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魔毒喰らいのミト~「ゴミ箱」と呼ばれた魔毒処理師、実は最強の知識とスキルを溜め込んでいました~  作者: いおにあ


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20/22

第20話 ハーレム学園生活の始まり!?


 かつて、僕の周囲には「忌避」という名の無形の壁があった。人々は僕が通るたびにころもを翻し、けがれを恐れ、距離を取った。


 けれど、現在の王立学院において、僕の周りにあるのはそれとは正反対の種類のものだった。


「ミト様!あの、この後の講義、お隣よろしいですか?」

「ミト様、こちらの魔導論文で分からないところがあって・・・・・・お教えいただけないでしょうか」

「ミト様、今度の剣術実技の試験、良かったらご一緒に・・・・・・」


 登校するなり、廊下を歩いていると、女の子たちから、こんな声をかけられ続ける。物陰からは、話しかけるほどの勇気は持ち合わせていない女子生徒たちが、頬を染めてこちらをうかがっている。


 剣術科の精鋭を三十人瞬殺したという武勇は、瞬く間に学院にとどろいた。それに加えて、リリアニアさえ逆らえないほどの圧倒的な影響力。それらの二つが合わさり、いつの間にか学院で最も注目されるまでになっていた。


「はいはい、そこまで!ミトの隣は私が終身契約済みよ。用があるなら、まずは私を通しなさい!」


 鋭い声と共に、僕と女子生徒たちの間に割り込んでくるのはエマだ。彼女は愛剣のさやをカチャリと鳴らし、騎士特有の鋭い眼光で周囲を威圧する。


「エ、エマ様……。ごめんなさい!」


 蜘蛛くもの子を散らすように去っていく女子生徒たち。エマは彼女たちの背中をジロリとにらみつけると、深い溜息ためいきをつく。


「もう・・・・・・!ちょっと目を離すとこれなんだから。ミト、あなたもあなたよ。あんなにデレデレして!」

「ごめんってばエマ・・・・・・ただ、無視するのも失礼だと思って」

「それがすきになるの!あの子たちの目を見た?あれは勉強を教わりたい目じゃないわ。あなたを丸呑みにしようとする猛獣の目よ!」


 エマは僕の腕をぎゅっとつかみ、自分の胸に引き寄せた。独占欲を隠そうともしないその姿は、周囲への強い牽制デモンストレーションだ。


 そんな僕たちの前に、ひょいと音もなく現れたのは、青髪を揺らす少女――リサベル・フォークナーだった。


「相変わらず非論理的なエネルギーを消費しているわね、エマ。ミトの希少価値が上昇すれば、需要が供給を上回るのは経済学の基本よ」


 リサは大きな丸眼鏡を指で押し上げ、手に持った小型ノートに何かを書き込みながら僕たちを眺めている。


「リサ!またミトに変な実験を吹っかけに来たの?」

「失礼ね。私は彼のバイタルデータを観測しに来ただけよ。でも、確かに最近のミトの周囲の『めす』たちの動きは活発ね。生物学的に見れば、より強い魔力の『おす』を求める本能だわ」


 リサは軽い口調で言いながら、僕の顔をじっとのぞんだ。


「だからって、こういうのはあまり楽しい状況じゃないわね・・・・・・」


 エマはふくれっつらで、くちびるを尖らせる。


「ミト。私の予測では、あなたのバイタル値は、魅力的な異性と接触すればするほど、上昇するはずよ。折角ここまで女の子に言い寄られているんだから、ちょっとは試してみれば」

「な・・・・・・リサ、ミトに浮気を進めないで!」


 エマの怒りに、リサは「事実を述べたまでよ」と涼しい顔だ。

 

 リサベル・フォークナー。通称リサ。魔導学科の天才的生徒である彼女は、僕の魔毒耐性を研究するという名目で、いつの間にか僕たちのグループに定着していた。彼女はエマのような激情こそ見せないが、僕の肉体の状態については、ときにエマ以上に執着を見せる。


「リサがいてくれると助かるよ。僕も、自分のことをもっと理論的に知りたいからね」

「賢明な判断よ、ミト・・・・・・さあ、エマ。あなたはこれから特別高等剣技の演習でしょ?その間、ミトの護衛(と観察)は私が引き受けてあげる」

「えっ・・・・・・!?」


 エマがハッとして時計を見る。学院のスケジュールは過密だ。剣術科の精鋭である彼女には、どうしても僕と離れなければならない時間は割とある。


「うう・・・・・・そうだった。今日の午後は、騎士団から直々に講師が来るんだった・・・・・・」


 エマは断腸だんちょうの思いといった顔で、僕の服のそでを離した。


「いい、ミト。リサは・・・・・・まあ、この子は変人だからいいとして、他の女の子には絶対に付いていっちゃダメよ?お菓子をくれるって言われても、ダメだからね!」

「もうこどもじゃないんだからそんな・・・・・・分かってるよ、エマ。演習、頑張ってね」

「・・・・・・信じてるわ。信じてるけど・・・・・・ああ、もう!やっぱり心配!」


 エマは後ろ髪を引かれる雰囲気で、何度も振り返りながら演習場へと走っていった。


 エマがいなくなった途端、周囲の空気が変わるのを感じた。僕を遮断しゃだんする盾がいなくなったと判断した女子生徒たちが、遠巻きにこちらを伺い、機会を狙っている。


 ・・・・・・エマの気持ちも、少し分かる気がするな・・・・・・


 これまでは魔毒を吸うことだけが僕の仕事であり、存在理由レーゾンデートルだった。けれど今は、好意という名の空気にさらされ続けている。それはある意味、魔毒よりも対処が難しい。


「ミト、集中しなさい。あなたの鼓動が少し速くなっているわ。周囲の視線によるストレス反応?それとも・・・・・・あそこの角で待ち伏せしている公爵令嬢への期待感?」

「・・・・・・前者だよ、リサ。後者はそもそも気づいてなかった」

「ならいいわ。さあ、今日の研究はまずこの術式を展開して・・・・・・」


 リサは手近にあったベンチに座り、その隣に僕を導いて、密着するような距離で魔導記録板を差し出してきた。


 リサには、エマのような異性としての遠慮が欠けている。その距離感の近さは、また別の意味で僕を緊張させるのだが、リサ本人はいたって気にする風でもない。


 ・・・・・・ちょっと複雑だな。リサもすごく可愛いし、異性として意識しないといえば嘘になる。でも、そもそものリサがまったくそういう気はないし・・・・・・それに、いまこうしてリサが隣にいてくれるおかげで、他の女の子たちが遠慮して、話しかけてこない。遠巻きに見られているのは、仕方ないけれど・・・・・・リサが、完全に無意識のうちに、エマ同様、僕を遮断してくれる盾になってくれているから、そこはありがたく考えないといけないのかな。


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