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魔毒喰らいのミト~「ゴミ箱」と呼ばれた魔毒処理師、実は最強の知識とスキルを溜め込んでいました~  作者: いおにあ


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第36話 大聖堂へ


 新月団のアジトを壊滅させたその足で、僕たちは夜の静寂を切り裂き、王都の中心にそびえ立つ大聖堂へと向かった。


 善は急げ、だ。新月団壊滅の報は、すでに伝わっているかもしれない。ならば、反撃の機会を与えず、即座に根源を断つ必要がある。

 大聖堂の巨大な白亜の扉を、エマが迷うことなく蹴破った。


「な、何事だ!? ここをどこだと思っている!」


 深夜の祈りを捧げていた司祭たちが慌てふためく中、僕たちは真っ直ぐに中央祭壇、その奥にある大司教の執務室へと突き進む。


「道を空けてください。大司教バルナバス様に用があるんです」


 僕が放つ威圧感に、並の僧侶たちは言葉を失い、左右に分かれるしかなかった。


 最奥の扉を開くと、そこには暖炉の火に照らされ、穏やかな微笑みを浮かべた老人が座っていた。教会の最高権力者にして、新王国創世派を影で操る大司教バルナバスだ。


「おやおや、ノルディアス家の少年ではないか。それにスプレンディアスの令嬢まで・・・・・・。こんな夜更けに、私に何の御用かな? 悩み事なら、明朝にでもゆっくり聞こう」


 その声は、どこまでも慈愛に満ち、邪悪さなど微塵も感じさせない聖者のものだった。


「悩み事じゃありません、バルナバス様。新月団の首領から、預かってきたものがあるんです」


 僕の言葉に、バルナバスの眉がかすかに動いた。


「ほう? 新月団? 私には何のことかさっぱり――」

「隠しても無駄だよ。僕は、彼の記憶から直接情報を読み取った。あなたが新王国創世派を影で操り、この王国の転覆をもくろんでいること。まずは手始めにロザリア様を暗殺しようとした計画も」


 そのほか僕が一つ一つ、ごく少数の者しか知り得ないはずの闇の歴史を具体的に突きつけるたび、バルナバスの温和な顔が、どんどんみにくく歪んでいった。


「き、貴様・・・・・・なぜそれを・・・・・・ゴミ箱如きが、私の魂の奥底を覗いたというのか!?」


 バルナバスは立ち上がり、手に持っていた杖を床に叩きつけた。


「ええ。あなたの排出した魔毒には、あなたの傲慢さがたっぷり混じっていましたよ。もう、おしまいです。ロザリア様には既にリサさんが連絡を入れている。近衛騎士団がここを包囲するのも時間の問題だ」

「おしまいだと? 笑わせるな! この私が、これまで積み上げてきて、間もなく完成予定の神の国が、貴様ごとき不浄のゴミ箱に壊されてたまるか!」


 バルナバスの瞳が赤黒く光る。彼は聖典を広げ、禁忌の呪文を唱え始めた。


「来い! 我が忠実なる守護者! 信仰の敵を焼き尽くす、天の裁きを体現せよ! ――召喚――聖霊ケルビム!!!」


 執務室の天井が爆散し、上空から巨大な光の塊が降り注いだ。

 それは一見すると、美しい翼を持つ天使のようだった。しかし、その全身からはドロリとした負のマナが溢れ出し、周囲の壁を腐食させていく。


「聖霊とは名ばかりだな・・・・・・人々の負の感情をマナで固めた、巨大な魔毒のかたまりといったところか」

「ふははは! この聖霊を倒せる者はいない! さらばだ、忌々しい子供たちよ!」


 バルナバスは聖霊を盾にするようにして、執務室の裏にある隠し通路へと逃げ込んだ。


「逃がさない! ・・・・・・でも、こいつを放っておいたら大聖堂が崩壊するわ!」


 エマが剣を抜き、聖霊が放つ光の矢を弾き飛ばす。


「ミト、やるわよ!!」


 エマの号令と共に、僕たちの反撃が始まった。

 僕は記憶にアクセスして、大技を発動させる。


【終焉の浄光】エクスティンクト・レイ


 僕の手先から、まばゆい光のたばが発生する。幾重にも連なる虹色の光の槍が、聖霊ケルビムの体を貫く。


「ギ、アアアアアアッ!」


 聖霊が苦悶の声を上げ、広範囲に毒の波動を撒き散らす。


「エマ、僕の後ろへ!」


 僕は一歩前に出ると、両手を広げて迫りくる魔毒の嵐を真っ正面から受け止めた。


「――【黄金の捕食】(ゴールデン・イーター)!」


 聖霊がまき散らす毒が、僕の体へと吸い込まれていく。


「エマ! 今だ!」

「任せて! ――スプレンディアス流奥義、【閃華斬】!」


 エマの白銀の剣が、聖霊の胸を貫いた。

 聖霊の核は斬られ、砕けた。光の巨像が粒子となって霧散していく。


 崩壊する聖霊を横目に、僕は隠し通路の先を凝視した。

 バルナバスが逃げた先からは、まだ腐ったような魔毒の匂いが漂っている。


「追いかけよう。彼はまだ、奥の手を持っているはずだ」


 エマが僕の手をしっかりと握る。


「行こう。全ての偽りをあばくために」


 僕たちは、闇に包まれた大聖堂の深部へと駆け出した。


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