近づく真実と足音1
ー登場人物紹介ー
◆桜田風晴・・・田舎の農業高校2年。
◆桜田晴臣・・・風晴の父親。市議会議員。6年前から行方不明。
◆桜田孝臣・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。
◆大道正火斗・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。
◆安西秀一・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆桂木慎・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。
◆神宮寺清雅・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆椎名美鈴・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆西岡幸子・・・桜田家の隣人。
◆今井薫子・・・桜田晴臣の秘書。
◆真淵耕平・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。
◆真淵聖・・・耕平の長男。農業高校2年。
◆北橋勝介・・・フリージャーナリスト。
西岡家の客室は畳だったが、テーブルとローソファからの洋風家具だった。
風晴、北橋らは全員がホゥと息を吐いた。
水樹が聖に
"足がしびれちゃうよ! 立てなくなるよ! 逃げられないところにまた話が来るのよ! もう地獄から戻って来れなくなるから!!"
と訴えていた叫びが耳に残っていたからだ。
これでなんとか、帰還の際には速やかに撤退ができそうだ。
西岡満子は風晴達にカルピスを、北橋には麦茶をも準備してくれたので、全員彼女に心から感謝した。彼女があと20歳若かったら魅力すら感じていたかもしれない。
王族が瀕死の状態で看病されると、たいしたことのない容姿、身分の設定のヒロインと、なんでかうまくいくファンタジー小説が安西の頭にはよぎった。
(アレってこういうことか……)
と彼はいくらか人生を学んだ。──学んだか?
満子が飲み物を出してくれているうちに、北橋は切り出した。彼女が退席してしまっては戦局(?)は全く変わるからだ。
「西岡さん、できれば満子さんからもお話しが聞ければ大変助かります。満子さんはその……今井薫子さんが黒竜池で亡くなった際の目撃者だと伺っています。なんとかご同席お願いできないでしょうか」
瞬間──北橋は正火斗に目配せした。正火斗はその天性の勘の良さで、
「どうかお願い致します。僕らを助けて下さい。西岡幸子さん、満子さん」
というセリフに甘えるような笑みを加えた。漫画なら確実にアップのところだ。
風晴はそれができる正火斗にやや引いた。
安西は彼を知っていたので小さくうなずいた。
聖はカルピスを飲んだ。
「ええ、ええ! 勿論! あたし達の話で良ければいくらでも!!」
そこまではいらない。「ありがとうございます」
「黒竜池ってねぇ、前からある噂があってね。アカガワセイって女の人が、再婚してきたんだけど」
それは知ってる。「ありがとうございます。でも満子さんからお聞きしても良ろしいでしょうか?」
正火斗はとりあえず進むことを選びたかった。
「ええ──? ホラ、あんだってよ 満子」
幸子は少しふくれたようだ。娘の満子は そんな母親をすまなそうにしている。──良かった。彼女の感性はまともそうだ。
北橋にとっては初めての話だ。安西は助け舟を出した。
「今井薫子さんとは小学校中学校が一緒だったんですよね? 仲が良かったんですか?」
すると満子ではなく幸子が
「そうよ! いっつも2人でよく遊んでいたの。灰畑では、薫子ちゃんが1番オシャレな名前で、満子ちゃんが1番バナナを食べるのがはやいって、有名だったのよ」
何の話だかもう。安西は諦めずに再びきいた。
「当日の12月23日には、どうして今井薫子さんと会うことになったんですか?」
すると満子ではなく幸子が
「この子達ねぇ、東京で会ってたんですって。偶然。すごいわよね、東京って人も多いのに、同郷の人間がたまたま出会うなんて。
まあ、あたしもね、新幹線で会ったことがあるのよ。なんと、大関に! 誰だったと思う? もう10年以上前なんだけれど、あの頃ちょうど準優勝した……」
幸子ぉおおぅい!!!!!!
誰もが絶望しかけた時──
「お母さん、ちょっと静かにしてて!」
と、なんと正義の声がそこに響いた!
風晴達はもう満子を拝みたくなった。そんな彼らの神聖視を浴びながら満子は話し出した。
「母の言った通り、薫子ちゃんとは小さい時にはとっても仲が良かったんです。
薫子ちゃんが中学2年生の時に陽邪馬市に引っ越してからも文通していたくらいです。でも、お互いに受験やら高校生活やらで、音信が途絶えてはいたんです」
全員が満子の話しに大きくを相槌する。さあ、あなたが進めて下さい。
「もう10年くらいも前ですが、私が東京本社に出向きの用事があった時に、東京駅の化粧室でたまたま薫子ちゃんに会ったんです。
私はスーツで仕事着でしたが、薫子ちゃんは……すっかり大人の装いでお化粧もしていて。でも私は彼女だって分かった。それで声をかけました。
だけど、実は薫子ちゃんは…………」
満子はそこで 一息ついた。そして喉に手をやると
「お母さん、話してたら喉乾いてきちゃった。私にも何か飲み物持ってきてくれない?」
と言った。
────ファインプレイ!!!!




