間に入り、自動航行に操縦を任せると、朝食を作るべく操縦室から出る。
ラウンジは、アディルを含めた女性達はダイニングテーブルでおしゃべりをし、二日酔いの2人はソファーでぐったりしていた。
「部屋で寝たほうがいいんじゃないのか?」
「その前に二日酔いに効くもんをなんかくれ…」
「だったら俺も頼むわ…」
二日酔い共に俺が声をかけると、チャーリーとダルカ氏は、唸るような声を出して、酔いざましを要求してきた。
「あ…ティラナにはちゃんと朝食を出してやってくれよ」
チャーリーは、苦しみながらもティラナのことを気にかけているようだ。
「あ、それなら僕達も朝御飯欲しい~」
「ちょっとシャーロ。ご迷惑でしょう」
「でも食べてないじゃんか。サナさんが寝坊したから」
「寝坊したのは貴女もでしょ!」
俺とチャーリーの会話を目ざとく聞き付けたレツィナ嬢が、自分の要求を突き付けてきたが、イトヤ女史が注意する。
まあお客さんが増えた時点でその辺りは予測が付いていたので問題はない。
「御用意はできますよ。お客さんが貴女方とは思っていませんでしたけどね」
「やった~!」
「お手数かけます…」
俺がそう答えると、レツィナ嬢は喜び、イトヤ女史は申し訳なさそうに頭を下げてきた。
朝食は仕上げをするだけにしてあるのですぐに出来上がるはずだ。
「アディル。手伝ってくれ」
「はい!」
今までは1人でやっていたことを、2人でやるというのは、なかなかに楽しいものだと実感した。
リピーターの登場です
なので問題は起こりません!
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