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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程【改訂完了版】  作者: シロクマシロウ子
転落編・落下

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道案内現る

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員。6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


西岡幸子にしおかさちこ・・・桜田家の隣人。

今井薫子いまいかおるこ・・・桜田晴臣の秘書。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平の長男。農業高校2年。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。





 北橋は重い息を吐いて西岡家のインターフォンを押した。

 風晴に


「あとは頼むよ」


 と言う。風晴は うなずいた。


「はいは────い!」


 と言う軽快な声と共に ガラガラと戸口が開いた。


「西岡さんいつもお世話になってます。これ、ほんの気持ちです」


 と風晴は祖父の畑で取れたメロンをまず渡す。


「ええ!? 受け取っていいのぉ?」


 と言った時点でメロンは幸子に受け取られ済みだ。返事を待つ気はない。相手の言葉など幸子には無用なのだ。


「悪いわねぇ。スイカはね貰うことあるのよ、この時期。でもメロンてね、ホラまた違うじゃない? メロンは」


 と始まり出したので、風晴は慌てて北橋を引っ張りだした。


「西岡さん! こちら、うちに泊まってるジャーナリストの北橋さん。東京でモデルを撮影したり芸能人の記事書いたり、事件を調べたりしてるんだって」


「えぇ? モデル? 芸能人? 本当に? あらやだ、あたしお化粧してないのに。もう風晴くんてば、急だから……」


「どうも、北橋です」


 と彼はなんとか笑顔を作って答えたが、話がどこに向くのかすでに恐ろしかった。


「芸能人って言うと誰を取材したんですか?

 あたしは最近はねぇ、あの連続ドラマの男の子がいいと思うんですよ。あの若い子はのびるわよ。あの──アラぁ、なんて言ったかしら?

 最近は、なんでも名前出てこなくてなっちゃってねぇ! でももう1人のいいなって子の名前は分かるわ。子役から大きくなって今ちょうど20歳(ハタチ)の……」


「西岡さん!! 僕達は北橋さんを手伝って黒竜池に関する事件を今調べているんです」


 安西は必死に軌道修正を試みた。

 玄関先で芸能人の話で3時間が過ぎたら、この夏の昼過ぎでは多分全員が倒れる。

 いや幸子だけはそれでも喋り続けるんだろうか。彼女の口や喉は乾かないのか! ────もうホラーだ。


「黒竜池?」


 やっと幸子が止まったので、正火斗はここぞとばかりにねじ込んだ。


「そうです。それに、実は桜田孝臣先生がその黒竜池の調査を始めた頃から、ポストに嫌がらせのような手紙が入っていることが3回も起こっていたんです。西岡さん、お隣りでしょうから何かご存知のありませんか?」


「ええ?」


 幸子は背の高い正火斗を見上げて──そしてほぅ…と見惚(みと)れているようだった。正火斗が


「西岡さん?」


 と再び聞くと


「お兄さん素敵ねぇ。東京の学生さん? なんかすごく頭のいい所なんでしょう? 聞いてたのよ! 風子さんと井原さんから!

 何て言うのかしら。うちの人の若い頃に似てるって言うか。うちの人もね、若い頃は髪を少し伸ばしてたりしてたのよぉ。──あ、今はもう足りなくなってきているけど。

 なんてね、フフフ! 昔はあの人も少女漫画のヒーローみたいな頃もあったのよ。あたしにね……」


 正火斗の美貌も、悲しいことに(あだ)になった。話はすっかり迷走状態となった。

 自分達は3時間で果たして本当に戻れるんだろうか……

 風晴が不安になり、北橋はすっかりやる気を無くし、安西が玄関前死亡の絶望に襲われていた時、天の声がそこに響いた。 


「お母さん何やってるの? そこじゃお客さん暑いでしょ。まず中に入ってもらったら?」


 全員が声の方を振り返った。幸子の口もちゃんと止まって振り返っていた。そりゃそうだ。


「お母さんて……」


 風晴の言葉に幸子が


「風晴くんはあまり会ったことないものね。分からないかな。──娘の満子(みつこ)。千葉から今戻ってるのよ。お盆も近いから」


「こんにちは」


 娘と言っても、40歳前後くらいの中年女性ではあった。しかし場面をコントロールできる可能性のある人物の登場に、みんなが期待の瞳で彼女を見た。

 西岡満子は注目に少し不思議そうにはしたが


「どうぞどうぞ。そっちの部屋はクーラーも効いてるし」


 とやはり素晴らしい進言をしてくれたので、

 全員が素早く靴を脱ぎ始めた。


「北橋さん、絶対娘さんにも同席してもらう方向で」


 安西が動作しながら耳打ちする。


「分かってるよ。地獄に仏だもの」


 正火斗がそうじゃないと首を振って北橋に


「西岡さんの娘は今井薫子の同級生で、()()()()()()()()なんです」


 と素早く伝えた。

 北橋も一瞬で顔を真剣にした。





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