第78話 ー『美咲が調べ始める』
第78話 ー『美咲が調べ始める』
2026年6月10日(水)——午前8時0分。
世田谷·キサラギ家——美咲の部屋。
朝日が美咲の部屋を照らし始めた時、彼女は既に起きていた。昨夜はほとんど眠れなかった。心が、集めた全ての証拠を巡って止まらなかった。CENTURIONの黒いカードの写真、高級車の写真、キサラギ・アセット・マネジメントについての記事、そして一つの結論に導く全ての手がかり。
美咲はラップトップの前に座り、調査用に作った専用フォルダを開いた。中には、ここ数日間で集めた何十ものスクリーンショット、記事、写真が入っている。彼女はそれら全てを見つめ、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
「今日、全てを確かめる。」
彼女は保存した記事を一つ一つ開き、細部をより注意深く読み返し始めた。丸の内の物件買収についての日経ビジネスの記事。謎の若手起業家についてのフォーブス・ジャパンの記事。キサラギ・アセット・マネジメントのホスピタリティとテクノロジーセクターへの拡大についての東京ビジネスジャーナルの記事。
美咲はそれらの記事に登場する名前を探した。何人かの取締役の名前は挙げられているが、オーナーの完全な名前を挙げているものはない。ただ、オーナーは二十一歳から二十三歳くらいの若い男性で、元サラリーマンという経歴を持つとだけ書かれている。
「……間違いなくお兄ちゃんだ。」
美咲はその言葉を、確信を深めながら呟いた。全ての手がかりが樹を指している。年齢、経歴、そしてキサラギ・アセット・マネジメントが設立される直前に以前の会社をクビになったという事実。
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午前9時0分——美咲の部屋·さらに深い調査。
美咲はより具体的な情報を探すことにした。日本の会社検索サイトを開き、キサラギ・アセット・マネジメントについての公式データを見つけようとした。検索欄に会社名を入力すると、いくつかの結果が表示された。
彼女はキサラギ・アセット・マネジメントが非常に大きな資本金を持つ投資会社として登録されていることを知った。本社は東京都千代田区丸の内——東京の中心にある十階建てのビルだ。取締役のリストにはいくつかの名前が挙げられているが、オーナーの名前は明示されていない。
美咲は満足しなかった。彼女はさらに検索を続け、ページをめくり、書類を読み進めた。見つけた全てのページで「如月樹」という名前を探した。
そして彼女は見つけた。
ある会社の公式書類に、「如月樹」という名前が代表取締役として記載されていた。美咲は目を見開いてその画面を見つめた。もはや疑いの余地はなかった。兄はキサラギ・アセット・マネジメントのオーナーだった。
「……お兄ちゃん……」
美咲は何を感じればいいのか分からなかった。誇りか、怒りか、困惑か。全てが混ざり合っていた。ずっと普通のサラリーマンだと思っていた兄が、実は大規模な投資会社を率いる億万長者だったのだ。
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午前10時0分——美咲の部屋·手がかりを結びつける。
美咲は集めた全ての証拠を開き、形になり始めたパズルのように並べた。留奈からのCENTURIONの黒いカードの写真。恵比寿のマンションの前の高級車の写真。キサラギ・アセット・マネジメントについての記事。樹の名前が代表取締役として記載された公式書類。全ての手がかりが一つの反論の余地のない結論に導く。
「……お兄ちゃんはキサラギ・アセット・マネジメントのオーナーだ。」
美咲は椅子に寄りかかり、胸に奇妙な重みを感じた。なぜ樹がこれら全てを家族から隠しているのか分からなかった。自分たちが彼を違う目で見るのを怖がっているのか? お金を要求されるのを怖がっているのか? それともまだ話す準備ができていないだけなのか?
「……直接聞かなきゃ。」
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午前11時0分——リビング·美咲と留奈。
美咲がリビングに下りると、留奈はソファに座ってスマホをいじっていた。留奈は美咲を見るとすぐに顔を上げた。
「……美咲! 何か見つけた?」
美咲は頷き、留奈の隣に座った。「……十分な証拠を見つけたよ。お兄ちゃんはキサラギ・アセット・マネジメントのオーナーだ。」
留奈は目を見開いて美咲を見た。「……え? 本当に?」
「……うん。会社の公式書類に名前を見つけた。」
留奈はしばらく沈黙し、その情報を消化しようとした。「……じゃあ……お兄ちゃんは本当にお金持ちなんだ……」
美咲は頷いた。「……すごくお金持ちだと思う。私たちが想像するよりずっと。」
留奈は誇らしげな眼差しで美咲を見た。「……誇りに思うよ……でも、どうして教えてくれなかったんだろう?」
美咲は息を吐いた。「……私にも分からない。でも、確かめる。」
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午後0時0分——美咲の部屋·会合の計画。
美咲は部屋に戻り、スマホを開いた。樹の連絡先を見つめ、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。もう十分な証拠を持っていたが、兄から直接聞きたかった。自分が見つけた全てのことについて尋ねた時の彼の表情を見たかった。
彼女は慎重にメッセージを打った。
「お兄ちゃん、キサラギ・アセット・マネジメントについて調べたよ。」
彼女はそのメッセージを送り、待った。数分後、スマホが樹からの返信で震えた。
「……何?」
「全部知ってるよ、お兄ちゃん。会社のこと。財産のこと。あの車のこと。黒いカードのこと。」
数秒間、返信はなかった。そして樹が返信した。
「……会おう。全部説明する。」
「明日。君のマンションで。十時に。」
「わかった。」
美咲はスマホを置き、奇妙な安堵感を覚えた。明日、彼女は探している答えを得るのだ。
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午後2時0分——裏庭·夕暮れ。
美咲は裏庭に立ち、色が変わり始めた夕方の空を見つめていた。彼女は樹のことを考えた。自分が見つけた全てのこと、そして明日の会合について。
「……お兄ちゃん、全部説明する準備はできてるよね。」
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【次話 第79話——『千春が車を見る』】
千春が家の前で樹を迎えに来た車を見る。彼女は息子がただ新しい仕事を得ただけではないことに気づき始める。千春が尋ねると、樹は巧みにごまかす。千春は怒らず、ただ言う。「話す準備ができたら、お母さんは聞くからね。」樹は母に何かを隠していることに罪悪感を感じ始める。
【第79話へ続く……】




