File115 惑星デューモアからの避難引っ越し③ 人助けは自己満足の為の偽善だと笑う人がいるが、やらない奴よりはマシ
ウィオラ・ザバルの言葉を皮切りに、様々な船の船長達も計算が終わったらしく、
『こちらは定期船『アイガー』通路でなら20人はなんとか』
『同じく定期船『ウシュマ』貨物室なら5tはいけるぞ!』
『同じく『ガテルオ』!通路なら15人プラス2tならいける!』
それを皮切りに、何人も受け入れを受諾し始めた。
『荷物なら1tくらいは大丈夫だ』
『こっちも3人くらいならいけるぞ』
『500kgとかでもいいのか?』
『仮眠室3人分をあけるからできれば美人をプリーズ!』
『だったらこっちは5人!イケメンを希望するわ!』
『溜まってたゴミや不要品捨てたらスペースが出来ると思うんだけど…ダメかなあ?』
次々と受け入れの声が上がった。
何人か不謹慎な発言はあったが。
そして俺も、
『荷物なら1t、人間なら3人くらいならなんとかなると思う』
当然、受け入れを受諾する事にした。
視点変換 ◇ロニエ・ヒルランド◇
「評議員!いったいどういうつもりですか?!停泊地の隔壁を全てロックするなんて!」
管制塔内部に入った私が見たのは、管制官達に対し、護衛の部下と共に、彼等に銃を突き付けている、惑星デューモア評議員、ザグストス・アマントの姿だった。
最初に超新星爆発の可能性が示唆された翌日に、自分の家族と全ての財産を持ってデューモアから逃げ出し、いままで寄り付きもしなかった癖に今更ながら何をしに来たんだ?
「私の船が故障した。全く。避難が完了するというから、私が乗った船を最後に出発させて、『艦長は最後に船を降りる』的なパフォーマンスをしたかったのだが、船が故障して修理の目処も立たないというのでは、迅速にかわりの船を探すしかないだろう」
いの一番に逃げ出したくせに、よくもまあ臆面もなく。
「では、民間船に乗るなり、スタッフの船に乗るなりすれば良いではないですか!」
これぐらいは誰でも当たり前に考える事だ。
「私が乗る船に、私以外の乗客を乗せるつもりか?私が乗るのだから私専用にするに決まっているだろう!」
だがこの男には、そんな子供でも思い付く事すら思い付かないらしい。
「輸送用の船に余裕がないのに、そんなことができるわけがないでしょう!」
「庶民やその荷物など捨て置いてかまわんだろう?」
お前は何をいってるんだ?
目の前のこの男は、そんな表情を浮かべていた。
銀河帝国の貴族がこんな感じらしいが、この男が実は帝国の貴族だといったら、私は即座に納得するだろう。
そして、どれだけ説得しようが、この男の考えは変わらないだろう。
「…わかりました。ではスタッフの船を使って下さい。今からスタッフや荷物を下ろします。ですので今すぐ隔壁を開放してください」
なので、この男の希望を叶えてやることにした。
これ以上時間をとられたくない。
だが、この男の頭の悪さは、私の想像を超えていた。
「なにを言ってる。私の脱出手段が無い状態で、庶民が逃げ出すなど許さん!」
そういって、一番近くにいる女性の管制官の頭に突き付けた銃を、かちゃっと動かした。
「!…わかりました…」
管制官達が人質に取られて居なければ、あの脂ぎった顔面にフックの1発でも叩きこんでやるのに…。
それから20分後。
スタッフの船から、パイロット以外のスタッフと、全ての荷物を下ろし終えた。
「船の準備が出来ました。移動をお願いします」
「うむ」
アマントは鷹揚に返事をすると、護衛の部下達を引き連れ、管制塔を出ていく。
私は、この男が乗った船が出発するまで見届けるために、その後をついていった。
奴が船に乗り込み、扉が閉まる寸前、私に対して、気が狂っているとしか思えないセリフを吐いた。
「そうそう、私が脱出しても、20時間は開放するなよ。私に不愉快な思いをさせた罰だ。いいな」
何が不愉快だ!
不愉快になったのはこっちの方だ!
ともかくあの男の乗った船が超空間に入ったなら、あの男の戯言など聞く必要はない。
出発して程なく、船は超空間に突入していった。
「よし!船が超空間に入った!すぐに隔壁を開けろ!」
「了解しました!」
あの男の乗った船が、視界から消えた瞬間に、管制官に、隔壁をあけるように指示した。
しかし次の瞬間ブザーが鳴り響いた。
「なんだ?」
「大変です!対テロリスト用防衛システムが本当に作動してしまいました!時限装置でスイッチが入るようになっていたようです!」
その言葉を聞き、一瞬頭の中が真っ白になった。
しかしこれは、理由のわからない誤作動ではなく、正式に機能として存在する時限装置を使用したものだ。
それならば、解除コードを使用すればすぐに開くはずだ!
「すぐ解除しろ!」
「だめです!解除コードが変更されています!」
今度こそ本当に頭が真っ白になった。
「あのクズ野郎!」
そして次の瞬間、猛烈な怒りが湧き、壁を殴り付けた。
なんとしても無事に脱出して、あの野郎を必ずぶん殴ってやる!
だがまずは、スタッフの脱出手段を確保する必要がある。
船が直ればいいが、期待はできない。
荷物はともかく、スタッフだけは脱出させたい。
「駄目元で頼んでみるか…」
私は、現在身動きがとれない船乗り達に声をかけて、みる事にした。
彼等に通信が繋がったのを確認し、軽くお辞儀をすると、真剣な表情で用件を切り出した。
『私は、惑星デューモア評議員補佐官のロニエ・ヒルランドと申します。現在、対テロリスト用防衛システムを全力で解除しております。そんな状態でこのようなお願いは心苦しいのですが、我々スタッフ用の船が故障し、修理の目処がたちません。ですので、バラバラでかまいませんので、スタッフ120名とその荷物40tを乗せるスペースを、ご提供いただけませんでしょうか?』
この私の問いかけに、船乗り達は沈黙した。
当然だ。
現状、ここから出発する船の積載量は満載に近い状態のはずだ。
積載量というのは、エンジンの負担や燃料の効率を左右し、彼等自身の命も左右するものだ。
そこに、120人の人間と40tの荷物をポンと乗せれる船はないし、バラけたとしても、どれだけの船が協力してくれるか。
最悪スタッフだけでも乗せてもらえれば御の字だ。
莫大な対価を求められるかもしれないが、なんとか交渉してみるしかない。
そう考えていたところに、
『了解した。残念ながら旗艦にしか余裕がないので、ラウンジに雑魚寝で良ければ10人は可能だ』
1人の女性の貨物輸送業者が声をあげた。
それを皮切りに、
『こちらは定期船『アイガー』通路でなら20人はなんとか』
『同じく定期船『ウシュマ』貨物なら5tはいけるぞ!』
『同じく『ガテルオ』!通路なら15人プラス2tならいける!』
『荷物なら1tくらいは大丈夫だ』
『こっちも3人くらいならいけるぞ』
『500kgとかでもいいのか?』
『仮眠室3人分をあけるからできれば美人をプリーズ!』
『だったらこっちは5人!イケメンを希望するわ!』
『溜まってたゴミや不要品捨てたらスペースが出来ると思うんだけど…ダメかなあ?』
『荷物なら1t、人間なら3人くらいならなんとかなると思う』
『2人なら大丈夫だが、毛布と食糧は提供して欲しい』
『私の所は荷物が1tだけなんだけど大丈夫かなあ?』
定期船の船長・貨物輸送業者・デューモアに本社や支社があった会社の船の船長達が次々と声をあげてくれた。
その事実に、私は自然と頭が下がり、
「ありがとう…!」
自然と感謝の言葉がでてきた。
だが、感激にいつまでもうち震えていてはいけない。
「では、直ぐに荷物と各船舶のリストを制作し振り分けを開始します!システムも絶対に解除致します!絶対に、脱出しましょう!」
絶対に脱出する!
視点終了
時間経過の調整に苦戦中…
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