File123 惑星ダナークズでの待機時間④ 偉大なる母の堂々たる姿
1/22 超新星爆発の影響の表現にミスがあったので、修正いたしましす。
翌朝の7時30分。
全ての船舶の航行が禁止された。
実際の影響は1000年は先な上に、距離があるために影響自体もごくわずかなものになっているだろう。
しかし、超空間に関しては、何が起こるかわからないところがあるので、爆発から24時間たってからテストをして、異常がなければ解禁されるらしい。
なにより、宇宙空間は何があるかわからない。
もしかしたら、爆風がワープしてくるなんていう事があるかもしれないのだ。
まあ、無いだろうけども。
俺とアディルは、朝食を早めに済ませてから、待機の時間に色々な用事をすませておくために、宇宙港に移動していた。
船舶の航行は禁止だが、簡易停泊地へのシャトルの運行だけは、極短距離なので許可されている。
まあ、爆発の30分前から、爆発後4時間はそれすら禁止になっているが。
ロビーには、マスコミ・避難民・職員・輸送業者・観光客等がひしめき合い、大型ビジョンに注目していた。
その大型ビジョンには、観測用無人探査機がリアルタイムでとらえた、不気味に赤黒い恒星ヴォーネの姿が映し出されていた。
それと同時に、それよりも遥かに小さな、恒星ヴォーネに従っていた惑星達の陰影も映り込んでいた。
避難者の人達は、いったいどんな思いでこの映像を見ているんだろうか?
「もし…。係の人に見つけてもらえなかったり、マスターに運んでもらえなかったら、私はいまこの瞬間もあそこにいたんですね…」
それを見たアディルは、不安になったのか、俺の腕をきゅっと掴んできたので、頭をぽんぽんとしてやったところ、少しは落ち着いたようだ。
そこに、大型ビジョンからアナウンサーの声が聞こえてきた。
『数百億年の長きに渡り、周囲の惑星に様々な影響を与え、惑星デューモアでは生命の生活する環境を与えてくれていた恒星ヴォーネの命が、いままさに潰えようとしています。当番組は、その最後の瞬間までを完全生中継でお送りします…』
アナウンサーに続いて、専門家らしい人が解説をはじめる。
その場にいる全員が、大型ビジョンに視線を向けていると、不意に声をかけられた。
「ついに最後の時ってやつだな」
「お久しぶりですショウン様」
声をかけてきたのは、チャーリー・レックと、その秘書であるティラナだった。
ティラナは、以前と同じパステルカラーのボディスーツを着て、その上からライトグリーンのコートを羽織っていた。
頭部は、耳の部分にヘッドフォン状のパーツがあるのと、鼻を中心とした顔の凹凸があるだけで、眉・目・鼻の穴・口がなく、つるんとしている。
いわゆるのっぺらぼうのままだ。
しかし、チャーリーの話が真実なら、身体は全身がバイオ体になっていて、あのマスクの下には、ちゃんとした顔があり、手足もバイオ体になっているはずだ。
「えーと。換装は終了したんだよな?」
「はい。本当はこれを外していたいんですが…」
ティラナはちらりとチャーリーの方を向く、するとチャーリーは、
「絶対にダメ!」
と、腕でバツをつくった。
「ということですので」
そのチャーリーの態度に、ティラナは呆れたような嬉しいような表情を浮かべていた。
「了解。船に乗った時には、食事をたっぷりご馳走するよ」
「有り難うございます。ショウン様のお料理、楽しみにしております」
ティラナは嬉しそうに答えると、アディルに視線を向けた。
するとアディルは慌てて俺の腕を離し、
「初めまして。私は、パートナードールズ社謹製、ナノマシン搭載型護衛用バイオロイド『シールダーシリーズ』のファーストロット、型式番号BNG-タイプF、製造番号ADL19635。いただいた名前はアディルです」
ティラナに、丁寧に御辞儀と挨拶をした。
「私はジュゼール・レプリカント社謹製、バイオタイプ愛玩用人造人間、型式番号HST-タイプB、製造番号SA986390。もらった名前はティラナよ」
そしてそれに答え、ティラナも同じように挨拶を返している。
そのティラナの挨拶に、チャーリーは不満そうな表情を浮かべる。
「ティラナのやつ、登録変更するときに愛玩用人造人間って登録したんだぜ?『これが私の存在意義です』とかいってよ。
まあ、あいつが気に入ってそうするんなら、文句が言えないんだけどな…」
どうやらティラナが自分を愛玩用人造人間と自称するのに納得がいかないらしい。
ちなみに、アンドロイド・バイオロイド問わず、そういう用途に使われるもの全てを愛玩用人造人間と呼称するが、いわゆる俗称で、正式な名称ではない。
しかしその名称故に、安物扱いされる事がある。
チャーリーにとっては、大事な秘書が安物扱いされるのはたまらないだろう。
でもティラナ自身がそれを選んだなら仕方ない。といったところか。
『…皆様。恒星ヴォーネの最後の瞬間まであとわずかとなりました。カウントダウンを開始したいとおもいます…』
そんな話をしているうちに、カウントダウンがはじまった。
『10!9!8!』
星域連邦発足時に提案され、銀河標準歴として使用されている、銀河正史歴では1383年。
『7!6!5!』
銀河共和国発足時から使用されている共和国歴では1281年。
『4!3!2!』
1月11日午前8時。
『1!0!超新星爆発確認!』
その瞬間、モニターから強烈な光が襲ってきた。
遮光フィルターを何百重にも重ねたカメラ越しでもこれなのだから、裸眼で直視しようものなら完全に失明しているだろう。
まあそんなことをするなら、失明どころではすまないだろうが。
そしてその瞬間をもって、巨星たる恒星ヴォーネは堂々たる最後を迎えたのだった。
もちろんその直後、その姿を捕らえ続けていた観測用無人探査機も、役目を終え、宇宙の塵となった。
この爆発によって多くの元素が作り出され、それらの元素は爆発の勢いで宇宙空間にバラまかれ、新しい生命や物質を生み出す材料になる。
つまり、恒星はその死と引き換えに、生命や物質の材料を生み出す。
そう考えると、恒星ヴォーネは偉大なる母とも言えるわけだ。
「これから24時間は足止めか」
簡易停泊地行きのシャトルの発着も、正午を過ぎるまでは禁止されているので、それまでは宇宙港から動けない。
なので、オルランゲア行きの依頼を受けておき、正規の停泊地を予約しておくつもりだ。
そんなことを考えていると、ティラナと腕を組んだチャーリーが声をかけてきた。
「俺達はホテルに戻るけど、お前らはどうするんだ?」
「依頼を受けて正規の停泊地の予約かな。貨物の積み込みは、正規の停泊地が空いてからになるから、出発時間が確定できないんだ。子細が確定したら連絡するよ」
「わかった。オルランゲアまでよろしくな」
「ああ」
そうしてチャーリー達と別れてから、貨物配達受付に向かい、オルランゲア行きの依頼をチョイスし、正規の停泊地の空きを尋ねたところ、
「依頼された貨物の積み込みには貨物用シャトルの貸出料金は発生しませんので、シャトルの禁止時間が明ければすぐにでも積み込みが可能ですよ」
という回答が返ってきた。
もちろんお願いし、禁止時間の明けた正午から積み込みをお願いした。
それが終われば、次は宇宙服も扱っている服飾店に向かう事にする。
アディル用の宇宙服や着替えを買うためだ。
特に宇宙服は、今は宇宙港の貸出品なので、返却の必要がある。
その店は、かなり大きいサイズの宇宙服や普通の服が揃っていて、アディルの服を全部揃える事ができた。
ちなみに、アディルが選んだ宇宙服は、黄色地に白のラインの入ったやつだった。
そうして次に、汎用端末を購入にいこうとした時に、
「ショウン・ライアット。少々時間をいただけるだろうか?」
取り巻きをつれたヴィオラ・ザバルが姿を現した。
用語説明
重力板:重力下において、その重力を遮断し、運搬・設置を安易にする道具。
惑星上や宇宙港ではもちろん、宇宙空間内での宇宙船内において、人工重力を切れない状況での重量物の運搬にも用いられる。
愛玩用人造人間という呼称について:いわゆる性的な使用目的のアンドロイド・バイオロイドの俗称であり、そのイメージから安物扱いされる事がある。
バイオロイドは製作された時点で性的な使用目的が可能だが、専用に用いない限り愛玩用人造人間とは呼称しない。
アンドロイドも、性的な使用目的が可能だったとしても、専用に用いない限り愛玩用人造人間とは呼称しない。
ついに超新星が爆発しました。
現実でも間近な恒星があるそうです
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




