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魔毒喰らいのミト~「ゴミ箱」と呼ばれた魔毒処理師、実は最強の知識とスキルを溜め込んでいました~  作者: いおにあ


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第70話 また強化!


 しかし、聖堂に清浄な空気が戻ったのも束の間だった。


 突如、天井のステンドグラスが不気味な音をたてて穴が開いた。その穴中心から一通の書状がひらひらと舞い降りた。


 その書状には、次のような言葉が記されていた。


「黄金の掃除屋、ミト・ノルディアス。私の用意した巨竜という前菜は楽しめたかしら? あなたがどれほど大きな器を持っているのか、じかに確かめたくなったわ。霊峰のいただきで待っているから、すぐに来なさい。 聖女エリザ」


 読み終わると書状は灰となって消える。遠くの霊峰から、空を割るような不気味な雷鳴が響き渡った。


「・・・・・・面白いわね。私たちのミトを名指しで招待するなんて」


 エマが剣の柄を握りしめ、瞳に銀色の火を灯す。


「でも、いきなり無闇やたらと聖女エリザの元に突っ込んでも、どうなのかな?」

「そうね・・・・・・今のミトでも充分戦えると思うけれど、万全を期するためには、改良が必要よね」

「ええ・・・・・・全身全霊で、ミト君を強化するわよ」


 リサとシエラが、目を爛々と輝かせて言う。


「む・・・・・・あなたたち、またミトで実験したいだけでしょう!?」

「エマ。でも、この二人の言うことが正しいよ。聖女エリザが、どれほどの力を持っているのか、未知数だから、用心に越したことはない」


 僕の説得に、エマはしぶしぶうなずく。


「それじゃ、二人とも。お願いします」

「さあ、すぐに始めるわよ!」


 聖堂の控室は、一瞬にして魔導工房へと変貌した。

 シエラは怪しく発光する試験管をいくつもブレンドさせて、リサは空中に数千の数式を展開し、計算していく。


「さあミト君、これを飲みなさい! 私の最高傑作、『黄金器刺激剤ゴールデン・アクセラレータ・プロトタイプΩ』よ! ドラゴンの心臓から抽出した成分と、聖女たちの多幸感をブレンドしたわ・・・・・・心臓が三回くらい止まるかもしれないけど、そのあとに新しい世界が見えるわよ!」


 シエラが差し出したのは、脈動するように明滅する金色の液体だった。


 僕はそれを一気に飲み干す。


 熱い。全身の血管をマグマが駆け抜けるような感覚。だが、その苦痛を上書きするように、リサの冷徹な声が響いた。


「次は私よ、ミト。あなたの魔力回路を一時的に高次元位相へ強制接続するわ・・・・・・いい? 演算処理はすべて私がする。あなたはただ、流入する力だけに集中しなさい」


 リサが展開した魔導陣が僕の背中に刻まれ、僕の視界には膨大な情報が流れ込んできた。


 すさまじい。僕にまだここまで能力向上の余地があったのか。ちょっと感動さえ覚える。


 ――だけれど、それだけじゃまだ足りない。


「・・・・・・最後は、私が必要みたいね」


 エマが、ちょっとだけ頬を朱に染めて、僕の前に立った。


 彼女の白銀のマナが、シエラの熱とリサの冷徹さを優しく包み込み、一つの形へと整えていく。


「ミト・・・・・・愛してる。私の命、全部あんたに預けるわ」


 彼女が僕の首に手を回し、唇を重ねた。


 その瞬間、僕の中で何かが「パチン」と音を立てて砕けた。


 僕の脳内に、黄金の奔流ほんりゅうがあふれた。


「・・・・・・すごいわ。ミト。魔力貯蔵量:測定不能。浄化圧力:天井突破。物理干渉強度: 神性領域に接触・・・・・・これなら、もう神すら滅ぼせるわよ!!」


 リサが、狂喜の笑顔を浮かべる。

 僕の全身からは、黄金と白銀が混ざり合ったオーラが立ち上り、周囲の空間がその重圧で少し歪んでいた。


「お待たせ・・・・・・みんな、行こう。この国の、魔毒の苦しみを終わらせに」


 僕たちは聖堂を飛び出し、霊峰ルミナリスへと向かう。

 

「見て・・・・・・! きっとあの山頂が、エリザのいる場所よ!」


 エマが指差した先には、紫色の巨大なオーラが天を覆い、禍々しく脈動していた。


「・・・・・・ミト君、準備はいい? 私たちの全知能と、そして愛を注ぎ込んだんだから・・・・・・もし負けたら、タダじゃおかないわよ!」


 シエラが笑いながら叫ぶ。


「・・・・・・ええ。負ける理由が見当たらないわよ」


 リサが、にっこりと笑って自信を見せる。 


 五人の影が、絶望が渦巻く山頂へと突入する。


 聖女エリザとの、最終決戦の幕が上がった。


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