File126 惑星オルランゲアへの貨物輸送① 油断してなくても敵はやってくる
視点変換 ◇ティラナ◇
ダイニングテーブルに座った私の目の前には、フレンチトースト・メープルシロップ・プレーンオムレツとベーコン・生野菜のサラダ・レモンゼリー・コーヒーという、今まで何度も調理のお手伝いをし、チャーリー様や他の様々な方々が称賛していたショウン様のお料理が置かれてあります。
それを見て私は興奮しています。
「これがショウンさんのお料理…調理のお手伝いは何度も行い、目にはしてきましたが食べるのは初めてです!」
お手伝いをしたときに調理工程はしっかり記憶してあります。
しかしそれにしたがって調理をしても、チャーリー様いわく、ショウン様の味にはなっていなかったそうです。
その理由は、私が料理を食べていないからだと考えています。
ですが今の私は違います。
ショウン様とシャーロ・レツィナ様のお陰で、食事をすることができる身体になりました!
私はチャーリー様がどうしてもと言われてつけていた、以前の私の頭部を模したフルフェイスヘルメットを外しました。
その下には、私とチャーリー様が見つけた瞬間に気に入った、金髪に近いライトブラウンの緩くウェーブした髪を肩の辺りで切り揃え、セルリアンブルーの目をした、食事のできる私の新しい頭部があります。
「あっ!なんで外してるんだ?!いたた…」
ショウン様、ザウズ・ダルカ様と共に、ソファーテーブルで、梅茶漬け・しじみの味噌汁・目玉焼き・沢庵という、晋蓬地方の二日酔いにはありがたいというメニューを召し上がっていたチャーリー様が、慌てた様子で大声を出してきました。
チャーリー様は、私が窃盗されるからと私がヘルメットを外すのを良く思っていません。
一応ヘルメットを着用していても食事が出来るようにはなっています。
ですが、初めてのショウン様のお料理はヘルメットなしで楽しみたいですし、
「ショウン様とアディルちゃんは当然として、シャーロ・レツィナ様は私の身体換装のきっかけをくださった方ですから秘密にして下さるでしょうし、
サナ・イトヤ様はシャーロ・レツィナ様のマネージャーですから同調して下さるでしょう。
ザウズ・ダルカ様は職業がら他人の情報を漏らしたりはいたしませんでしょう?」
何よりここにいる方々は信用できる人達です。
それはチャーリー様も理解していらっしゃるので、それ以上はなにもおっしゃいませんでした。
では、初めてのショウン様のお料理をいただくことにしましょう。
視点変換 ◇アディル◇
今、私の目の前では、3名のお客様がマスターの作った朝食を美味しそうに召し上がっていらっしゃいます。
「以前にお手伝いしたことがあって、作り方も教えていただいたフレンチトーストはこういう味だったのですね…」
特にティラナさんは、今までお手伝いをしていたものの食べたことがなかったからと、感慨深そうに、そして夢中になって召し上がっていらっしゃいます。
私は起動して初めて食べたのがマスターのお料理なのですが、マスターのお料理はかなり美味しいのだそうです。
何人もファンがいるのだとティラナさんに教わりました。
お店のお料理と比較はしていませんが、マスターのお料理は美味しいと私は思います!
なので、毎日マスターのお料理を食べることのできる私には非難が集中するかもしれないとの事ですが、それは私にはどうにもなりません。
ですので、マスターのお料理をしっかり覚えて、再現出来るように頑張っているのですと説明し、実行できるようになろうと思います。
まずは卵液を混ぜるのをお手伝いしたフレンチトーストからいただきます。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
朝食が終了すると、二日酔い共はそのままぐったり。
レツィナ嬢とイトヤ女史は仕事関係の打ち合わせ。
そしてアディルとティラナは後片付けを手伝った後に、なぜか料理を教えてくれと頼んできた。
トラブルが起きなければ暇ではあるし別にかまわない。
しかし、アディルはともかく、ティラナは今まで何度か教えた事があるが、熱心には教わろうとはしてこなかったはずだがどういうつもりだろうか?
ともかく、楽しそうに、そして真剣に料理を勉強する彼女達は実に生き生きとしていた。
夜には二日酔い共も復活してまた酒を寄越せと言ってくるし、レツィナ嬢とイトヤ女史、さらにはティラナまでが果実酒を楽しんでいた。
「やっぱり苺のやつが美味しいな~!」
「この桃のは美味しいですね!」
「以前から綺麗なお酒だとは思っていましたが、美味しいものだったんですね」
ティラナはまず全部試飲し、その中でも檸檬と杏が気に入ったらしく交互に楽しんでいた。
アディルにも飲ませてやりたいが、対処が大変になるので我慢してもらった。
そんな感じで、オルランゲアまでの道のりは平穏に過ぎていった。
しかし。
『油断大敵』とは良く言ったもので、最後の最後で厄介事がやってきてしまった。
本拠地である惑星オルランゲア到着まであと30分弱になったところで、超空間からの退出のタイミングになった。
アディルにはラウンジの方をまかせ、俺は操縦室に向かい、超空間からの退出を実行することにした。
「超空間からの退出開始。秒読みカウントダウン。5・4・3・2・1!」
カウントダウンが終了すると、歪んだような空間から通常の宇宙空間に代わり、視界には惑星オルランゲアが小さく浮かんでいた。
「超空間退出完了。通常航行に移行する」
通常空間にでてからは、そのまま宇宙港に向かうのだがその進路を遮るものがあった。
『こちらは銀河共和国防衛軍・第893派遣艦隊所属・軽巡洋艦『ランシェン』です。現在麻薬密輸に対する検問を行っています。速やかに停船し、調査を受け入れてください』
画面に現れたのは、きっちりとした感じの女性通信士だったが、その内容はろくでもない内容だった。
軍の検問には2種類ある。
ちゃんとした理由のある正規の検問と。
不良軍人達が小遣い稼ぎに行っている違法な検問だ。
違法な検問とは、わざといちゃもんをつけて賄賂を要求する検問だ。
差し出さなければ逮捕は確実で、場合によっては宇宙の藻屑になる。
戦って逃げようにも相手は軍隊なので勝てるわけはない。
もちろん殺されたくはないので大抵は素直に金を払ってしまう。
なぜ軍がそんな違法な検問を放置しているのか?
遥か昔に、この違法な検問で実際に犯罪者を捕らえた事があるからだ。
とはいえ、発覚すればそれなりの刑罰に処せられることにはなるし、最近は軍内部の綱紀粛正・組織改革が行われているためかなり少なくなっているらしいし、違法検問自体を撤廃の方向に向かっているらしい。
しかし、そんな状況下でもやる連中がいるのは信じられない話だ。
実際に年間に何十人と被害者がでているのに何故か犯人が捕まらない。
それは、
実行犯が軍や政府高官の子供や関係者。
犯人は軍人を騙った犯罪者(海賊)。
そもそも違法な検問などなく、検問を不快に思った連中の嫌がらせのための偽情報。
という理由があるからだ。
今回の検問がどちらかによって今後の動向がきまるわけだが、
『停船しないなら当方には攻撃の用意があります』
この一言でヤバイ方の検問だと発覚した。
「わかった。停船して検問をうける」
勝手に決めてしまったのは申し訳ないとはおもうが、撃ち落とされるよりは良いだろう。
船を停止させたら説明をしないとな。
あまりに順調だと、ふと不安になりますよね。
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