File111 惑星ダナークズへの貨客輸送③ 船での暇潰しは色々限られる
結局出発日の夜は、俺とティラナ以外全員が酔っぱらってそのままダウン。
仕方なく全員をベッドに寝かせてから、ティラナと一緒に後片付けをした。
その間、彼女はずっと嬉しそうだった。
そして翌朝。
俺とティラナ以外で一番最初に起きてきたのはレツィナ嬢だった。
「あう~おはよ~」
間違いなく二日酔い状態で、髪はボサボサ、服装は昨日のままだった。
「お風呂入ります?」
なので朝風呂を進めてみたところ、
「はいる~。朝御飯はそのあとで~」
ダイニングテーブルにつっぷしながら返答した。
その状態のレツィナ嬢に冷水をだし、風呂にぬるめのお湯を張る。
そうして風呂の準備が出来た事を伝えると、レツィナ嬢はぼんやりした足取りで浴室に向かった。
その彼女の後ろ姿を見ながら、なぜ猫科獣人の彼女が、柑橘類を好きだったり風呂が平気なのかと色々疑問が浮かんでしまう。
以前に乗せたビステルト人の猫科の人は、柑橘類もシャワーも苦手だったので、個体差なのだろうと思うが実に謎だ。
その彼女が、30分ほどしてから風呂からあがってくると、
「いや~身体べたべただったから最高だよ~。ちょっと寝ちゃったー」
と、実に上機嫌になっていた。
完全では無いだろうが、少しは酒も抜けたらしい。
彼女が風呂に入っている間に用意した朝食は、
トースト・プレーンオムレツ・ベーコン・生野菜のサラダ・いちごのヨーグルト・りんごジュース・コーヒー、というメニューだ。
そうしてレツィナ嬢が朝食を食べていると、男2人も起きてきた。
「あったま痛てー」
「ぎぼぢわりい…」
もちろん、昨日のままの二日酔い状態だ。
俺が冷水を出してやると、2人とも一気に飲み干したので、ピッチャーを用意してやる。
「飲み過ぎだ。一人頭1ケースは飲んでたからな」
1ケース=500ml缶24本入り、よくまあ12リットルも胃に収まったもんだ。
唐揚げもふくめて。
「風呂沸かしてるから入るか?」
俺の提案に、2人とも力なく手をあげた。
視点変換 ◇シャーロ・レツィナ◇
朝御飯を食べ終わったので、パンチングボールで一汗流してまたお風呂に入ろうかなと思った時に、僕の汎用端末が鳴った。
マネージャーのサナさんからだった。
「サナさんおはよ~」
『おはようございます。そっちはどうですか?』
「快適~」
僕は迷わず本音を口にした。
しつこく話しかけてくる迷惑なファンの人達もいなければ、曲を書いてくれって迫ってくる同業者や業界の人もいない。
私のファンだっていうバイオ儀体の人も、必要以上に話しかけてこない。
船長さんや他のお客さんも同じだった。
更には、ご飯もお酒も美味しいし、お風呂も広くてサイコー!
別荘にしたいぐらいの快適さだ。
ご飯は船長さんの手作りらしいけど、チーズソースと唐揚げと果実酒はもってかえれないかな?
店売りしてたら絶対に買いに行くね!
『快適なら良かったわ。こっちも、まともなファンの人達は説明したらわかってくれたわ。その代わりコンサートではその事を改めて話してお礼を言ってあげてちょうだい』
「わかった~」
このマネージャーさんはサナ・イトヤさんといって、僕がデビューしたと同時に事務所に入ってきた人で、先代のマネージャーさんと一緒にずっと僕についてくれている、家族同然のお姉さんみたいな人だ。
名前でわかる通り、旧晋蓬皇国地方出身の人で、僕が晋蓬皇国式のお風呂が好きになった原因の人だ。
本当にならサナさんも一緒が良かったけど、ファンの人達をまくためと、別の用事があったために、今回は別れたんだよね。
早く合流したいなあ~。
『でもまともじゃないファンの人は諦めてなさそうなのよ』
「え~?あの勘違い野郎な人~?」
『ええ。なにを言っても聞く耳をもってないし、挙げ句の果てには、私が自分に好意を持ってて、貴女に取られたく無いからだろう?とかいって来たので…』
これは本当に早いうちにサナさんと合流した方が良さそう。
あの勘違い野郎、会社の社長かなにか知らないけど、サナさんになにかあったらただじゃおかないからな…。
そのためにも、確実にあいつに一撃入れるためと、お昼ごはんを美味しく食べるために、パンチングボールで一汗流す事にしよう。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
全員の朝食が終わると、客達はまた思い思いに過ごし始めた。
レツィナ嬢は、電話のあと昨日と同じくパンチングボールをやり始めた。
昨日より気合いが入っている感じがする理由まではわからないが。
ダルカ氏は二日酔いが治まらないようで、客室に戻って寝てしまったらしい。
部屋の前に行くと微かにイビキが聞こえてくる。
チャーリーは、二日酔いなど何処吹く風で、大型端末を立ち上げ、バイオロイドのカタログとにらめっこしていた。
どれをティラナに使おうか、かなり悩んでいるらしい。
そのティラナは、自主的に船内の掃除をしていた。
新しい船になり、スペースに余裕がでてくると、いままで我慢をしていた事をやりたくなってしまう。
その一つがランニングマシンとパンチングボールだったわけだが、なかなか好評なのかもしれない。
そして今の俺の船にある、身体を動かす系ではない暇潰し用のアメニティは、カードゲーム数種類・テーブルゲームプレート・オンラインのゲーム機がある。
できればこれに、ピンボール台を増やしたい。
子供の頃にハマった事があり、できれば自分の船にと思っていたものだ。
そして幸いにも、いま乗っている友人は、その辺りに人脈がありそうだ。
「なあチャーリー」
「なんだ?いまティラナの身体探しで忙しいんだが?」
チャーリーに話しかけるも、家族の事で頭がいっぱいらしい。
しかし話は聞いて貰わないといけないので、しつこく声をかけた。
「船が新しくなって収納や面積も増えたから、暇潰し道具を増やそうと思うんだよ」
「カードの類いとテーブルゲームプレートとネットゲームなんかはあるだろ?」
「ピンボール台を置こうと思ってな。ソファーの横ぐらいに」
「で、そいつを調達して欲しいと?」
「古い奴でいいからさ」
俺がそう言った瞬間、チャーリーは大型端末を触る手を止め、俺に向き直って怒りを露にした。
「馬鹿野郎!完全稼働するピンボール台は、古い台の方が価値があるんだぞ!簡単に言うな!」
しまった!
ピンボールは、こいつが大好きなスロットマシンやウォールマシンのお仲間だ。
その辺りにうるさくないハズがないじゃないか!
お値段的な意味で言ったのだが、完全に逆効果だった。
「いいか!バッスルボールから始まるピンボールの歴史から見て、最新のピンボールと比較してだな「わかった!わかったから!俺が悪かった!」わかればいい」
よかったなんとか止まった…。
あのままだと、絶対に徹夜コースになるところだった…。
「とにかく。台のチョイスは任せるから頼んでいいか?それにその台でいい得点を取ったら、ささやかな景品なんか用意しようと思うんで、その辺りの景品もできれば」
「だったら、お前の作った菓子類を、降りる時のお土産にしてやるといい。その方が安くつくし、収納を圧迫しないだろ」
「たしかにそうだな」
たしかに景品よりは、自作の菓子類の方が費用は押さえられるだろう。
それなら何にしようかとか考えていると、チャーリーがキメ顔をしながら話しかけてきた。
「ところでショウン。人にお願いをするなら、それ相応の頼み方ってものがあるだろう?」
「何が言いたい?これはちゃんとした仕事の依頼なんだがな。代金も手数料も払うぞ」
なんとなく嫌な予感がするが、仕事として頼んだんだぞと主張する。
が、やっぱり無駄だった。
「だが俺としては友人からの頼み事と考えている。だからお願いをして貰おうか?もちろん女の姿で!
『ねえチャーリー、手に入れてくれない?お・ね・が・い♥️』って言って貰おうか!もちろん笑顔で頬へのキス付きだ!」
思い切りドヤ顔をしてきやがった。
「そうか。じゃあ別の業者探すわ。あ、ロングショットのオーナーのバデルテ・ギャンデック氏だったら知ってそうだな」
なので取り敢えず無視してやる事にした。
「冗談だって!きちんと探して見つけたら連絡するから!」
「じゃあ5割引きな」
「せめて2割引きにしてくれ!」
冗談には見えなかったが、取り敢えずそこに漬け込んで、割り引きをさせたのはこっちの勝利であり、あっちのミスだ。
まあ、毎度のやり取りみたいなもんだが。
豪華客船なんかは、様々なイベントやカジノなんかもありますよね
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