File110 惑星ダナークズへの貨客輸送② 冷静な第3者視点は本当にありがたいものである
無事に超空間に入り、船を自動航行にしてから、ラウンジに出ると、客達は実に思い思いの方法で寛いでいた。
チャーリーは、ダイニングのテーブルで小型端末でなにかの仕事。
ティラナはキッチンから、早々に紅茶のセットを探り当てて取りだし、お茶の用意をしていた。
シャーロ・レツィナ嬢は小型端末にヘッドホンを繋いで、仮想鍵盤を展開し、曲作りをしていた。
ザウズ・ダルカ氏はソファーに寝転がり、テレビを見ていた。
この光景だけをみると、宇宙船の船内というよりは住宅のようだ
とりあえず俺もゆっくりしよう。
そう思ってダイニングのテーブルに座ると、ちょうどティラナが紅茶を出してきた。
「悪いな。お客さんなのに」
「やりたくてやってることですから」
彼女は俺の船に乗ると、たいてい細々と雑用をしてくれる。
客なのだからゆっくりしてくれと言っても、「やりたいからやっている」と、返してくるので、いまはもう諦めて、彼女の好きにさせている。
「しかし、よく茶葉の場所が解ったな?」
キッチンが新しくなったのだから、分かりにくいはずだ。
「レイアウトは大きく変わっていませんでしたから、簡単でしたよ?」
そう答えたティラナの、のっぺらぼう状態の顔が、ちょっと自慢気に笑ったように見えた。
そうして、チャーリーやダルカ氏にも紅茶をだし、同じくダイニングテーブルで作曲をしているレツィナ嬢にも紅茶を出した。
「紅茶です。どうぞ」
「ありがと~」
彼女を最後にしたのは、気がねなく彼女と話すためなのだろう。
「作曲ですか?」
「思い付いたフレーズや言葉をメモしてるだけー」
それ以降、2人は楽しそうにおしゃべりを始めた。
なので俺も、ティラナの入れた紅茶をいただきながら、読みかけの本を読むことにした。
しばらくして昼食も近くなったので、昼食を作るべくキッチンに移動して準備を始めると、
「お手伝いします」
と、ティラナがキッチンにやってきた。
「悪いな、助かるよ。じゃあレタスを出して洗ってくれ」
「はい!」
そうしてティラナに手伝ってもらい、卵焼き・照り焼きチキン・BLTCのサンドイッチとコーンスープ・皮付きフライドポテトを製作し、皮付きフライドポテトのディップには、ケチャップ・マスタード・チーズソースの3つを用意し、ダイニングテーブルに並べた。
「飲み物はコーヒーと紅茶とソフトドリンクがあるから好きなのを選んでくれ」
「お前、相変わらず無駄に器用だよな」
チャーリーのやつは、呆れながらもBLTCのサンドイッチにかじりついていた。
「この卵焼きの好きー。後、このチーズソースって何処のメーカー?」
レツィナ嬢は、卵焼きのサンドイッチをしっかり確保しつつ、チーズソースの出どころを尋ねてきた。
「それは自家製なんですよ」
「あーそうなんだー。もって帰りたいなー」
レツィナ嬢は、チーズソースをたっぷり付けた皮付きフライドポテトを食べながら、チーズソースの入ったボウルを凝視していた。
するとそこに、
「なあ…ビールくれビール!チーズソースのかかった揚げ芋でビールがねえのは拷問だ!」
「それには俺も同意だ!」
ダルカ氏とチャーリーの2人が、必死の形相で訴えかけてきた。
はっきり言って目がヤバイ。
「わかったよ…ただし、まだ昼間だから1人2本だけな」
暴れられても困るので、500ml缶の奴を出してやった。
「お!トライバードの『ゴールドブルー』とノーススターの『ラックアングラー』とはなかなか気が効いてるぜ!」
ダルカ氏は早速缶を開けて、一気に飲み干していく。
「お前、自分はあんまり飲まないのに、酒のチョイスだけはセンスあるよな」
「客に出す方が多いからな、ハズレがなさそうなのを選んでるだけだ」
チャーリーは、『ゴールドブルー』を開けて一口喉に流し込む。
「そういやあ、また果実酒を仕込んでるのか?」
「まあな。無事だったやつを含めて、梅・苺・杏・桃・葡萄・蜜柑・檸檬・林檎。あとはマスカットを仕込んだ程度だな」
「程度ってレベルじゃねえだろそれ…」
「姉ちゃん対策だよ」
「ああ…」
俺が果実酒を仕込むのは、もちろん客にもだすが、基本的にはドラッケン姉妹対策だ。
いつ接触するかはわからないが、接触したら確実に色々もっていかれる。
なら最初にもっていかせる分を用意すればいい。
しかしここに、意外な伏兵がいた。
「果実酒があるなら飲みた~い。苺と蜜柑とマスカットのやつー」
レツィナ嬢は意外にも呑兵衛だったらしい。
しかし曲がりなりにも、ビステルト人レパド種、いわゆる豹獣人の彼女が、柑橘の酒を飲んで大丈夫なんだろうか?
まあ、本人が欲しがってるんだから大丈夫だろう。
こうして昼食が終わると、退屈な時間になる。
今回少し広くなったので、左舷の搭乗口の近くにランニングマシーンを、下の貨物室に降りるためのハッチの近くにパンチングボールを設置してみた。
すると、チャーリーの奴がランニングマシーンを。
レツィナ嬢がパンチングボールをやっていた。
こうして見ると、ランニングマシンやパンチングボールなんかの、身体を動かせる物を設置したのはよかったようだ。
そうして昼間は、それ以上は何があることもなく、夕食の時間になった。
最近ちょっと晋蓬料理に傾倒気味なので、
メニューは、御飯・味噌汁(豆腐とワカメ)・漬物・小松菜の胡麻和え・若鶏の唐揚げになった。
そして唐揚げには、フライドポテトじゃないが、色々なディップを用意してみた。
基本の檸檬に、甘酢あん・タルタルソース・チーズソース・カレーソースの4つに加え、希望者だけになるが、おろしニンニクなんてのも用意してる。
レツィナ嬢は猫舌だから大丈夫かなと思ったが、平気な様子で口に運んでいた。
そして昼間にいった通り、夜なのでたっぷりとビールをだしてやった。
「船の中だと飲んでても文句を言われないのがいいぜ!」
「俺なんかは船長と友人だからな。リラックスの度合いが違うぞ!」
ダルカ氏とチャーリーは、唐揚げを食べてはビール。唐揚げを食べてはビールを繰り返しながらとりとめのない話をし、
「苺もよかったけど桃も美味しー」
レツィナ嬢は、果実酒を全部並べ、きゃふきゃふいいながら飲み比べをしていた。
まったく呑兵衛共め。
俺が呆れてため息を付いている横で、ティラナはその光景をじっと見つめていた。
「皆様美味しそうに飲むのですね…」
「興味あるのか?」
「いえ。私は食事の必要はありませんから…」
そう答えたティラナの表情は、なんとなく寂しそうに見えた。
勝手な想像だが、ティラナはチャーリーや俺たち知り合いなんかと、食事がしてみたいのかもしれない。
なので俺は、いままで思っていた。いや、周りの連中全員が思っていた事を、改めてチャーリーにぶつけた。
「チャーリー。いい加減ティラナの頭部を、いや、頭部だけじゃなくて、全身バイオロイド仕様に変えてやったらどうだ?」
するとチャーリーは、
「誘拐とかされたらどうするつもりだ?!」
と、いつもの反論をしてきた。
ティラナが大事なのはわかるが、今回は引かない。
「ティラナの希望を叶えてやる方が彼女が喜ぶんじゃないか?」
「しかしな!これだけ性格のいい子で、その上美人となったら余計ヤバイだろう!」
「まあ、確かにな…」
気持ちは解らなくはない。
こいつにとっては、大事な秘書であり、家族になっているからだ。
実際、高性能な電子頭脳を搭載したアンドロイド・バイオロイドは窃盗の被害に遭いやすい。
大抵は、反応が人間に近いからという理由からの、各種変態的加虐行為での需要だ。
電子頭脳の成長はどうしても時間がかかるため、窃盗が手っ取り早い。
さらに外見が美人なら、換装の必要もない。
以上の事から、彼女の安全を考えると、どうしても二の足を踏んでしまうのは間違いない。
しかし、彼女の望みも叶えてあげたい。
話はまた平行線か。
そう思っていた時、レツィナ嬢が事も無げに、
「だったら、普段はお面とかヘルメットを被って、信用出来る人達の前だけで外せばいいじゃん。ご飯は口のとこだけ出せるようにすればいいしさ」
といった。
その瞬間、俺とチャーリーは、特大サイズのウロコが眼から落ちた気分になった。
「「それだ!」」
どうしてそんな単純な事に気がつかなかったんだろうか?
多分、色々視野が狭くなっていたんだろう。
「ありがとう!ありがとうお嬢さん!」
チャーリーは、感激しながらレツィナ嬢の手を握り、感謝の言葉を告げていた。
こいつも、ティラナの望みを理解していたのだろう。
そしてティラナに向き直り、彼女の肩を掴むと、
「よしティラナ!この仕事が終わったら、早速注文するぞ!肌の色は今のままでいいとして、髪の色…あ!髪型が一番大事じゃないか!」
興奮するチャーリーの様子を見て、ティラナは嬉しそうな顔をしていた。
ビールの名称は適当です
ショウンの外見イメージが、最初は160cmぐらいだったのですが、書いているうちに175cmぐらいに変わってしまいました。
たしか身長は書いてなかった気がするので大丈夫なはず…
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