File114 惑星デューモアからの避難引っ越し② 悪い事は最悪のタイミングでやってくる
まず、超新星爆発=スーパーノヴァが何か軽く説明しよう。
恒星は水素の核融合によって、エネルギーを放出し、明るく輝いている。
そしてその燃料が無くなった時、恒星は最後を迎えることになる。
その最後は、星の質量によって違いがあり、大きくは、質量の軽い星・大質量の星・超巨大質量の星の3つにわけられる。
質量の軽い星は、一度膨らんだ状態(赤色巨星)になったあとに小さくなっていき、恒星の残骸と言われる白色矮星という状態になる。
大質量の星=太陽の8~10倍の星は、超新星爆発をおこし、
超巨大質量の星はブラックホールになる。
恒星ヴォーネはこの中の大質量の恒星になる。
燃料切れになった恒星は、何とかしてエネルギーを取り出すために収縮を開始するわけだが、それとは逆に見た目は巨大化する。
これは、ヘリウムの中心部は縮もうとするが、周りの水素の層は逆に膨張するためだ。
これが、軽い星なら赤色巨星・大質量の星なら赤色超巨星と呼ばれる。
そしてその赤色超巨星の中心が、自分の重さを支えきれずに、重力崩壊を起こして潰れると、中心部に中性子が作られ、推定100億℃にもなる超高温で強烈な衝撃波が発生し、同時にニュートリノが大量に放出される。
ニュートリノは衝撃波より足が速いので、星の表面を突き抜けて宇宙空間に散っていく。
これがニュートリノバーストと言う、超新星爆発が起こるぞという合図だ。
そして、赤色超巨星はあまりにも巨大なため、衝撃波が外側に伝わるまでかなりの時間がかかる。
そしてその衝撃波が表面にたどり着いた時が、超新星爆発の瞬間というわけだ。
この爆発により、恒星の100億倍の閃光・推定100億℃と言われる高熱のガス・強烈な放射線(ガンマ線)が秒速数万kmの衝撃波と共に、周囲に一斉に放たれる。
それは、1光年内の惑星自体を吹き飛ばし、惑星大気を丸ごと剥ぎ取り、惑星そのものを焼き尽くす。
さらに、同時に発生する放射線に至っては、50光年先まで届き、生命体は壊滅的な打撃を受けるとされている。
俺が学校で習った程度の話だけでも、どれだけヤバいものか理解できるだろう。
はっきり言って、人類の文明なんかけし粒以下だ。
こうなると、10年前に即座に移住計画を発案した評議員の判断は、まさに英断だと言えるだろう。
「まさかこんなタイミングでくるとはな…」
まだ時間があるとはいえ、自分がめちゃくちゃ焦っているのがわかる。
その時、外で作業中の作業員の姿が視界に入った。
「おい!あんた達はさっさと脱出用の船に急いだ方がいい!なんなら俺の船に乗ってくれ!」
すると思わず、彼等に対して通信で声をかけていた。
しかし、
『大丈夫ですよ。10年の間に何回も訓練をしていますからね。ほら、誰も慌ててないでしょう?』
作業員達は誰一人慌てておらず、テキパキと撤収作業を開始している。
「たしかに…」
あのアナウンスは客室にも貨物室にも聞こえたはずだ。
なのに誰も操縦室に入ってきて、早く脱出しろとわめいてこない。
『訓練の時に、我先に脱出しようとして間に合わなかったというのが何回もありましたからね。慌てて我先に。より、順番を守ったほうがスムーズに脱出出来るのを、みんな理解してるんですよ』
その作業員の言葉に、少しだけ落ち着いた気がした。
『じゃあ、我々も脱出準備に向かいますので。失礼します』
作業員達は、まるで休憩にでも行くかのように、落ち着いた様子で通路の外に出ていった。
「じゃあ、こっちも落ち着いていきますかね」
その作業員達に習って、俺も焦らずに行動する事にしよう。
「管制塔。こちら『ホワイトカーゴⅢ』順番待ちはどれくらいになりそうだ?」
『こちら管制塔。大型の船を先に全部出してから、中型・小型と停泊地のナンバーの若い方から、順次脱出してもらうことになります。
全船舶の脱出完了までの所要時間は約3時間。
爆発までは十分な時間がありますので、落ち着いてこちらの指示にしたがって下さい』
管制官の女性も、作業員達同様に落ち着いていて、彼女の後ろから聞こえる声も冷静なものばかりだった。
『そちらの『ホワイトカーゴⅢ』は1時間半は待っていただく事になります。それと、私達スタッフは一番最後に脱出する予定です。船も用意してあるので心配しないで下さいね』
おそらく何度も聞かれたのだろう。
自分から脱出のタイミングを説明してきた。
そのやり取りが終わった後、内部スピーカーで出発の時間を知らせると、操縦室のドアを叩く音がした。
婆ちゃんの1人が、みんなにお茶を入れたいからキッチンを貸してくれと頼みに来た。
それを了承し、キッチンに向かおうと席から立ち上がった時、
『宇宙港に停泊中の全職員・全船舶に通達。
さきほど、対テロリスト用防衛システムが誤作動を起こし、宇宙港内の全障壁にロックがかかってしまいました。現在全力で復旧作業を開始しておりますのでそのまま落ち着いてお待ち下さい。繰り返します。宇宙港に停泊中の…』
という、この状況下で、悪夢としか思えない放送が、震える女の声で流れた。
何もなければいいなと思っていたが、最後にこんなものがくるとは思わなかった。
これでパニックになったらヤバい。
そう思ってラウンジを見たが、誰一人騒がず、爺さん達が艦隊チェスをやっていた。
貨物室からもなにもいってこず、子供の騒ぐ声がするだけだった。
「訓練でこういう状況もあったのよ。慌てなくて大丈夫。それより、キッチンは貸していただけるの?」
慌てた俺に、キッチンを借りにきた婆ちゃんが、冷静に宥めてくれた。
やっぱり、10年も赤色超巨星の近くで暮らしてきた人達は肝っ玉が違うようだ。
対テロリスト用防衛システムの誤作動の放送が入ってから30分後。
婆ちゃん達にキッチンを貸して、いれてもらったお茶をご馳走になっていると、船に通信が入った。
どうやら、停泊中の船舶全部に対してのものらしい。
それをうけると、画面には、30代後半ぐらいのスーツの男が現れた。
その男は軽くお辞儀をすると、真剣な表情で用件を話し始めた。
『私は、惑星デューモア評議員補佐官のロニエ・ヒルランドと申します。現在、対テロリスト用防衛システムを全力で解除しております。そんな状態でこのようなお願いは心苦しいのですが、我々スタッフ用の船が故障し、修理の目処がたちません。ですので、バラバラでかまいませんので、スタッフ120名とその荷物40tを乗せるスペースを、ご提供いただけませんでしょうか?』
悪いことには悪いことが重なるとは昔からよくいわれている。
船乗りとしては助けて当たり前。
しかし、人員も荷物も満杯に近く、脱出のためのスピードも遅くなっているのは明かだ。
どれぐらい乗せれるか?
乗せた時のリスクは?
おそらく全員がその計算をしているなか、
『了解した。残念ながら旗艦にしか余裕がないので、ラウンジに雑魚寝で良ければ10人は可能だ』
その計算を一番に終了させて名乗りを上げたのは、船団『天使の宅配便』を率いる、ウィオラ・ザバルだった。
用語説明:
超新星爆発とは
恒星は水素の核融合によって、エネルギーを放出し、明るく輝いています。
そしてその燃料が無くなった時、恒星は最後を迎えることになります。
その最後は、その質量によって違いがあり、
主に、軽い星・大質量の星・超巨大質量の星の3つに分別されます。
太陽のような軽い星は、一度膨らんだ状態(赤色巨星)
になったあとに、恒星の残骸と言われる白色矮星になります。
大質量=太陽の8~10倍の星は超新星爆発を起こします。
超巨大質量の星はブラックホールになります。
作中の恒星ヴォーネはこの中の大質量の恒星になります。
燃料切れになった恒星は、何とかしてエネルギーを取り出すために収縮を開始しますが、見た目は巨大化します。
これは、ヘリウムの中心部は縮もうとするのですが、周りの水素の層は逆に膨張するからです。
ここまでは赤色巨星とおなじですが、質量が多いためにさらに巨大になります。
そうして出来上がる物が、赤色超巨星と呼ばれます。
そしてその中心が、自分の重さを支えきれずに、重力崩壊を起こして潰れると、中心部に中性子が作られます。
すると、強烈な衝撃波が発生し、同時にニュートリノが大量に放出されます。
ニュートリノは衝撃波より足が速いので、星の表面を突き抜けて宇宙空間に散っていく。これをニュートリノバーストと言います。
そして、あまりにも巨大なため、衝撃波が外側に伝わるまでかなりの時間がかかります。
そしてそれが、表面にたどり着いた時、恒星の100億倍の強烈な光・100億℃と言われる高熱のガスを含んだ、秒速数万kmの衝撃波・ガンマ線と呼ばれる強烈な放射線が周囲に一斉に放たれることになります。
これが超新星爆発=スーパーノヴァと呼ばれるものです。
この爆発は、1光年内の惑星自体を吹き飛ばし、惑星大気を丸ごと剥ぎ取り、惑星そのものを妬き尽くされます。
特にガンマ線は、半径5光年以内の惑星表面に住む生命体は絶滅し、25光年以内の惑星に住む生命体は半数が死に、50光年以内の惑星に住む生命体は壊滅的な打撃を受けるとされています。
しかし同時に様々な元素が作り出され、新しい生命や物質を生み出す材料になります。
悪い事には悪い事が重なるものです。
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