File109 惑星ダナークズへの貨客輸送① 初荷と初客
巡航速度の概念を間違えていたので修正しました。
1月3日、出発日の朝。
チャーリーとティラナの2人と最終のチェックをすませ、その貨物の積み込みの最中に、ササラから連絡があった。
『もしもし。ちょっといいかな?』
「どうしたんだ?」
『実は、便乗したいって人が2人居てさ』
話の内容は良くある便乗依頼だった。
「そのあたりは依頼者と要相談だな。さらにいえば、定期便より時間がかかるのを承知してもらわないとな」
依頼人が居ないなら俺の独断で決めてかまわないが、依頼人がいるならそっちの許可をもらってからだ。
「て、ことなんだがどうだ?」
「別にいいぜ。出発は8時半だからそれだけは守るようにしてくれ」
チャーリーは貨物の一覧を眺めながら許可をだした。
「依頼人は便乗OKだそうだ。そっちは定期便より時間がかかることと、出発時間の8時半厳守を説明しといてくれよ」
『そのあたりはちゃんと説明済みだよ。じゃあ、お客さんの情報送るね』
「了解」
送られてきたお客さんの情報を見ていると、チャーリーが声をかけてきた。
「そういや、この新しい船はどれくらいでるんだ?」
質問は、速度の事と判断してスペックを教える。
「高速航行許可証も取ったし、最大3光年は出るぞ。まあ、1光年以上出す気はないけどな」
「ダナークズまでは超空間使って60光年だから…2日と半日で到着か。前の船じゃあ時速0.4光年しか出してなかったのに、どういう風の吹きまわしだ?1光年ぐらいなら前の船でもだせただろ?なんで出さなかったんだよ?」
回答は正解し、それに伴ってチャーリーは新たな質問をしてきた。
まあ、普通に疑問には思うだろう。
しかしこれには、大事な理由がある。
「安全第一もあるけど、燃料が勿体無いのが一番だな。この船は時速1光年が一番燃料効率がいい巡航速度なんだ。だからこれからはその速度で巡航する事にしたんだ」
一番の消耗品である燃料は、なにかあった時のためにも、燃料の節約は大事だ。
「意外としょうもない理由だったな…」
「何言ってやがる。燃料効率は大事なんだぞ?」
そんな話をしていると、停泊地の扉が開き、誰かが中に入ってきた。
「すみませ~ん!便乗をお願いしたものです~」
やってきたのは、ビステルト人レパド種、いわゆる豹獣人の女の子だった。
「どうも~シャーロ・レツィナといいます」
のんびりした口調でそう名乗った彼女を、何処かで見たような気がした。
すると、ティラナがその疑問に答えてくれた。
「シャーロ・レツィナって…もしかしてシンガーソングライターの?オルランゲアのカウントダウンイベントに出てましたよね?その後ヴォルダルに戻ったんじゃないんですか?」
どうやら彼女は、有名人だったようだ。
見たような気がしたのは、ポスターに載っていたからだろう。
ティラナは、大好きなミュージシャンに会えたせいか、かなり興奮していた。
以前の、カミリアことアシュリエ・ジョルセーメと知り合ってからは、ティラナは実は脳だけ人間じゃないのかと思うようになってしまった。
そのぐらい、ティラナは実に人間らしい反応、行動をしていた。
「実はロングショットコロニーでコンサートがあるんで~、仕事も入ってなかったから年末年始はオルランゲアで過ごしたんだよ~」
そのティラナの質問に、彼女はのんびりした口調で答えてくれた。
だがそうなると、新しい疑問が沸き上がる。
「でもなんでこの船に?」
彼女のようなアーティストなら、定期便のチケットくらい余裕だろうし、なんなら自家用の船をもっていたりするのだから、便乗をしなくてもいいだろう。
「なんか僕のファンが~僕と一緒に定期便に乗り込むべく待ち構えてるらしくて~。ありがたいんだけど迷惑なんだよね~」
しかしその理由を聞けば納得した。
本人も、なかなかうんざりした表情をしていた。
有名人も大変だ。
「便乗を頼んだザウズ・ダルカだ。ライアットって奴の船はここで間違いないのか?」
そして、彼女の自己紹介から間を置かずにやってきたのは、きつい目付きをした若い男性だった。
「俺はバウンティハンターだ。実はいまターゲットを追ってるんだが、顔をしられたかもしれなくてな。定期便だと向こうの監視があるかも知れないからな。だからこの移動にしたんだ」
こっちは理由も聞いてないのに、しっかりと自己紹介をしてきた。
きつい目付きのイケメンではあるが、なんとなく嫌なオーラがにじみ出ているのは気のせいだろうか。
ともかく便乗客の2名が揃ったので、依頼人と一緒に客室に案内した。
「はー。随分豪華になっちまったな」
「ちょっとしたコテージみたいですね」
「部屋がビジネスホテル並みだな、ありがたいぜ!」
「晋蓬皇国式のお風呂だー!」
4人それぞれが、船の中を見て声を上げていた。
特に、以前の船をしっているチャーリー達は、なおさら驚いていた。
「じゃあ、そろそろ出発するので、部屋なりラウンジのソファーなりに座っておいてくださいね」
俺はそういうと、操縦室に入ってシートに座ると、通信のスイッチをいれた。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅢ』。出港許可を求む」
「『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅢ』出港まで後2分ほど待ってちょうだい。久しぶりだねショウン。ブタ箱にはいったんだって?』
こちらの通信に答えたのは、男勝りな筋肉美女管制官のサマンサ・リエナビッチだった。
にやにやしながら嫌な話をしてくるが、心配してくれていた事はにじみ出ていた。
「メシはそんな臭くはなかったよ」
だからこちらも軽い冗談で返してやる。
『何にせよ災難だったね。金はバッチリふんだくれたんだろ?』
「新しい船を買って、余裕ができるくらいにはな」
『気をつけなよ。借金女王が探してるって話だ』
「すでにプライベートはブロックしてる」
『フライングテーブルクロス』でバイトしている間に、俺が大金を手にするかも知れないと嗅ぎ付けた借金女王から、借金ではなく贈答の申し込みが何度もかかってきた。
なので、プライベートの方はブロックさせてもらった。
『賢明だね。お、前のが出終わったね。『ホワイトカーゴⅢ』出港を許可する。きぃつけていっといで』
「ああ。心配してくれてありがとう」
『じゃあ、酒の1本もたのむよ』
相変わらずちゃっかりしている。
『お客さん達。出港許可がでたので出発しますね』
マイクを船内に切り替えて、出発を報告する。
「エンジン点火。微速前進」
ゆっくりと宇宙港の外縁部まで船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動し、
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星ダナークズ。エネルギーチャージ開始」
跳躍のためのエネルギーをチャージし、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
超空間のトンネルに侵入すると、時速1光年の速度まで加速する。
そうして、船体が安定し、チェックもオールグリーンなのを確認する。
「超空間に侵入完了。これより自動航行装置に移行する」
自分だけの慣らし運転と違い、お客と荷物を乗せての超空間跳躍はやっぱり緊張する。
あとは無事に目的地に到着することを祈ろう。
ワクチンの副作用も微熱と関節痛だけですみました。
ご心配おかけしました
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「ダナークズまでは超空間使って60光年だから…2日と半日で到着か」
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この箇所ですが、すこし詳しく説明します。
①オルランゲアからダナークズまでは、通常空間だと600光年の距離です。
②超空間航法を使えば、距離が10分の1になり、60光年になります。
③チャーリーは、時速1光年で計算し、到着まで60時間と判断しています。




