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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程【改訂完了版】  作者: シロクマシロウ子
邂逅編

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旅の道づれ–期間限定–

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。




 声の方を向くと、孝臣が風晴を見つめていた。

 みんなは そんな2人を見つめている。


「なあ、風晴。こんなふうに考えてくれないか」


 孝臣の風晴への眼差しは温かかった。


「こいつらはお前がいつもいるヤツらとは違うだろう?」


 ミステリー同好会メンバーに片手を向けて孝臣は言った。


「こいつらは変わってるだろうが悪いヤツらじゃない。それは私が保証する。彼らはここにこの夏しか滞在しないし、おそらくは……この先会うことはもうないだろう」


「ええ!? LINE交換しようよ」


「しっ。静かに」


 周囲に睨まれて桂木は黙った。そして、うつむいた。

 心なしかしょんぼりしているようにも見える。

 彼の言葉は本気だったものもあるのかもしれない。


「お前が何を話しても、共有するのは──()()で」


 トン と、孝臣は畳を人差し指で突いた。


「この土地で──だけだ。だから会ったばかりかもしれないが、こいつらを信用してやってくれないか?」



 風晴は一瞬で理解した。

 孝臣が言っているのは────

 外部からきた同好会メンバー達は、()()()()()秘密を近所の住人や桜田の親戚に吹聴することはない──と言うことだ。

 この今の自分の状況は、ここでこれから先も生活を続けていくからこそ、この先も顔を合わせる者には、安易な相談すらも難しい。

 だが眼前の彼らは────やがて いなくなる存在だ。



 風晴はこの土地が好きだった。

 祖父が生まれ育ったこの場所で、自分も歳を重ねていくだろう。時折旅行のようなものには出るだろうし、都会への憧れがないわけじゃない。

 それでも多分自分はここで祖父と同じく人生を終えていくんだろうとさえ、彼はすでに悟っている。

 しかしながら閉鎖的な田舎というものには、独特の風習や暗黙のルールも確かにあるのだ。複雑で濃すぎる人間関係が構成されていて、誰かの親と誰かの親が友人や親戚だったり、近隣の住人は互いの家の人の出入りを全て知っているなんてことも……ここでは日常に過ぎない。

 それが良い方に作用しているうちは気にならないが、ひとたび何かの弾みで悪い方に動きだせば、周囲の目の全てはただ自身を苦しめるものへとなり得る。



 風晴は子供ながらにそれらに(さら)される母親の姿と、重責に縛られる父親を覚えていた。いや、当時はただ見ていただけのものを、時が経つにつれて()()()()ようになっていったのだろう。

 だがそういう思い出達を、風晴は確かに──今学校にいる地元の友人達には話したことがなかった。彼らとは屈託なく毎日ふざけ合いながら過ごしているのに。


(いやむしろ、()()()()()自分はしらないうちに心に鍵をかけていたのかもしれない)


 風晴は気づいた。

 しかしこの東京から来た高校生達は、風晴が胸の内を打ち明けても同じように胸にしまって──そして、ただ消えていってくれるのだ。

 孝臣は"だから安心していい"と言ってくれている。



 孝臣は今度は同好会メンバーの方を向いた。


「お前達は風晴からきいたことは、この仲間うちでは話していいが、ここの住人には絶対に漏らすなよ。特に保険金の話しは御法度だ。

 2億なんて金額は、日本のどこでだって人間の目の色を変えさせるだろうが、こんな田舎じゃ恰好(かっこう)の噂と好奇の的だ。今は詐欺やら闇バイト強盗もあるからな。

 探偵まがいを気取るなら、せめて依頼人の秘密は守るもんだ」


「守秘義務ってヤツですね」


 神宮寺がうなずきながら言う。

 他のメンバーも特に言葉はなかったがうなずいた。

 風晴はやんわりと、胸が温かくなる気がした。

 だが、皆に目をやっていたからこそなのか……民宿の息子らしく、突然彼はあることに気付いてしまった。


「飲み物持ってくるよ。喉乾いてるんじゃないか?」


 皆に背を向けて戸口に向かって、そこで彼は足を止める。

 振り返って口を開く────そうすべき気がした。


「戻ってきたら、父さんが行方不明になった時のことを聞いてほしい」


 静かなままだったが、むしろそれは──誰もがその言葉を受け取ったかのような沈黙だった。


 返事ではないが安西が進み出てきた。


「手伝うよ。1人で8人分って結構大変だ」


 風晴はそれを受け入れた。

 2人は一緒に階下に向かった。







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