File118 惑星デューモアからの避難引っ越し⑥ 注文から受け取りまでが早すぎるとちょっとビビる
33時間と20分の航行の後、俺の船は午前3時10分に無事にダナークズ宇宙港に到着した。
時間が時間なので、避難者の人達は朝まで寝かせてあげたかったが、人や荷物を下ろしたら、直ぐに停泊地を明け渡す必要があるため、仕方なく降りてもらった。
まあ、子供たち以外は全員起きていたから問題はなかったが。
人と荷物を降ろして停泊地をでると、臨時に設置された簡易停泊地が宇宙港の近くに設置されているため、そこに船を泊めた。
ちなみに今現在、超新星爆発のせいで、デューモアとダナークズは共和国のみならず、帝国や連邦からも注目されている。
その最中、ダナークズ到着の少し前に報じられたニュースは実に衝撃的な内容だった。
今回の惑星デューモアの脱出プロジェクトの功労者は、評議員ではなく、補佐官であり、評議員はその手柄を横取りしていた上に、隔壁が閉まったのも評議員の仕業だったことが発覚したからだ。
はっきり言って、あの状態なのをわかっていて隔壁を閉めたのだから、殺害するつもりだったといっても間違いじゃない。
住民の人達は、評議員がそういう人物だと理解していたようなふしがあった気がする。
そのニュースを聞いた時に、小さくガッツポーズをした人なんかが居たからだ。
ともあれ、超新星が爆発するまでに無事に避難できたのはありがたいことだ。
避難者の人達はいったんはダナークズ宇宙港のホテルに滞在し、超新星爆発が終了し、宇宙空間がある程度落ち着いてから、移住先へ向かうらしい。
ちなみに、俺たち貨物輸送業者も、超新星爆発が終了し、宇宙空間がある程度落ち着いてからでないと出港しないように指示があった。
まあ、超新星爆発でどんな影響があるかわからないんだから出たくはないな。
それに、到着までずっと起きていたからかなり眠い。
とりあえず今から、昼ぐらいまで一眠りすることにしよう。
俺が目を覚ましたときには、昼の12時を少しこえていた。
昼メシを作るのもかったるいので、宇宙港にあるサンライトイエローリップルに行く事にした。
ちなみに、この簡易停泊地は、六角形のハニカム構造(蜂の巣構造)の金属フレームに、船を係留するためのマニピュレーターとシャトルの発着場だけというシンプルなもので、宇宙港に行くためには、宇宙服を着ていかないといけない。
ついでに食材の補充もしておきたいが向こうで連結できるシャトルでも借りるかな。
そうしてシャトルに乗り、宇宙港内のサンライトイエローリップルでミックスグリルのプレートを食べていると、何故かチャーリー・レックが1人で姿を表した。
「あれ?首都に行ったんじゃないのか?」
てっきりティラナの身体を探すために、首都に向かったのかと思ったんだが。
「先にお前の依頼を片付けておこうと思ってな。ロングショットコロニーに相談に行ってたんだ。
まあお前にとっては嫌な記憶がある場所だろうが、相談相手としちゃ一番の人がいたわけだからな。
そしたらいきなりの超新星爆発だろ?不謹慎なのはわかってるが、滅多にない天体ショーだ。見ておきたいと思ってな」
たしかにあそこなら、色々あるかもしれないし、情報もあるだろう。
「それで、どうなったんだ?」
「手に入れてきたぜ!年代物のピンボール台!」
「マジか!どんなやつなんだ?」
チャーリーは、興奮している俺を、まあまあと押さえながらテーブルに座ると、大型端末を取り出し立体映像に映した。
「じゃーん!一番最初の『オーシャンストーリー』だ!」
そこには、オーシャンというだけあって、惑星上の海の生き物やビーチの光景なんかがデザインされた年代物のピンボール台の映像があった。
そしてそのデザインに、俺は見覚えがあった。
「これ…俺が子供の時にハマったやつだ!」
「お、そうなのか?」
「近くの駄菓子屋にあってさ。駄菓子よりそっちが目当てだったな」
子供の頃に、夢中になってやっていた記憶が甦る。
その駄菓子屋は、それの点数によって、ささやかだが景品をくれたりしていた。
「喜んでくれるならよかった。じゃあ、楽しい思い出から現実に戻ってもらおうか」
そう言うと、チャーリーは代金の請求画面を見せてきた。
「現物はすでに相手方より入手済み。ギャンデック氏は、お前にならって事で38万クレジットのところ33万でいいってさ。俺も今回は仲介手数料は取らないからそのままの額を俺に渡してくれ。
支払いは現物と引き換えでいい。搬入は専用のシャトルを借りてやるよ」
随分といたれりつくせりだが、こういう時はなにかがあるのがチャーリーという男だ。
「ありがたいけど…なんかあるんだろ?」
そう切り出すと、
「オルランゲアまで、人間だけでいいんでロハで乗っけていってくれ!」
チャーリーは軽くこちらを拝んできた。
つまりは仲介手数料を取らない代わりにという事だろう。
「べつにいいが、依頼を受けてもかまわないよな?」
「もちろん」
依頼がないならともかく、空荷は良くないからな。
これで取り引きの話は一旦終了だ。
そこで、ちょっと気になった事を聞いてみた。
「そういえば、ティラナはどうしたんだ?」
「ふっふっふっ…」
すると、チャーリーは気持ち悪い笑いを浮かべた。
「なんだよ。気持ち悪い笑いかたしやがって」
「実はな、本来なら首都で換装するつもりだったんだけど、ここにたまたま、俺もティラナも納得するバイオボディをあつらえてくれる所があってな。
ティラナの奴はそこでいま最終チェックをしてる。
超新星爆発が終了する頃には出来上がって、交換できるはずなんだよ」
そう語るチャーリーの顔は、実に嬉しそうだった。
「随分駆け足で決めたんだな」
「ティラナがデザインを気に入ったんでな」
「なるほど」
ティラナ本人が納得したのなら、チャーリーも俺も口を挟む必要はない。
そうしてるうちに食事が終わったので、買い出しに向かう事にした。
何故かチャーリーもついてきたが。
そうして生鮮食品販売店に向かう途中、シャトルの発着場に向かう広場で、俺の船に乗せていたようなコンテナがいくつも並べられ、タグなんかを確認しながら、大勢の係員が分配された荷物の返却をやっていた。
そこで、俺の船に乗っていたコンテナと、俺の船にコンテナを受け取りにきた係員を見つけたので、なんの気なく係員に話しかけると、意外な話を聞くことになった。
「「受け取りにこない?」」
「はい。パートナードールズ社製のバイオロイドなんですけど、取りにこないんですよ。付随されていた連絡先も繋がらないし」
俺の船に乗っていたコンテナの奥にあったのは、女性型バイオロイドが納められたカプセルだった。
この意外な荷物に、係員は本気で困っていた。
あのコンテナには、こんなのも入ってたのか。
ダナークズまでの道中にはなんのトラブルもありませんでした。
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