第5話 エンカウント
俺は目が冷めて真っ先にスマホで時間を確認する
7:12、全然大丈夫だ。二度寝もできる
だがそんなことをしてしまえば黒江に何されるかわからないので、大人しく重い体を起こそうとする
その時、俺は気づく
「体が...重くない...?」
疲労・睡眠不足で重くなっている上に、圧倒的な筋肉不足で朝体を起こすのも辛かったというのに、それが一切なかったのだ
考えられるのは一つ。疲労・睡眠不足が全てリセットされ、さらに体が小さくなったことで筋肉の必要量が減り、体が重くなくなったのだろう
「すごいぞ...!重くないし、軽い!」
某議員構文みたいになってしまったが、気にする人はいないだろう
そうして、少しふざけながら感動していると、ドアがノックされる
「お兄、もう起きてるでしょ?今のうちに準備しておいて」
黒江が出かける準備の催促に来たようだ
俺はよく使っている肩からさげるタイプのカバンに財布と家の鍵を入れ、リビングに向かう
リビングのテーブルの上には、黒江が準備したであろうハチミツがたっぷりかかったトーストが用意されていた
黒江は自分の分のパンを焼いているようだ
「おはよう、お兄」
「ああ、おはよう」
黒江は一切こっちを見ずに声を掛けてくる
また離れ業か?と少し思ったが、冷静に考えれば足音が聞こえたのだろう
そして朝食を食べ終え、いつの間にか食べ終えた黒江が皿を洗いながら聞いてくる
「にしても、お兄が休日なのにこの時間にしっかり起きてくるなんて珍しいね?どうしたの?」
「さぁな。俺もよくわからん
でも新しい体になったおかげで、今までの不健康借金が帳消しにでもされたんじゃないか?」
「そっか」
そんなことよりも俺はいつ黒江が食べたのかが気になるんだが...
だがよくよく考えてみれば不思議な話である
ゲームのアバターが強制改変され、現実での体にもなり、体が健康になる
そこまで考えたところで気づく
...俺の身分証明証はどうなっている?
常識的に考えれば前のままなのだろう
だがその場合、俺は暫くの間身分証明証が必要なことができないということになってしまう
それに、ゲームのアバターになるという非常識的なことが起こっているのだ。身分証明証が今の俺になっていても不思議ではない
俺は自分の部屋に戻り、財布を取り出し身分証明証を確認する
そこに写っていた写真は、白髪ロングの美少女のものだった
「っ...よかったぁ〜...!」
病院とかに行けなくなったら本当にまずいからな、しっかり変わってて安心だ
一安心した俺は、財布を仕舞いながらふと思い出し時間を確認する
7:32、出かけるまでの時間はまだまだある
だが黒江のことだ、早めに家を出ようとするだろう。なので『Unlimited』をするには時間が足りない。俺は一回集中すると止め時を見失うタイプだしな
どうしたものかと悩んでいると、一つ思いつく
俺と同じように、『Unlimited』をプレイし現実に干渉された人はいないのか調べてみるのはどうだろうか。と
そして1時間ほど調べてみるが、俺はなにも見つけることはできなかった
俺がなにも情報を手に入れられず撃沈していると、黒江が部屋に入ってくる
「お兄、そろそろ出るよ」
時間を見ると8:39だった
俺は先程財布を仕舞ったカバンにスマホを入れ、黒江と共に家を出た
ショッピングモールに向かう途中で、俺の白髪が目立つのか色んな人に見られたり、高校生くらいの男二人にナンパされたりはしたが、無事に到着することができた
ちなみに、ナンパは黒江が睨むとすぐに何処かへ散っていった
女子に睨まれただけで逃げるほどの腰抜けなのに、ナンパする度胸はあるんだな
そしてショッピングモールに入り、黒江が脇目も振らずに真っ直ぐ服屋へ向かうので、置いて行かれないように俺も黒江にくっつくようについて行く
そして服屋に着くと、黒江は一つの服を持ってくる
そして、俺の前に出してきた
「試着してきて」
「いやこれゴスロリってやつじゃないのか!?」
「そうだけど?」
そうだけど?じゃないが?兄になにを着させようとしているんだ?
黒を基調とした、フリフリしたのがなんかいっぱいついてる可愛い服だぞ
兄に着させるものではないだろう
「うんうん!やっぱり似合うね!私の目に狂いはなかった!」
「く、屈辱...」
結局着てしまった...
そもそもの話、俺が黒江の押しに勝てるわけがなかったのだ
そうして俺が落胆していると、聞き覚えしかない声が聞こえてくる
「あれ?黒江ちゃん?とそこにいるのは...もしかして白野か?」
「...そうみたいですね、今のを聞いて動揺しているようです」
俺は驚きのあまり見つめるしかできなかった
理由は簡単
そこにいたのが俺の親友、空と蒼人だったからだ




