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会社をクビになった俺、金を使うほど資産が増える神システムで人生をやり直す  作者: MagnusOps


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第25話 ー『誰が如月樹なのか』

第25話 ー『誰が如月樹なのか』


2026年4月28日(火)——午前8時0分。


恵比寿のマンション。


樹は少し落ち着かない気分で目を覚ました。理由は分からなかった。覚えていない夢を見たせいかもしれない。あるいは、今朝の空気に漠然とした予感があったからかもしれない。


彼はシャワーを浴び、服を着替えた。白いカジュアルシャツ、薄いグレーのジャケット、コットンのパンツ。そしてキッチンへ向かい、コーヒーを淹れた。テーブルの上で、スマホが普段とは違う通知で震えた。


メッセージでもない。メールでもない。着信でもない。


ニュースアプリからのリンクだ。


樹はそれを開き、目を見開いた。


「謎の若手資産家・如月樹——23歳、元サラリーマンが短期間で築いた驚異の資産」


樹は無表情でその記事を読んだ。


記事は長く、詳細だった。普通の記事にしては詳細すぎる。記者は彼の経歴を調査していた。東都リンクスの元社員、自分がやっていないことで解雇され、その後突然、恵比寿、箱根、青山、神田、横浜の物件の所有者として現れた。


「……誰が書いたんだ?」


彼は記事の下に書かれた記者の名前を見た。


「小野健太郎——東京ビジネスジャーナル」


樹は眉をひそめた。その名前は聞いたことがなかった。しかし記事は非常に正確だった。正確すぎる。誰かが情報を提供したのだ。


スマホが震えた。冴からのメッセージだ。


「如月さん、あの記事を見ました。誰が情報を漏らしたのかは分かりませんが、調査します。」


樹は返信した。


「ありがとうございます、久遠さん。でも結構です。もうどうでもいいので。」


「……本当にいいんですか?」


「ええ。好きなように書かせておけばいいです。」


樹はスマホを閉じ、コーヒーを一口すすると、そのニュースを無視しようとした。


しかし彼は知っていた。これはまだ始まりに過ぎない。


---


午前9時30分——青山、樹の新しいビル。


樹が青山のビルに到着すると、予想外の光景が目に飛び込んできた。


二人の記者がビルの前に立っており、カメラを手に、目を輝かせて彼の方を見ている。その脇には、テレビ局のスタッフと思われる、きちんとした服装の男性が生中継の準備をしている。


「如月さん!如月樹さん!」一人の記者が走り寄ってきた。「少しだけインタビューをさせていただけませんか?あなたの物件についてお聞きしたいのですが?」


樹は立ち止まり、その記者を無表情で見つめた。


「……結構です。」


「しかし——」


「インタビューには興味がありません。」


彼は記者の横を通り過ぎ、ビルのドアを開けて中へ入った。中で、彼は長い息を吐いた。


「……これは面倒なことになりそうだ。」


---


午前10時0分——一階ギャラリースペース。


樹はギャラリースペースの中央に立ち、心を落ち着けようとしていた。外では、まだ記者たちが待っているのが聞こえる。


スマホが震えた。冴からの着信だ。


「如月さん、情報漏洩の元を調査しました。」


「……誰です?」


「東都リンクスの元同僚です。鈴木という方です。彼が記事の記者に情報を提供しました。」


樹は眉をひそめた。鈴木——数週間前に電話をくれた元同僚。人事部が神崎の調査を始めたと伝えてくれたあの男だ。


「……なぜ彼が?」


「分かりません。あなたを助けたいと思ったのかもしれません。有名になりたかったのかもしれません。あるいは別の動機があったのかもしれません。」


樹は息を吐いた。「……構いません。もうどうでもいいので。」


「如月さん——」


「本当です、久遠さん。好きなように書かせておけばいい。私は何も反応しません。」


冴は一瞬沈黙した。そして、優しい声で言った。「……わかりました。でも、もしお気が変わりましたら、私はここにいます。」


「ありがとうございます、久遠さん。」


---


午前11時30分——二階音楽スタジオ。


樹はスタジオの中を歩き回り、ニュースから気をそらそうとしていた。スタインウェイのピアノはまだ部屋の隅に荘厳に立ち、Auralisのモニターは完璧なキャリブレーションで輝き始めている。


スマホが再び震えた。莉々香からのメッセージだ。


「如月さん!記事見たよ!有名になったね!」


樹は小さく微笑んだ。莉々香はいつも彼の気分を良くしてくれる。


「有名になりたくないんだ。」


「もう遅いよ!名前が出ちゃったからね!でも……よかったら手伝えるよ。メディア関係のコネがいくつかあるんだ。」


樹はしばらく考えた。莉々香は有名人だ。メディアの世界の仕組みを知っている。


「……ありがとう。考えてみるよ。」


「莉々香でいいよ!もう友達でしょ?」


樹は微笑んだ。


「そうだね、莉々香。」


「よし!何かあったら言ってね!」


---


午後1時0分——三階ラウンジ。


樹はB&B Italiaのソファに座り、大きなガラス窓から青山の景色を眺めていた。生花がまだ花瓶で咲き誇り、ラベンダーの香りが空気に広がっている。


彼はこの数週間に起きた全てのことを考えていた。解雇されたサラリーマンから、全国ニュースに名前が載る億万長者へ。たった数週間の変化だ。


「……こんなこと、望んでいなかった。」


彼は自分に呟いた。


しかし、変えることはできないことも分かっていた。できるのは、自分の選択の結果を受け入れることだけだ。


---


午後2時30分——屋上。


樹は屋上に立ち、吹き抜ける午後の風を楽しんでいた。眼下には青山が広がり、遠くには東京タワーがビル群の間にそびえている。


スマホが震えた。冴からのメッセージだ。


「如月さん、東京ビジネスジャーナルに連絡を取りました。あなたの許可なくこれ以上の記事を掲載しないことで合意しました。」


樹は瞬いた。「……私のためにやってくれたんですか?」


「ええ。あなたが煩わされるのを望みませんでしたから。」


樹は胸に温かいものを感じた。


「……ありがとうございます、久遠さん。どうお礼を言えばいいのか。」


「お礼には及びません。私がそうしたいと思ったからです。」


樹はしばらくスマホの画面を見つめた。


「……久遠さん。」


「はい?」


「……あなたがそばにいてくれて、本当に良かったです。」


数秒間、返信はなかった。そして冴からのメッセージが届いた。


「……私もです。」


樹は微笑み、スマホをポケットにしまった。


眼下では、東京の街が独自のリズムで動き続けている。そして屋上では、かつてただのサラリーマンだった若者が、静かに、自分を知り始めた世界と向き合っていた。


---


午後3時30分——ビルの中、一階。


樹は一階へ降りた。ギャラリースペースが完璧に形作られ始めている。ギャラリー照明システムは既に設置され、可動壁パネルは最初のアートインスタレーションの準備が整っている。


先週連絡を取った美術キュレーターが、タブレットにメモを取りながら部屋の中を歩いている。


「如月様、このスペースは現代アートの展示に最適です。照明は素晴らしく、可動壁は驚くべき柔軟性をもたらします。」


樹は頷いた。「最初の展示会はいつ頃始められますか?」


「すべて順調にいけば……三週間後には。」


「いいでしょう。全てお任せします。」


キュレーターは微笑んだ。「かしこまりました。数人のアーティストに連絡を取ります。」


---


午後4時0分——ビルの前。


樹がビルから出ると、記者たちはもういなかった。おそらく冴が連絡を取ったのだろう。ビルの前の歩道は再び静まり返り、ただ普通の通行人だけが通り過ぎていく。


彼はビルの前に立ち、徐々に命を吹き込まれていく建物を見つめた。中では、超高性能機材が次々と設置されている。Auralisモニター。スタインウェイのピアノ。B&B Italiaのソファ。全てが使われるのを待っている。


そして東京のどこかで、二人の女性——冴と莉々香——が彼のことを考えている。


樹は深く息を吸い込み、吹き抜ける夕方の風を感じた。


「……これはまだ始まりに過ぎない。」


---


【次話 第26話——『元恋人』】


その夜、樹は元彼女の水原綾香からメッセージを受け取る。彼女は会いたいと言う。彼らは新宿サザンテラスで会い、綾香はこれまでのことを謝罪する。樹は静かに謝罪を受け入れるが、戻ることを拒否する。綾香は樹に他に誰かいるのかと尋ねる。そして樹は答えない。


【第26話へ続く……】

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