File124 惑星ダナークズでの待機時間⑤ 謝られても、今までの所業が消えるわけではないのは理解してもらいたい
謝罪をしたいという話は解ったが、ショッピングエリアの通路でする話ではないので、ギルドの会議室を借り、そこで話を聞くことにした。
受付で許可をもらい、俺達に続いてヴィオラ・ザバルとその取り巻き全員が会議室にはいる。
「ショウン・ライアット様!今まで本当に申し訳ございませんでした!私の仕出かした事は、恩を仇で返すとんでもないことでした。今日を境に、私は船からは下船せず、反省の日々を送らせていただきます。
アディルさん!貴女の大事な主人であるライアットさんを犯罪者呼ばわりしてすみませんでした!
ヴィオラ様が同じことをされたら、私だって腹を立てるのに…。
御二人とも、本当に申し訳ございませんでした!」
するといきなり、リリーナ・フレマックスが、俺とアディルに向かって土下座をし、謝罪の言葉を述べてきた。
顔を伏せているので表情はわからないが、まあ、反省はしていると思いたい。
どう返答しようかと思案していると、
「リリーナは今後、特別な事情がある場合を除いて、私達の母船から絶対に下船させません。彼女にはそういう処分を下しました。よって、今後ショウンさんにご迷惑をかけることはほぼないと考えます」
取り巻きの1人である、金髪・碧眼に白い肌、スレンダーでありながら、鍛えられた感じの女性が、リリーナの発言の詳細を説明してくれた。
彼女はたしか、ヴィオラ・ザバルの船のクルーだが、遭難した時には別の船に乗っていた人だったか?
「えーとたしか…」
「エリザベス・ディディアーです。御記憶に留まれてて光栄です。今後は私が副団長を務めさせていただきます」
綺麗に敬礼をするということは、彼女も元軍人なのかもしれない。
「いままで私の監督不行き届きの部分があったことと、クルーを信頼するあまり対応が後手に回ってしまった事は非常に申し訳なく思っている。
しかしできれば、仕事仲間としての最低限の繋がりは残して欲しい。この通りだ」
そこに、ヴィオラ・ザバルを始めとしたその場に居た全員が、俺とアディルに頭を下げてきた。
「謝罪はわかった。仕事仲間としての最低限の繋がりも了解した。
リリーナへの処罰も、追放して自由にさせない選択をしたのも評価しよう。
もしリリーナを船外にだす時は、きっちり監視役をつけてくれよ」
甘いとは思うが、迷惑娘をきちんと管理してくれるんなら、それ以上は追及するのは疲れるだけだ。
「承知した。寛大な処置に感謝する」
ヴィオラ・ザバルは本当に申し訳なさそうな表情をしていた。
そして迷惑娘を立たせた所で、俺は迷惑娘に声をかけた。
「おいリリーナ。もう遅いが一つアドバイスをしてやる。お前の過去になにがあったかは知らないが、お前がヴィオラ・ザバルを慕い、彼女の役に立ちたいと思うのなら、俺にかみついたり、男性全体に威嚇したりせずに、ヴィオラとおなじように、男性にも礼儀をもって丁寧に対応してれば良かったんだ。
そうしてれば、ヴィオラ・ザバルの評判はもっと上がっていたはずだ。
それを、上がるどころか下がったのはお前のせいだ。それを自覚するんだな」
今までのお返しとばかりに、かなり辛辣に言ってやった。
まあ、今回の避難民の時の行動でかなりあがってるとは思うが。
それを聞いた迷惑娘は、悲しいと悔しいが混ざったような表情を浮かべていた。
それでもしこっちを睨んできていたら救いようがなかったが、それはしなかったので、まだ望みはあるだろう。
ヴィオラ・ザバル達と別れた後は、最初の予定通りアディルの汎用端末を購入に向かった。
俺は基本的に、仕事関係の許可証と個人的な連絡用には、通話の相手の映像は出ない仕様の、ちょっと古いタイプの腕輪型端末を使い、情報遊覧には板状端末を使用している。
ちなみに仕事の電話は、一旦船に繋がったあと、暫く出なければ自動的に俺の腕輪型端末に繋がるようになっている。
アディルには、普通の汎用端末か腕輪型端末かを選んでもらったわけだがお揃いがいいと言ったので、腕輪型端末と薄板を買ってやった。
ただし、腕輪型端末は通話の相手の映像が出るタイプで、最新型のやつを選んでもらった。
その後はシャトルの発着場に向かい、俺の船に貨物を運んでくれる貨物用シャトルを探しだし、一緒に連れていってくれるようにお願いした。
貨物室が真空状態で作業をする必要があるので、宇宙服を着ることになるわけだが、アディルは買ったばかりの宇宙服と腕輪型端末を身に付け、嬉しそうに身体を動かしていた。
正午をすぎれば、すぐにシャトルの発着場には活気が溢れだした。
俺の船への積み込みは、事故もなくスムーズに終了した。
アディルも初めての作業ながら、ミスもなくこなしてくれた。
そうして積み込みが終了したので、船の通信機でチャーリーに連絡をとることにした。
ちなみに船の通信機は、操縦室・俺の部屋・アディルの部屋にある。
「よう。予定が決まったので報告だ」
『お。早かったな』
チャーリーは、レストランかどこかにいるらしく、背後に椅子やテーブルや人の姿が見えた。
「積み込みが全部終了したんでな、朝7時30分までに船に来てくれ。8時になって調査が終わって許可がでたら、混まないうちに直ぐ出発する」
『ちと早すぎないか?朝飯食う時間もないぜ』
「それくらいは出してやるよ」
『じゃあいいかな。ティラナ、お前もそれでいいか?』
『はい!むしろその方がありがたいですね!』
姿は見えないが、ティラナが嬉しそうに返事をする。
多分、チャーリーの対面に居るんだろう。
後は、ティラナに食べたい物のリクエストでも聞こうと思っていたところに、ギルドから割り込みが入った。
「すまん。ギルドからだ。ちょっと待っててくれ。もしもし?」
『こちら、惑星ダナークズの貨物配達受付です。ショウン・ライアットさん。貴方の船に便乗希望の方が3名いらっしゃるのですが…』
「指名ってことですかね?」
『微妙な感じですね。貴方がオルランゲア行きの依頼を受けたから、便乗を頼んできた感じですね』
これは別に違法ではない。
貨客船を1からチャーターするより、行き先を見て便乗をお願いした方が安くあがるからだ。
が、俺個人を特定してきたのはどういうことだろう?
「俺の出した条件は伝えてありますか?」
条件というのは、操縦室やエンジンルームや乗組員用の施設に入らない、などといった一般常識的なものは当たり前だが、それ以外にも自分の船に乗るなら、これだけは守って欲しいことを書き出したものだ。
俺の船の場合は、『急がせない事』だ。
緊急事態や、超新星爆発前の脱出時のように迅速な移動が必要な場合はともかく、それ以外は法定速度内の巡行速度以上は出さないと決めている。
なので、そういう事を求めている客はお断りしている。
これを提示し、了解いただけた客のみ受け入れる事にしている。
『はい。条件は了承していただいています』
「だったら正規の停泊地に入った方がいいんですが…」
チャーリーは今回は友人枠なのもあり、シャトルでの乗船もかまわないだろうが、お客となれば正規の停泊地での乗船のほうがいいだろう。
『すみません。しばらく空く様子はないですが、シャトルならだせます。失礼な話にはなりますが、貨物扱いになるので』
「では、俺の友人も乗る予定なので、そのシャトルでお願いできますか?」
『はい。大丈夫ですよ』
「チャーリー、それでもいいか?」
『こっちは構わねえぜ』
「では相手側には午前7時30分までにシャトルの発着場に向かうようにお伝え下さい」
『かしこまりました』
受付嬢の姿が消えると、俺は改めてチャーリーに声をかける。
「待たせたな。そうだ。ティラナに料理のリクエストが何かあるか聞いてくれるか?」
『だとよ。ティラナ。なんかリクエストはあるのか?』
『そうですね…デザートは色々食べてみたいですね。あとは果実酒に煮卵に…』
ティラナはぶつぶつと長考に入ってしまった。なまじ今までにチャーリーや他の客達が食べているのを見ていただけに、興味があるのだろう。
『すまん。なんか考え込み始めたんで明日な』
「ああ。遅れないようにな」
そうして通信機を切ると、アディルが後ろで控えていた。
「お客様が増えるのですね」
「ああ。だから仕込みと追加の買い出しをしておかないとな」
「お手伝いします!」
「昼飯を食べてからな」
「はいっ!」
そうして昼食に出したナポリタンを、アディルは美味しそうに平らげてくれた。
そろそろアディルの初フライトが近づいています
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