File113 惑星デューモアからの避難引っ越し① 大規模プロジェクトへの参加は、無関心か積極的かのどちらか
結論として。
詐欺師のシビラグ・マーチョスと、
ストーカーのユゼット・カイエルは、きっちりとお縄になった。
ちなみにマネージャーさんは監禁などされておらず、事務所の偉い人と会議をしていたらしい。
ダルカ氏は賞金が入るため、ニコニコしながら停泊地を後にし、
レツィナ嬢は桃の果実酒をしっかりと握りしめ、マネージャーさんと楽しそうに帰っていった。
チャーリーの奴には、改めてピンボール台をお願いしておいた。
もちろん2割引させておいた。
そうして、荷物をすべて下ろし、報酬をうけとるべく貨物配達受付にいくと、
「ショウン・ライアットさん。避難引っ越しの依頼をお受けになりませんか?」
受付嬢からこんな提案をされた。
この、避難引っ越しとは、惑星ダナークズから、直通で1000光年離れたところにある惑星デューモアにいる住民全員を、別の惑星に移住させるという、10年前から始まった一大プロジェクトだ。
その移住理由は、惑星デューモアにとって生存に適した距離にあった恒星ヴォーネ=赤色超巨星が、近々超新星爆発を起こすのではないかという発表があったからだ。
発表時には、『あと50年くらいは大丈夫だと思うが、星にとってはわずかな誤差だから、早くに離れた方がいい』と、発表されたため、その時の評議員が直ぐ様移住計画を提案、即時可決されて開始された。
その評議員は、今も在任中だ。
以降、移住関係の船舶以外は、惑星デューモアに近寄ることは許可されていない。
そのあたりを利用して、犯罪者がこっそり逃げ込んでいるなんて話もある。
「現在、惑星上に住人は誰も居らず、貴重な文化財や建物も全て解体して運び出し終わりました。
現在は宇宙港にて、惑星上から上がってきた人たちが、移住用の船舶を待っている状態です。
ですので、1隻でも輸送の船が増えていただけるとありがたいのですが」
「たしか、受領資格が時速3光年出る船だっけか」
「はい。今回ライアットさんはその資格があります」
この超新星爆発に関するニュースを聞いたのは子供のころで、その一大プロジェクトに関われるとなると、ちょっとだけわくわくしてしまうのは許して欲しい。
それに、以前から気になっていたものの、受けることが出来なかった依頼を受けれるのは、不謹慎かも知れないが気分がいい。
なので、この提案を受けることにした。
「わかりました。なにか準備するものはありますか?」
俺が承諾すると、受付嬢はにっこりと笑い、
「そのあたりはこちらが用意していますので、直ぐに御用意できます。それから、守っていただかなければならないこともありますので、それもご理解下さい」
必要な映像書類を並べてきた。
こうして到着から、荷降ろし・休憩・燃料補給・必要物資の積み込み・遵守規約の説明を終了させ、わずか3時間で、ダナークズ宇宙港を出発した。
『デューモア迄はできるだけ早く到着し、デューモアからは素早く離れる』
これが守らないといけない事の一つらしい。
まあ、いつ爆発してもおかしくない恒星が近くにあるのだから、急ぐに越したことはない。
なので今回は、最高時速の時速3光年でデューモアに向かっている。
超空間跳躍を使用しての到着までの時間は33時間と20分。
時速1光年なら100時間かかるところを66時間と40分短縮出来ている。
ちなみに貨物室には、簡易トイレが4つ・毛布が160枚・ウォーターサーバー3器・液状食品や菓子類が480食も用意してある。
これは、ギルド側が用意していた人員輸送用のセットだ。
俺の船への割り当ては80人。全員手荷物ぐらいしか持っていない人達だそうだ。
ちなみにこの人達は、別に家や家財道具がないわけではなく、そういったものは貨物専用に振り分けられた船に積み込む予定らしい。
俺の船が人員輸送に回されたのは、貨客船だからだろう。
そして、ダナークズを出発して33時間と20分後。
無事に惑星デューモアに到着した。
宇宙港にはかなりの数の船がやってきていて、脱出の船の進路を妨げない位置に停止している。
そして、宇宙港と惑星デューモアの向こうに、恒星ヴォーネの姿があった。
普通なら、赤とオレンジと黄色が混じっているはずの恒星表面に、赤黒い部分が広がっていて、なかなかに不気味だ。
しかし、悠久ともいえる長い時間、デューモアを初めとして、近隣の惑星達に熱と光を与えてきた偉大なる存在であったのも事実だ。
『現在、宇宙港入港待ちの船舶は、船名を申告した後、管制塔の指示に従って入港を開始するようにして下さい。
入港時は、停泊地の番号を間違えないようにお願いいたします。繰り返します。現在…』
管制塔からは、このような指示が繰り返し流れていた。
その間にも、宇宙港からは様々な船が出港していく。
それをぼんやり見ている訳にもいかないので、直ぐに管制塔に連絡をいれた。
すると、もう少しで全員の避難が完了するかもという事で、かなりの船を集めていたらしく混雑しているらしく、20分ほど待たされた。
『お待たせしました。『ホワイトカーゴⅢ』No.339の停泊地に停泊をお願いします』
「了解。アプローチを開始する」
そうして指定の停泊地に到着すると、船を停泊させた。
そして空気の注入が終了すると、直ぐ様作業員と作業用ドロイドが姿を現し、
『燃料用のハッチと、貨物室のハッチを開けてくれ。避難者達はすぐくるはずだ』
挨拶の時間も惜しいとばかりに、作業員がこちらに指示を飛ばしてきた。
「わかった。少し離れてくれ」
俺は指示通りに両方のハッチをあけ、俺自身も船の外にでて、作業員に入港チェックも兼ねて話しかける。
「住人や宇宙港の作業員なんかはどれくらい残ってるんだ?」
「ありがたいことに、今回の移住でこの宙域からは完全に人がいなくなれそうなんだよ」
「そりゃ参加した甲斐があったってもんだ」
どうやら、ぎりぎりでプロジェクトに関わる事ができたらしい。
そのうちに、燃料補給と簡単なチェックも終了したらしい。
そこに、宇宙港の女性職員と、避難者達がやってきた。
「こちらはショウン・ライアット様のホワイトカーゴⅢで間違いありませんか?」
「ああ。間違いない」
「では、避難者80名よろしくお願いいたします」
そういうと、女性職員は次だとばかりにその場を後にした。
そうして残された80名の避難者に対して、まずこう話しかけた。
「えーあんたたちは俺の船で脱出するわけだが、まず、妊婦さんはいるかな?」
すると1人の女性が手を上げた。
「じゃあこちらへ。あとはじいちゃんばあちゃんもこっちへ。あとは重病人…は、居ないみたいだな。じゃあ、後の人はそこのハッチから貨物室に入ってくれ」
俺の指示に従い、避難者の人達は貨物室に入っていく。
そして、妊婦さんとじいちゃんばあちゃんを上に案内しようとすると、小学生くらいの子供をつれた若い男が声をかけてきた。
「妻をどこに連れて行く気だ?!」
どうやら旦那さんらしい。
タラップがあるのだから予想がつきそうなものだが、説明しなかったのは良くなかった。
「俺の船は貨客船でね。妊婦さんや高齢者には、上のラウンジや客室を使ってもらう」
「じゃあ、私と娘も一緒に」
まあ、旦那さんとしては身重な奥さんが心配なのは当然だ。
しかしそこに、奥さんが待ったをかけてきた。
「大丈夫よあなた。まだ5ヶ月なんだし。それにお年寄りも多いし、あなたがきたら狭くなるでしょう?あなたは下でマナをお願いね」
「しかし、何かあった時には…」
旦那は食い下がろうとする。
しかしさらに待ったをかけてきた人物がいた。
「わがままいっちゃだめだよおとーさん。お年寄りがいっぱいいるんだから、私やおとーさんみたいに元気な人は駄目だよ」
娘さんが旦那さんに説教を始めたのだ。
流石に奥さんと娘さんの2人に攻められては、旦那さんも折れるしかなかったようだ。
それにしても娘さんはしっかりしてらっしゃる…。
そうして全員が乗り込み、出発許可をもらうだけになった時に、
『近隣宙域の全船舶・全施設に緊急通達!
繰り返す!近隣宙域の全船舶・全施設に緊急通達!
観測船『ビッグ・アイ』からの報告で、恒星ヴォーネからニュートリノバーストを確認!
恒星表面への爆発到達は約72時間後!
繰り返す!観測船『ビッグ・アイ』からの報告で、恒星ヴォーネからニュートリノバーストを確認!
恒星表面への爆発到達は約72時間後!
脱出を急がれたし!』
最悪の情報がもたらされた。
ちょっと展開が急ぎすぎたかなと後悔…
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