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浮かび上がる魔境

ー登場人物紹介ー

◆桜田風晴（さくらだかぜはる）・・・田舎の農業高校2年。

◆桜田風子（さくらだふうこ）・・・風晴の母親。民宿を営む。

◆桜田晴臣（さくらだはるおみ）・・・風晴の父親。市議会議員。6年前から行方不明。

◆桜田孝臣（さくらだたかおみ）・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。

◆桜田和臣（さくらだかずおみ）・・・晴臣の弟。桜田建設社長。

◆大道正火斗（だいどうまさひと）・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

◆大道水樹（だいどうみずき）・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

◆安西秀一（あんざいしゅういち）・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

◆桂木慎（かつらぎしん）・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

◆神宮寺清雅（じんぐうじきよまさ）・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

◆椎名美鈴（しいなみすず）・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

◆宝来総司（ほうらいそうじ）・・・正火斗、水樹の実父。元陽邪馬市市長。桜田晴臣が行方不明になる同日に転落死。

◆西岡幸子（にしおかさちこ）・・・桜田家の隣人。

◆井原雪枝（いはらゆきえ）・・・風子に屋敷を貸すオーナー。

◆大河弓子（おおかわゆみこ）・・・夏休みの間の民宿の手伝い人。

◆大山（おおやま）キエ・・・黒竜池によく行く老婆。

◆真淵耕平（まぶちこうへい）・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

◆真淵実咲（まぶちみさき）・・・耕平の妻。

◆真淵聖（まぶちひじり）・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。

◆真淵和弥（まぶちかずや）・・・耕平と実咲の次男。

◆北橋勝介（きたはししょうすけ）・・・フリージャーナリスト。

◆安藤星那（あんどうせいな）・・・朝毎新報・新聞記者。

◆羽柴真吾（はしばしんご）・・・関光組組員。6年前から消息不明。

◆松下達男（まつしたたつお）・・・関光組組員。羽柴の舎弟。

◆緑川（みどりかわ）まどか・・・羽柴真吾の女。6年前から消息不明。

その時、灰畑(はいはた)駐在所の電話は鳴った。しかし、交番は閉め切られており、真淵巡査部長はパトカーの中にいた。

転送によって、彼はその駐在所への電話に応答した。

『真淵巡査部長？桜田風晴の民宿に泊まっている大道です。』

こちらが駐在所を名乗る前に、彼は話し出した。かなり急いでいるようだ。

『真淵です。その節はお世話になりました。何かありましたか？』

『申し訳ありませんが、一度これを切って、あなた個人からこちらに電話をかけてもらえませんか？至急です。』

（一体なんだ？これは）

真淵は不思議には思ったが、従うことにした。大道正火斗の声はとても真摯で、真剣だった。

相手に自分からかけると、ワンコールしないうちに応答があった。

『真淵ですが』

と言う、声が終わるか終わらないかのうちに、彼は話し出した。

『真淵さん、今日僕達は黒竜池の白骨体の一つが松下達男だと知りました。残る女性の白骨体は、今(・)井(・)薫(・)子(・)の(・)D(・)N(・)A(・)と(・)は(・)一(・)致(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)ん(・)で(・)す(・)ね(・)？(・)一致しているなら、もう判明していていいはずです。』

真淵は答えた。これは、応じていいだろう。彼はもう答えを出している。

『そうです。今井薫子さんとは合致しなかったので、まだ身元不明です。』

正火斗はまだ質問を続ける気だ。彼の緊張感を、わずかな静寂の間に真淵は感じとっていた。それでも、この後の発言にドキリとさせられた。

『真淵さん、今　夜洛市の花火会場で、テロや爆弾の脅迫の連絡が警察に入っていませんか？教えて下さい。どうしても、必要な情報なんです。お願いします。』

（どうして知っているんだ？）

真淵は迷った。一般人に警察の情報は話されない。

正火斗はうったえた。

『お願いします。これは、輪命回(りんめいかい)病院にいる、僕の友人や妹や、あなたの奥様にも関わることなんです。教えて下さい。』

その言葉に硬直する。クソッ。もう、いつでも辞める覚悟はできてる。

『大道くん、君の言う通りだ。ついさっき、本部から連絡があって、

" 流良(ながら)川花火大会に爆弾を２つ仕掛けた。一つは日陰に隠れている。怪我人を出したくなければ中止しろ"

と言う内容のメールを主催者が連続して受信したそうだ。

オレは灰畑からは動かなくていいが、こちらでも人の集まる場所は巡回に行けと指示があった。それで、今畑野(はたや)駅に来てる。』

電話口で、彼の悪態が聞こえた。それから、正火斗が話した内容は、真淵を日差しの当たる車内でも凍りつかせた。

『これは罠です。花火大会会場の、、、おそらくは橋の下あたりで爆弾は発見されるでしょう。本(・)物(・)が(・)発見されるはずです。』

彼は息つく間もなく続けた。

『でもそれは罠だ。２つ目の爆弾は花火大会会場にはない。それでも、警察は動けないでしょうね。２つ目を探しながら、観覧者を整備して帰宅させなければならない。

真淵さん、２つ目の爆弾は、僕は』

その言葉は、正火斗自身をも凍てつかせる。

『輪命回病院にあると思います。』

それでも、続けた。続けるしかない。

『しかも、病院内に２(・)つ(・)ある可能性があります。』

それは正火斗の周りの、ランドクルーザーにいる他の人間にも衝撃的な発言だった。運転している安藤以外は、全員が彼に注目した。その安藤さえも、視線は泳いだ。

『そんな馬鹿なことは、、、』

『真淵さん、奥様と連絡がとれるなら、とって下さい。十中八九、これはあなたの奥様を脅していた者達の犯行です。奥様が意識を取り戻していたら、彼らがまた連絡を取ってきている可能性がある。』

『なんだって！？』

真淵は思わず大声で叫んでいた。

『落ち着いて下さい。時間があまり無いかもしれないんです。奥様は、この事態を止めれる可能性があると言うことです。

僕はこれから妹や友人に電話をかけます。他の人間の番号も教えておきますから、僕に繋がらなければ他の人に連絡して下さい。』

正火斗はそうして、自分のスマートフォンを、横にいた椎名に向けた。

『椎名美鈴です。番号は、、、』

椎名が真淵に伝えた。それから、彼は前席の北橋にも向けた。北橋も椎名に習い、名前と番号を伝える。

それから彼は、スマートフォンを自分に戻し、最後に言った。

『全てが僕の思い込みなら、公務執行妨害で逮捕してもいいです。でも、お互いにとって残念なことに、多分そうはならない。とにかく一度、一度奥様に電話して下さい。お願いします。』

そうして、電話は切れた。真淵は、しばし切れたスマートフォンを見つめていた。事態が信じられない。だが、彼は爆弾の脅迫情報を言い当てた。

真淵は震えそうになる指で、スマートフォンをかけた。

妻へ。

次回より、登場人物紹介を休止し、輪命回病院　簡易地図を前書きに載せます。緊迫の時は迫ります！