File104 首都惑星ヴォルダルでのアルバイト④ パーティーや朝礼の挨拶は何故にああも長いのか理解に苦しむ
お待たせいたしました
暑さのせいか、キャラクターの名前を間違えていました
なんで気がつかなかったんだろう…
御指摘戴いた方ありがとうございました。
ケータリングの助っ人に駆り出された日の朝。
開店時間と同時に、けっこうな数の注文が舞い込み、その日の配達員が総出で配達を開始した。
そうしているうちに、あっという間に午後に食い込み、1時45分ごろに配達が一段落したので、そのまま待機することになった。
待機といってもちゃんと仕事はある。
ケータリングの制服は、配達員の物と違い白一色のコック服で、胸元にマークがあるだけのシンプルなもので、一番最初に社長が着ていた服であり、デリバリーの厨房の制服でもあった。
今回の依頼をしてきたのは、『未来を担う若者を励ます会』の主催者、共和国評議長のカサルドムス・ハインドランド氏だそうで、会場はヴォルダル文化ホールの大ホールらしい。
そのため、男性11人・女性10人。それに、入院した人の代わりである俺1人の22名という構成だ。
そしてそれとは別に、運転と食材や食器や調理器具の運搬スタッフが8人、それに社長が随伴しての計31人だ。
パーティーの開始時間までに、時間や手間のかかる処理を店でやっておき、仕上げを会場でするだけの状態にしておくのが、最初の仕事だ。
プロの料理人たちは、見事な手際とチームワークであっという間に準備を進めていく。
俺は、材料の準備や食材の下ごしらえなんかの手伝いぐらいしかできることがなかった。
社長さんも、料理人として腕を奮い、素晴らしい包丁捌きを披露した。
準備が終了し、会場のヴォルダル文化ホールにパーティー開始時間30分前に到着すると、全員で食材や食器や調理器具を搬入する。
搬入先は、臨時の厨房となるサブホールだ。
ここで最後の仕上げや、スープ類の火入れをしていく。
ステーキなどの焼いて仕上げるものは、パーティー会場である大ホールに炭火のコンロをセットして会場で焼き上げる準備をする。
そうしているうちにパーティー開始5分前になり、大ホールが開場されてパーティー参加者が会場に入ってきた。
そのメンバーの職業は、
評議員・評議員補佐官・佐官以上の軍人・大企業の御曹司・御令嬢・有名なミュージシャン・芸術家・スポーツ選手など様々。
そして、全員が20代から30代くらいまでの若い人達ばかりだった。
ただ1人、主催者のカサルドムス・ハインドランド評議長だけが、立派な白髪頭を披露していた。
種族もさまざまだったが、どうやらドラッケン三姉妹の姿はなかった。
多分嫌がったんだろう。
そして酒の出る席なので、副社長御嬢様の姿は当然あるはずはない。
この『未来を担う若者を励ます会』のパーティーは、職業の垣根を越えた交流を目的としているらしい。
しかし間違いなく、政治・経済・軍事の基盤固めや、票集めのためのイメージ戦略に使えそうな人材ばかりに絞った感じなこのパーティーは、評議長の支持者育成の為の集まりなんだと思う。
まあ、ハインドランド評議長自身には悪い噂はない。
どちらかというと、やらかした評議員や補佐官の尻拭いをしている印象の方が強い。
そのせいで、評議長は若い人材に期待しているのかも知れない。
パーティーが始まると、まずは定番の主催者の長い長い長~い挨拶から始まり、それが終わると、立食式なのもあり、各々が自由に過ごし始めていた。
ケータリングにも人がちらほらやってきて、アルコール・ソフトドリンク・焼き物・揚げ物・サラダ・サンドイッチ・スープなどを手に取っていった。
俺はデザートのクレープの担当になり、注文毎にクレープを焼く仕事をまかされた。
クレープの中身は自分でいれてもらうセルフサービスだ。
始まったばかりで、みんなおしゃべりや食事に集中しており、デザートは暇だった。
そこに、声をかけてきた人物がいた。
「ライアットさん?」
それは元クラスメイトのウィルティア・ルナーシュ評議員だった。
まあ、彼女は招待されて当然の人だろう。
「お久しぶりです。ルナーシュ評議員」
仕事中なので、きちんと敬語を使う。
彼女がほんのり頬を膨らませたように見えたが、すぐにはっと気がついたような表情をし、
「貨物輸送業者は辞めちゃったんですか?」
と、出くわした知り合いから確実に言われていたセリフを言ってきた。
「スターフライト社の事件で船を破壊されましてね。賠償金と保険金が入るまでの細やかな資金集めのバイト中です」
そして俺も、今まで返してきた答えを返した。
「それは…災難でしたね」
俺が、評議会でも話に上ったであろう事件の被害者とわかり、申し訳なさそうな表情になる。
そうやって、気づかってくれる政治家がいるのは、一般市民としてはありがたい事だ。
「別に貴女の責任じゃないでしょう。それより、クレープを御所望ですか?」
「あっ、はい。お願いします」
そして、注文いただいたからには、すぐにクレープを焼き始める。
「でもちょっと嬉しいです。その事件のおかげで、ライアットさんのデザートが食べられるんですから」
クレープを焼く俺の手元を眺めながら、ルナーシュ評議員はそう呟いた。
たしかに中学時代、文化祭の出店は人気になった。
それを懐かしんでいるのだろう。
「残念ながらクレープの具材の味付けも、クレープ生地の配合も『フライング・テーブルクロス』の本職のシェフ達の手によるものですよ。それに、中身を乗せて包むのはセルフサービスですから、私はクレープを焼くだけです」
「それでもなんだか嬉しいです」
にっこり笑う彼女の表情は、昔と変わっていない感じだった。
クレープ生地は、薄くしあげるから直ぐ焼ける。
それを皿に乗せると、
「そちらのクリームや各種ソース・フルーツ等を乗せて、そこの図のように包んで下さい」
クレープの包み方を図解したポップを指さした。
ルナーシュ評議員は、おっかなびっくりしながらも、自分好みのクレープを仕上げていった。
そしてその時気付いたのは、男女共にかなりの人数がルナーシュ評議員を遠巻きにし、話しかけたそうにしていた事だ。
中には俺を睨みつけているのもいた。
その時、1人の人物がルナーシュ評議員に声をかけた。
「お久しぶりですルナーシュ評議員」
「シュタインベルガー准将!」
その男性は、俺が何度か世話になったラインハルト・シュタインベルガー准将だった。
周りの男連中は、軍の出世頭の登場に意気消沈していたが、女性達はテンションが爆上がりしていた。
「あの時は、ありがとうございました」
「いえ。職務ですからお気になさらないで下さい」
ルナーシュ評議員も、俺と一緒だった時に准将閣下に救出されていることもあってか、なんとなく嬉しそうだ。
その光景を見て、周囲の女性達は恍惚のため息をつき、男達は諦めのため息をついた。
美男美女の取り合わせは、太古の昔から絵になるものだ。
その時またまた、准将閣下と目があったので、軽く頭をさげた。
すると、男の状態の俺を覚えてくれたらしく、
「ライアットさんじゃないですか!」
そういって話しかけてきた。
「お久しぶりです」
「貨物輸送業者を辞めたんですか?」
やっぱり准将閣下も、他に漏れることなく同じ質問を投げ掛けてきた。
「スターフライト社の事件で船を破壊されましてね。賠償金と保険金が入るまでの細やかな資金集めのバイト中です」
そして俺も、同じ返答を返す。
「ああ。あの事件ですか。災難でしたね」
自分がしたのと同じようなやり取りに、ルナーシュ評議員はくすくす笑っていた。
偉い人再登場です!
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




