File108 首都惑星ヴォルダルでの手続き色々③ 新しい船・新しい年・古くからの友人
お待たせいたしました
船が手に入り、支払い・引き渡しが終了した直後に、ヴォルダル公安局から、高速航行許可証の審査に通過したとの連絡があった。
なので俺は、その足で惑星上の公安局に向かうべく、船を宇宙港に停泊させ、昼食を取った後に、軌道エレベーターに向かった。
軌道エレベーターを降りてタクシーに乗り、ヴォルダル公安局に到着して、受付に話をすると、航行管理部に行くように言われた。
今回も、受付と面談をした、人当たりの良さそうな眼鏡の職員が応対してくれた。
「おめでとうございます。これからは、より一層安全運転に努めてください」
そこで渡されたのは、横10㎝縦21㎝厚さ1cmほどの、情報の書き込まれたクリスタルプレートだった。
このクリスタルプレートの写真部分で、虹彩とDNAと生体パターンをチェックすると、専用リーダーが表示される。
そこに端末を近付けると、端末内に、高速航行許可証が表示されるようになっている。
このクリスタルプレートは、小型貨物船航行免許・船体登録証明・登録ナンバーでも同じように発行されている。
爆発事件の時は、このプレートは金庫に入れてあったため無事だった。
こうして俺は、無事に高速航行許可証を手に入れた。
そして宇宙港に戻ると、オルランゲアの船の内装業者に電話をかけ、翌日のアポイントメントを取り付けたあと、ならし運転も兼ねてオルランゲアに向けて出発した。
試しに時速2光年で航行してみたところ、オルランゲアにはその日の夜には到着し、翌日12月25日には、船の内装業者にバスルームの内装工事を依頼した。
内装工事自体は1日で終了するが、予約があるため、施行日はどうしても30日になってしまうらしい。
それならばと、まずは登録ナンバーの船体の変更手続きをしておいた。
次に、前の船で被害を受けなかった使えるものを新しい船に搬入し、キッチンは手を入れる必要が無かったので、食器・調理器具・小型の調理家電などを買い足した。
ベッド用のシーツと毛布も揃えて買った。もちろん予備も含めて多めに。
買った時に入っていたソファーはベッドにはならないタイプだったので売却し、前の船で無事だったソファーベッドを入れた。
他にも、カーペット・マガジンラック・時計・クッション・惑星上の風景画・植物のプランターなんかを購入して、自分なりに内装を整えていった。
もちろん食材や調味料もしっかりと買い揃え、作り置きしておく物を製作したりしていた。
もちろんデニスの奴にチェックを頼むのは忘れない。
そして12月30日に、念願のバスルームの改装工事が終了し、晴れて俺の新しい船『ホワイトカーゴⅢ』が完成した。
ならし運転はオルランゲアに来るまでに終わっているので、早速依頼をと思うが、せっかくなので年明けまではのんびりすることにした。
そして翌12月31日。
年の瀬の雰囲気を眺めながら、いつものフードコートでピザとサラダとコーヒーの昼食を食べていると、
「よう。珍しくいつもと違うもの食ってるじゃないか」
馴染みの商売人兼仲介人のチャーリー・レックが声をかけてきた。
「悪いかよ。ミックスグリルは仕事終わりのときだけって決めてるんだ」
そしてその後ろには、秘書でアンドロイドのティラナがいた。
「お久しぶりです。お話は伺いました。色々大変でしたね」
主人と違い、気づかいもできる有能秘書アンドロイドだ。
「まあね。その代わり貯金だけは増えたよ」
なにしろ、船や内装工事や物品を全部ひっくるめて、9985万クレジットで収まり、15万は当座の金、残りの2億クレジットは丸々貯金行きになった。
「なあ、どうせならその金で投資を…」
「しねえよ」
チャーリーは、その金をあてにして儲けようとするが、そんな怪しい話に乗るはずはない。
まあ、本人も本気じゃあないだろう。
そもそもこいつは投資に手を出してない。
「で、なんの用だ?」
「おう。実は年明け3日出発でダナークズに荷物を頼みてえ」
「だったら普通に依頼を出せばいいだろう?」
仕事を頼むにしても、指名をすると割高になるのだから、普通に依頼をした方が安上がりなはずだ。
「お前が居るなら頼んだ方が安全だし、お前なら安く上げてくれるだろう?」
しかしそれをせずに指名をしてくれるのは、貨物輸送業者としては名誉な話だ。
「そりゃありがたいことだな。何を運ぶんだ?」
「流行り廃りに影響されないスタンダードなファッションブランドの服やらアクセサリーなんかだ。あわせて90tくらいあるかな?」
チャーリーにしては大口の取り引きだ。
「じゃあ、同じ目的地の荷物もいくつか載せるけど構わないか?」
「別にいいが、新しい船は積載量がどのくらいになったんだ?」
「480tだ。いままでは、ミスや事故にあった時に面倒だから、1件の依頼で積載量に近いやつ1件だけ受けるようにしてたが、これからは小さいのを重複して受けないともったいないからな、1件で400t近くある依頼もまずないし」
500t以上なら1件の依頼が頻繁にあるが、400tではなかなかあるものではない。
その為、小さいのをいくつか受けることにしたわけだ。
「わかった。搬入は当日の朝7時30分でいいな?」
「依頼手続きをしておきますね」
話を聞き、ティラナが自分の端末の操作を始めた。
「そういやあ、宇宙港でもカウントダウンパーティーがあるらしいが、どうする?」
生活施設区画と旅客用停泊地で行われるカウントダウンパーティーはかなり大規模で、アーティストなんかも来ているらしい。
が、あんまり興味はない。
「やめとくよ。年末恒例のバラエティーでも見てる」
「ちっ!女になってもらって両手に華と洒落込みたかったのによ…」
「残念だったな」
俺は悔しがるチャーリーを見ながら、にやにやと笑ってやった。
新年初日は、じいちゃんや姉ちゃんを始めとした、知り合い達からの通信がひっきりなしだった。
そして、心配をかけたことを誠心誠意謝罪した。
まあ、俺が引き起こしたわけではないコトだけは、何度も説明しておいた。
そして、新年2日目。
チャーリーの依頼の前日に、銀河貨物輸送業者組合の貨物配達受付に、ダナークズ行きで、日程に余裕がある、100t以下の依頼を探していた。
「じゃあ、この医療品と医薬品と日用雑貨を一緒にうけるんだね」
「ああ。明日の朝7時30分に搬入を開始してくれ。無理なら今からでも大丈夫だ」
「じゃあ、医療品と日用雑貨は午後からでいいかな?」
「わかった。停泊地はNo.634だ」
ササラの奴は、毎年において新年の挨拶を寄越せとわめいてくるので、今年は電話の応対をしながら製作した、レア・ベイクド・スフレの3種類のチーズケーキと、ストロベリー・ブルーベリー・ラズベリー・クランベリーをミックスしたジャムを叩きつけてやった。
「にしても災い転じて福となしちゃったねぇ。積める荷物が増えたからその分儲かるし、貯金もあるんでしょ?」
ササラがにやにやしながら上目遣いで見つめてきたので、
「金は貸さないからな?」
と、釘を刺したところ、
「借金女王じゃないんだからしないよ!?」
と、本気で否定してきた。
まあ、ササラとしては、プレゼントを期待したくらいだろう。
ササラもチャーリー同様、本気で催促をしてないのはわかっている。
「じゃあ搬入は午後からで間違いないな?」
「うん。よろしくね」
そう挨拶をかわすと、俺は新しい船に帰ることにした。
その後ろから、同僚や部下に囲まれたササラの悲鳴が聞こえた気がするが、多分気のせいに違いない。
来週にコロナワクチンの接種(2回目)をうけます。
どうなるか分かりませんので、次週は投稿をおやすみさせていただきます。
場合によってはということもありますので、ご理解のほどをよろしくお願いいたします。
前回副作用が少なかったので大丈夫だとはおもいますが、遺書を用意して見ようとおもいます。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




