File112 惑星ダナークズへの貨客輸送④ あの右は世界を狙えるに違いない!
その後の1日は、特になにがあるという事もなく平穏に過ぎていった。
ただしアルコールは抜きにしてやった。
もちろんブーイングは来たが、明日船を降りる時に二日酔いは不味いだろうと説教したら大人しくなった。
まあ、さすがに夕食時には少しだけ提供したけどな。
そして翌日の昼には、無事に惑星ダナークズに到着した。
宇宙港の近くまで船を進め、他の船の出港の邪魔にならない位置で待機し、通信機のスイッチをいれ、管制塔に通信を入れる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』。入港許可を求む」
この時点で、他の船の出港があった場合、しばらく待たされる事になる。
『こちら管制塔。ホワイトカーゴⅢ。入港を許可する。No.422の停泊地に向かってくれ』
「了解」
ここで知り合いの管制官だったり、管制官がおしゃべりな奴だったりすると、下らない会話のやり取りがあったりするのだが、この管制官はどちらでもなかったので、そのままやり取りを終了した。
そうして入港許可が下りると、港内速度を守りながら、指定されたNo.422の停泊地に向かった。
そして停泊地の扉が開いているのを確認し、船尾から入港できるように向きをかえ、船外カメラを起動して入港を開始すると、牽引光線が射出され、船体が安定する。
すると、停泊地内部に、宇宙服を着た2人の人間の姿があったので、
「管制塔!停泊地内部に人間を発見!停止する!」
すぐにエンジンを切り、船を停止させた。
停泊地内部は、船の出入港時には安全のために人間やアンドロイドは立ち入り禁止になっている。
「おい!あんたらなんで停泊地内部にいるんだ?」
直ぐ様、宇宙港でのオープンチャンネルで、宇宙服の2人に呼び掛ける。
『すみません。近くで修理作業してて、大きめのデブリにぶつかりそうだったんで、慌て中に避難したんです』
そう言い訳をしながら、宇宙服の2人組は工具箱を掲げる。
たしかに、外部作業中に人力では処理できないデブリが飛んでくることもあり、危険だと判断した場合、停泊地内部に避難する事が許されている。
「了解した。じゃあ、船が停止して空気の注入が完了するまで、端っこにいてくれよ。管制塔情報は伝わったか?」
『了解した。そこの作業員。後でデブリの方向を教えてくれ』
『わかった』
そうしてその2人が停泊地の角に移動したのを確認してから、船を再起動させた。
そして停止位置につくと、エンジンを停止させる。
固定用アームで船体を固定させ、隔壁が閉じられる。
そうして隔壁が閉まると、空気の注入が開始され、20秒ほどで完了する。
『空気の注入完了。下船を許可します。ようこそ、惑星ダナークズへ』
停泊地内部の空気の注入が終了したので、昇降階段の要請をした。
昇降階段ドロイドが設置・固定されたのを確認し、まずは自分が降りる。
「よし。順番に降りてくれ」
その俺の指示にしたがって、最初に降りて来たのはレツィナ嬢だった。
すると、なぜか作業員の2人が中にいて、レツィナ嬢の前に立ちはだかった。
その作業員の片方がヘルメットを外す。
その素顔は、まあ普通の顔だったが、気障なんだかチャラいんだかナルシストなんだかよくわからない感じだった。
「まってたよシャーロ!疲れただろう?さあ!僕が最高級のホテルのロイヤルスイートを予約してあるから今すぐいこう!」
そうして、満面の笑みを浮かべながら、レツィナ嬢に絡んできた。
これは、芸能人によくあるストーカー被害ってやつだろうか。
「ユゼット・カイエルさんだっけ?君に用事はないからさあ。早くどいてくれる?」
いままでの、ぽやんとした雰囲気ではなく、明らかに不機嫌な対応をしていた。
「そんなつれない事を言わないでくれよ。君のマネージャーも許可をくれたんだからさ」
作業員の片方であり、ストーカー加害者であるユゼット・カイエルがそういった瞬間、レツィナ嬢の表情がさらに険しいものになった。
「サナさんになにしたの?」
「ちゃんと許可を取っただけだよ。ちょっとてこずったけど」
「サナさんになにしたの!?」
「君が大人しく付いてくるなら、教えてあげるよ」
どうやらストーカーを通り越して誘拐・脅迫の現行犯らしい。
しかしそこに、
「おい!なにくっちゃべってんだ?降りられねえだろうが」
と、ダルカ氏が空気を読まない感じで文句を言ってきた。
「ほら。後ろの人の迷惑になってるじゃないか。早く僕と一緒においで」
そのとき、ヘルメットをとっていないもう1人が、ダルカ氏の顔を見て驚き、手にあった工具箱から銃をとりだした。
それに気がついた俺は、思わずそいつの腕を蹴りあげた。
と、同時に、その銃をとりだした男の銃がはじきとばされ、次の瞬間ダルカ氏がそいつの顔面に飛び蹴りを食らわせた。
そして男が仰向けに倒れると、すぐさまうつ伏せにして拘束しはじめた。
「警察に連絡しろ!」
「はい!」
その声にティラナが反応し、直ぐ様警察に連絡した。
レツィナ嬢を通せんぼしていた方は、なにが起こったのかわかっておらず、呆然としていた。
まあ、訳がわからないのはこちらもなので、尋ねることにした。
「なんなんです一体?」
「俺の追ってたのはこいつ。誘拐・詐偽・窃盗・脅迫の常習犯、シビラグ・マーチョスだ」
そして足もきっちり拘束すると、ヘルメットを脱がした。
その下にあったのは、実に平凡な顔だった。
「俺の顔をみた瞬間に銃を取り出したからな。間違いなくそうだろうと思ったぜ」
平凡顔=マーチョスは悔しそうな表情をしながら顔を背けた。
ダルカ氏は、マーチョスに銃を向けながら、レツィナ嬢の進路を塞いでいた方に声をかける。
「おいあんた」
「なっ、なんだよ?」
ユゼット・カイエルはダルカ氏の問いかけに怯える。
「こいつをいつ雇ったんだ?」
「せ…先月だ。前の秘書が辞めたからその後釜に雇ったんだ」
「なるほどな。こいつに言われたんじゃないか?このお嬢ちゃんをモノにするには強引なのがいいって」
「そうだ。『女は強引に行けばいずれ落ちる。彼女が嫌がるのは好意の裏返しだ』と、言われて」
「多分あんたを隠れ蓑にして、そのお嬢ちゃんをさらって、帝国あたりに売り飛ばす予定だったんだろうぜ。で、売り飛ばしたあとはあんたに罪を着せて、金と一緒にトンズラする予定だったんだろう。にしても、ゲーノー人狙うとはな」
ダルカ氏からでた言葉にユゼット・カイエルは驚愕の表情を浮かべていた。
すると、縛られているマーチョスが口を開く。
「帝国貴族のお遊びだよ。ヒューマン以外で有名な奴を自分の奴隷にするのがステータスなんだとよ」
「帝国のバカ貴族はまだそんなこと、やってんのかよ」
「今の皇帝陛下が改革をしていますが、一筋縄ではいかないようですね」
チャーリーとティラナが嫌悪感を露にする。
ギルテンス侯爵家兄妹はこんなことはやっていないだろうが、やっぱり帝国にいかなくて正解だったな。
そしてまだ解決していない話もあった。
「そんな事よりサナさんはどこ!」
そう。レツィナ嬢のマネージャーの所在だ。
レツィナ嬢がカイエルに詰め寄るが、カイエルはレツィナ嬢が近寄ってきたことににやにやしながら、状況を全く理解していない一言を放った。
「お、教えて欲しかったら僕といっ「ふざけんなこらあぁぁぁぁっ!」べぶうっ!」
しかしその一言を言い放つ前に、ついに激怒したレツィナ嬢の見事な右フックが炸裂した。
初仕事終了です。
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