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魔毒喰らいのミト~「ゴミ箱」と呼ばれた魔毒処理師、実は最強の知識とスキルを溜め込んでいました~  作者: いおにあ


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第13話 もっと親密になりなさい!そうすれば更なる恩恵があるわよ


 毒霧の谷の発見によって、当面はお金の心配をする必要はなくなった。これで王立学院へは無事に入学できるだろう。


 今日も、いつものようにエマが家にやってくる。夕食を一緒にとることにしている。なぜかクレアもついてきているが、まあいいだろう。


 僕たちは、ノルディアス家のリビングで、夕食までの時間を、のんびり過ごしている。


 僕の向かいのソファに座っている万能鑑定士・クレアが、深刻な・・・・・・あるいは少しニヤけたような表情で、一枚の魔導紙を見つめていた。


「・・・・・・なるほど、そういうことだったのね。解析と鑑定を重ねた結果、一つの究極の効率論が導き出されたわ」


 クレアの声に、ソファにくつろいでいた僕と、剣の手入れをしていたエマが顔を上げた。


「効率論?魔毒吸収のスピードがもっと上がるってこと?」


 僕の問いに、クレアは不敵な笑みを浮かべる。


「ええ。ミト、あなたの魔毒の吸収は、相手との『心理的な距離の近さ』と『肉体的な接触密度』に比例して、吸引効率が指数関数的に向上することが分かったの。これまでみたいに、抱擁するだけじゃ、実は性能の半分も引き出せていないわ」

「半分・・・・・・? それでも十分すぎるくらい浄化できていると思うけど」


 困惑する僕の横で、エマが不安そうに身を乗り出した。


「クレア、もしかして・・・・・・もっと別の方法があるっていうの?」

「う~ん・・・・・・別の方法、というより、もっと深い方法と言うべきかしらね。ミトを劇的に強化して、同時にエマの精神状態をも最高潮にまで高める手法よ。・・・・・・鑑定結果を見てちょうだい」


 クレアが空中に投影したホログラムに、複雑な表が映し出されていく。


【魔毒吸引効率と親密度の相関図】


レベル1 :手を握る、肩に触れる

吸引効率 :15% - 20%


レベル2: 長時間の抱擁、添い寝

吸引効率:45% - 55%

付随効果:疲労回復など


レベル3:粘膜接触キス

吸引効率: 85% - 90%

付随効果: スキルの劇的向上


レベルMAX:心身の完全な結合(性的な接触)

吸引効率:120% - 150%

付随効果:全スキルの深化・進化、その他諸々の数値の爆発的向上



「・・・・・・・・・・・・えっ?」


 思考が停止した。


 投影された文字。特に「レベル3」以降の内容を読み取った瞬間、彼女の雪のように白い肌は、火がついたように真っ赤に染まった。


「れ、レベル・・・・・・ま・・・・・・!? キ、キ、キ・・・・・・接・・・・・・ええええええ!?」


 エマは手に持っていた剣の手入れ用の布を落とし、椅子から転げ落ちそうになった。


「ど、どういうことよクレア! 性的な、なんて・・・・・・そんなの、そんなの・・・・・・っ!」

「落ち着いてエマ。これは純粋に『魔導力学的な事実』を述べているだけよ。ミトの黄金の力は、相手への愛情や信頼が深まれば深まるほど、その『器』の口を大きく広げる。そして、最もそれ活発に行われるのは・・・・・・言うまでもないわね。お互いの鼓動が重なり、皮膚以上の接触が行われる時よ」


 クレアはすずしい顔で続けた。


「それに、これによる恩恵は浄化だけじゃないわ。ミトの中に蓄積されたスキルが、エマの体へも一部還元される。つまり、二人で『愛を深める』ことが、そのまま世界最強への近道になるの。効率的だと思わない?」

「効率的とか、そういう問題じゃなーーーーい!」


 首筋まで真っ赤になったエマは、顔を両手で覆い、指の隙間から僕を盗み見た。

 僕もまた、あまりの衝撃に固まっていた。


「・・・・・・ミト。あなたも何か言いなさいよ・・・・・・」


 エマがの鳴くような声で呟く。

 僕はゴクリと唾を呑み込み、しどろもどろになりながら口を開いた。


「え、えーっと。・・・・・・その。僕、今まで、エマの手を握ったり、抱きしめただけでも、すごくドキドキしてたっていうか・・・・・・それが、その先とか・・・・・・キスとか・・・・・・その、もっと・・・・・・ええっ!? 無理だよ、そんなの、心臓が持たないよ!」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・あ、いや! 『無理』っていうのは、エマとそういうことをするのが嫌だっていう意味じゃなくて! むしろ、その、僕はエマのことが大好きだし、大切だし、ずっと一緒にいたいと思ってるけどっ!」

「だっ・・・・・・大好き・・・・・・っ!?」


 エマの顔が、さらに火が出て爆発しそうなほど赤みが増した。


 僕が、自らの感情として「大好きだ」と口にしたこと。それがエマの乙女心を直撃したみたいだ。


「そ、そんな・・・・・・。ミトにそんな風に言われたら・・・・・・私だって、その・・・・・・」


 エマは俯き、自分の指先をいじりながら消え入るような声で言った。


「私だって・・・・・・ミト以外の男の人に触れられるなんて考えられないし・・・・・・。もし、それが必要なんだとしたら・・・・・・その、覚悟を、決めなきゃいけない・・・・・・のかしら・・・・・・」


 甘酸っぱくも耐え難いほど濃厚な空気が僕たちの間に流れる。


 クレアはそんな僕たちを見て、満足げに紙を丸めた。


「まあ、今すぐ『レベルMAX』になれとは言わないわ。でも、エマ。あなたの剣技をさらに高め、ミトの浄化能力を安定させるためには、せめて『レベル3』・・・・・・一日に一度くらいは、深い接吻せっぷんを交わすことを推奨するわね。これは健康管理の一環よ、健康管理の」

「けん、こう、かん、り・・・・・・」


 エマはもはや、気絶寸前だった。


 僕がエマと、キスをする。


 幼い頃からずっと一緒にいて、家族のようで、でも最近はそれ以上の存在として意識せずにはいられなかったエマ。


 そりゃ確かに、小さい頃はふざけてキスをしたこともある。だけれどあれは、もう十年以上前の話だ。僕たちはもう十六歳。さすがにそんなことをおいそれとは・・・・・・


「・・・・・・ミト」


 エマが恐る恐る、顔を上げて僕を見てくる。 僕もまた、覚悟を決めて、エマを見つめ返す。きっと今にも泣き出しそうな、すごく恥ずかしい顔をしているに違いない。


「・・・・・・エマ。僕、君が嫌じゃないなら・・・・・・その。少しずつ、試してみても・・・・・・いい、かな?」

「・・・・・・・・・・・・う、うん」


 エマは小さく頷く。


 そんな僕たちの様子を、クレアは冷やかすような口調で、はやし立てる。


「ほらほら、遠慮はいらないわよ。愛し合う二人の愛の営みなんて、鑑定不能な、究極の『価値ある』行為でしょ?」

「「クレアは黙っていて!!!」」


 エマと僕、二人(そろ)って綺麗に声が重なる。そのことで、お互い余計に恥ずかしくなった。


 ・・・・・・まあいい。少しずつでも、エマと関係を進めていければ、それで良い。焦りは禁物だよね。


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