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少しばかりの寄り道を

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年生。


桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。


桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。


桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。



大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。


大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。


安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。


桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。


神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


風晴と安西が一階に降りて行くと、下からは賑やかな話し声がしていた。

台所に行くために通らねばならない茶の間には、風晴の母と、二人の中年の女性の姿があった。


『風晴くん、焼けたねえ!そっちはお友達?』


女性のうちの1人が挨拶もなく、いつも通りに話しかけてきた。隣の家のでっぷりとした体格の西岡幸子だ。夫とその両親と暮らしている主婦である。日中彼女が来ると、1時間半で帰ってくれれば、まだ 短くて済んだ と思わなければならない。


『お客様なのよ。東京からの学生さん達。顧問が孝臣さんなんですよ。』


母が説明してくれたので、風晴と安西はただ軽く頭を下げた。


『孝臣さんが来ているの?それなら、晴臣さんのこと、何か相談してみたら?、、、ごめんなさいね、私が口を出すことではないのかもしれないけれど。』


もう1人の品のいい女性が、母に話しかけた。

風晴は自分から彼女に挨拶した。

 

『こんにちは、井原さん』


『こんにちは』


隣の安西まで挨拶した。風晴に習ってくれたのだろう。


『こんにちは、風晴くん。そちらもようこそ、灰畑町へ。』


後半は安西に向けられたものだった。

井原雪枝は、小柄だが凛とした姿勢で座っており、優しく笑っていた。長く、少し白髪の混じり始めた髪を一つにまとめている。目尻にやや皺は出てきているが、おそらく風晴の母より若いだろう。


『なに?何?晴臣さんのこと、とうとう何か調べるの?』


西岡幸子がここぞと食らいついてきた。彼女達はこのような話題は決して逃さない。


『まさか。孝臣さんも困るでしょう?警察ももうサジを投げているんだから。』


母は笑ってかわした。

風晴は内心ひどく安心して、その場を足速に離れた。

安西も後から続く。

ああいう手合いに調査や生命保険の一言でも漏らそうものなら、ここでは皆の食い物にされて終わりだ。


台所にはエアコンが無く、ムフッとしていた。それでも、安西は自分が入った後、その扉を閉めた。


『君もいろいろ大変なんだな』 


彼はすぐさまグラスの置き場に目をつけて、その戸棚を開けながら言った。

風晴は麦茶を冷蔵庫から出す。


『まあな。でも受験戦争にはもう招集されない。』


『言うね。僕らは受かるまで戦わされるだろうからなぁ。反論はできないよ。』


風晴は自分が普段から使っているコップにまず麦茶を注いで、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。はぁっと息を吹き返して、それから言葉をつないた。


『その後は一流が待ってるんだろ。一流高校からの、また一流の大学、一流の会社、一流の人生、、、、とか。だから戦う価値、あるんじゃないのか』


風晴は安西の出していたグラスの一つだけ麦茶を注いで、まず彼に渡した。安西はそれを受けとる。


『一流一流って言ったって、誰のための、何のための、一流なんだろうな。なんのための戦い、、、誰のための勉強なんだか、僕は時々分からなくなるよ。』


そう言って麦茶に口をつける。ゴクゴクと彼も飲み干して、


『はあっ、、、生き返るな!』


と力強く言った。


『それだけ回復力ありゃ大丈夫だろ』


二人は目を合わせて笑い、皆の分の麦茶を準備しだした。






『せめて君の人生がこれ以上はややこしくならないように、僕は忠告できるよ?』


氷と麦茶の準備はできて、簡単なスナック菓子まで見つけた時、安西は風晴に向かって言った。


『え?』


思わず聞き返す。


『大道兄妹』


安西は風晴の問いは無視して話を進めてる。


『特に大道水樹は気をつけた方がいい。あの見た目だからね。今までも男子とのトラブルは絶えないんだ。彼女は自分から誘うような罠を仕掛けてくるけど、乗ったらダメだ。地獄を見る。』


風晴は目を瞬いて、ただ安西を凝視した。


『僕の父は大道グループの傘下会社の社員なんだ。だから正火斗と水樹の両親を、、、、知ってるってことさ。それでその、、、小さい頃から家の中で色々聞いてたんだよ、僕は。』


安西は口調をはやめて、さらには小声になった。


『正火斗がこの夏休みが終われば引退すると言っているのは本当だ。正火斗は、、、ここに来てこの調査に参加するために残ったような気さえ僕はしてる。彼は、彼は、そう、この事件を調べたがっていたんじゃないかな。()()()()()()()事件を。』


『どうして?』


風晴はしごく真っ当な質問をした。

安西は眉間に皺を寄せて真剣に


『分からない。分からないけど。』


とだけ言った。


風晴はグラスの並んだ盆を持ち上げた。氷がぶつかる音があたりに響く。


『安西、お前ってさ』


安西も同じように盆をもう一つ持ち上げていた。こちらの

グラスの数は少なく、だがスナック菓子の袋も上がっている。彼は風晴の声に顔をあげた。


『多分頭良すぎるんだ。それで、色々わかんなくなってる。』


歩きだした風晴の後ろを、安西も黙ってついてきた。

風晴は言わなかった部分の言葉を、心の中から彼にかけた。


(それじゃ、頭が良い意味あるのかよ。)、、、と。






麦茶と菓子が女子部屋に到着すると、わあっと2人は迎えられた。すぐさま菓子袋は開けられ、グラスの麦茶が皆半分以下になる。


『麦茶は大体いつもあるようにしてるけど。後は出て左に行った先にすぐ自動販売機はある。言っとくけどコンビニはチャリで20分はかかるし、11時には閉まるから。』


風晴はそんな彼らの様子を見て教えた。


『えーーーーー!?それコンビニって言わないでしょ?』


水樹はふくれ顔だ。それでも彼女の顔はキレイだ。


『意外とそう言うコンビニあるんだよ、地方は。で、朝5時くらいからまたやる。』


孝臣が地方あるあるを披露する。

風晴は近隣情報を追加した。


『コンビニよりかはスーパーが近い。歩きで15分くらいで

ミマルマーケットっての。ただし、7時半で閉まる。』


『アイス溶けちゃうじゃん。夏なのに買いに行けないのかよ、、、、、、』


桂木が絶望的な声をあげた。皆も険しい顔をしている。

高校生にとっては非常事態なのだ。

年配者らしく、孝臣は解決策を提示した。


『アイスは溶ける前に道端で食うのさ。こういう田舎はそれがいい!だけど棒付きアイスは最後に気を付けろ。棒周りに残るアイスのバランスが悪いと落ちるぞ。

カップのアイスだって安心はできないんだ。会計の後のサッカー台でお店の善意で置いてある使い捨てスプーンを必ず取ってこなくちゃならない。必ず、だ。それを忘れてみろ、アイスをアイスのうちでは食えなくなる』


『シェ、シェイクになるとか?』


椎名はいくらかでも期待を込めた。


『そんなオシャレに生まれ変わらないぜ?アレ、紙ケースが歪むから、飲むのも難しいし。手べったべたになる。これは絶対。』


風晴は現実を教えた。いかに厳しくとも、だ。


『レジのオバサンはな、3タイプいるんだ。』


孝臣は、指を3本立てて話しだした。


『一つは、"そちらにアイスのヘラ置いてありますからご自由にどうぞー“って、最後に一文で締めくくるタイプ。

これは結構分かりやすいし素直に助かる。

二つ目はお前らも聞き慣れた感のある"アイスにスプーンは御入用ですか?"って尋ねてきて、"いる"と答えると

"台の方からどうぞー"ってなる二文タイプだ。

アレは心理的な引っ掛けがある。コンビニやりとりに慣れすぎてると、店員がもう袋に入れてくれたような気になりうる。うっかり台を通り過ぎてみろ、もう戻れないってのに。』


『それは戻って取っていいから』


風晴は訂正をいれたが、みんなの耳に届いているかは定かではない。


『三つ目のオバサンこそが、問題だ。最後のタイプのオバサンはな、、、、』


風晴は答えを知っている。が、孝臣に全てを任せた。


『何も言わないんだ。』


風晴を除く全員が目を見開く。


『このタイプのオバサンは()()()何も言わないんだ。ただ かしこまって手を前にくんでレジが済んだ客を横目で見送る』


『え?ええ?じゃあ、スプーンは、、、、?スプーンはどうなるんですか?手に入れるための情報は、その人から入手するシステムになってるんじゃないんですか?』


神宮寺が必死にきいた。多分RPG好きなのかもしれない。


『神宮寺、世間はそんなに甘くないんだ。

スーパーのオバサンはな、自力で見つけてこそってことを、私達に教えてくれてる。』


孝臣は無駄にいい感じに締めくくった。


『えーーー!?田舎怖い!!!』

『アイスのヘラ取る、アイスのヘラ取る、アイスのヘラ取って帰る、、、』

『それで、業務違反とか何かにはならないんですか?』

『オレは棒アイスでいいよ!もう!』


あちこちから悲鳴まがいの声があがる。

風晴はなんだかおかしくなってきて、1人口を押さえてうつむいていた。

が、横から視線を感じて目を向けた。


そこで正火斗と目が合った。

麦茶と菓子を持ってきて再度集ったとき、隣りになっていたようだった。


彼は風晴を見たまま、


『田舎のスーパーの注意点は肝に銘じましたよ。

さあ、そろそろ本題に入らないか?』


と皆に言った。


風晴の頭の中で、さっきの安西の言葉が甦る。




"彼はそう、この事件を調べたがっていたんじゃないかな。君のお父さんの事件を。"






書くべきところも書きましたが、結構な寄り道も楽しんでしまいました。次こそ!風晴話します!なんかすみません!

引き続き宜しくお願いします。

追記.スーパーの買ったものを袋詰めする台はホントにサッカー台と言う名称です。

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レジのおばさんタイプ診断。 「いる?いるよね!」で勝手に袋にいれてくる、おせっかいタイプもいますよね。こちらの回答がどっちでも結果は一緒。「でしょ!入れといたから!」「遠慮しないで!入れといたから!」…
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