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魔毒喰らいのミト~「ゴミ箱」と呼ばれた魔毒処理師、実は最強の知識とスキルを溜め込んでいました~  作者: いおにあ


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第66話 新たなる依頼


 嵐のような学院祭が幕を閉じ、王立学院には日常という名の穏やかな時間が戻ってきていた。


 石畳を叩く靴音も、教室を満たすチョークの音も、数日前までの狂乱を忘れさせるほどに平和なものだ。


 授業が終わり、今日もエマと一緒に帰る。


「・・・・・・ミト、今日の歴史の講義、少し難しかったわね。あんた、ずっと何かメモしてたけど」

「ああ、魔導史の変遷について考えてたんだ・・・・・・でも、エマが隣にいてくれると、なんだか不思議と集中できるんだよ」


 校門へと続く並木道を歩きながら、僕はエマの横顔を盗み見た。


 僕たちが学院の正門をくぐり、家路に就こうとしたその時だ。


 門の前に停車していた、豪勢な馬車が僕たちの行く手を阻むように進み出てきた。


 純白のボディに金の彫刻が施され、窓には王都では見かけない青い魔晶石の装飾が散りばめられている。馬車を引き連れる護衛の騎士たちの甲冑も、アルヴェニア王国のものとは意匠が異なる。


「・・・・・・なにかしら」


 エマが即座に僕の半歩前に出て、警戒感を露わにする。


 馬車の扉がゆっくりと開き、一人の初老の男性が降りてきた。

 豪奢な外套をまとい、胸元には数多の勲章が輝いている。彼は僕たちを一瞥すると、実に優雅な所作で深く頭を下げた。


「――お初にお目にかかります。ノルディアス家の嫡子、ミト・ノルディアス様とお見受けいたします」

「・・・・・・はい、僕がミトですが。貴方は?」

「失礼いたしました。私は、アルヴェニア王国の友好国である聖樹連邦ルミナリスの特命全権大使、カシム・イオランと申します」


 聖樹連邦。アルヴェニア王国から少し離れたところにある、連邦国家だ。


「大使閣下・・・・・・僕に何かご用でしょうか?」


 僕が問いかけると、カシム大使は苦渋に満ちた表情を浮かべた。


「単刀直入に申し上げましょう。・・・・・・我が国ルミナリスを、そして大陸の平和を脅かす瘴気巨竜の退治をお願いしたいのです」

「つまりドラゴン・・・・・・退治?」


 エマの声が驚きで裏返った。


「左様です。数ヶ月前より、我が国の霊峰に一頭の巨竜が棲みつきました。大地を腐らせ、魔力を汚染する猛毒の瘴気を全身から垂れ流しているのです。我が国の聖騎士団も挑みましたが、その猛毒によってあえなく退けられました」


 大使は僕の手を縋るように取った。


「正直、もう聖樹連邦はどうしようもない状態で・す・・・・・先日も、私は気晴らしという名の現実逃避で、王立学院祭へと赴きました。しかし、その学院祭で貴殿の活躍を偶然に拝見したのです・・・・・・あの制御不能となった魔導爆炎をも飲み干し、人々を救った奇跡。あのとき、確信しました。これこそ、我が国を救う唯一の希望なのだと!」


 大使の言葉を聞きながら、僕は自分の胸の奥に意識を向けた。


「・・・・・・エマ。どう思う?」


 僕は隣の彼女に問いかけた。エマは一瞬だけ僕をじっと見つめ、それから不敵な笑みを浮かべた。


「ミトが決めることよ。でも、今の私たちが負ける姿なんて・・・・・・想像もできないわね。あんたが毒を吸うなら、私がその隙を突いて竜の首を落とす。それだけでしょ?」


 その言葉に、僕は強く頷いた。

 困っている人がいて、僕にしか救えない命があるのなら、その手を離す理由はない。


「大使閣下。そのお話、引き受けさせていただきます」

「・・・・・・! ありがとうございます! ああ、なんという慈悲・・・・・・!」


 カシム大使は感激のあまり僕の手を強く握りしめた。


「我が国一同、貴殿の来訪を心待ちにしております。準備が整い次第、この馬車で国境までお送りいたしましょう」


 大使が馬車へと戻り、再び静寂が訪れた校門前。

 僕は空を見上げた。遠く、国境を越えた先にあるという霊峰にいる巨竜。どんな姿をしているのだろうか。


「・・・・・・ミト。また忙しくなりそうね」

「そうだね。でも、不思議と怖くないんだ。むしろエマと一緒に、どこまで行けるか・・・・・・それが楽しみで仕方ないくらいだよ」


 僕たちは、自分たちの能力が新たなステージに達したことを再確認するように、繋いだ手に力を込めた。


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