表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程【改訂完了版】  作者: シロクマシロウ子
過去編・調査へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/145

2人で来た道

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。



大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


宝来総司ほうらいそうじ・・・正火斗、水樹の実父。元陽邪馬市市長。桜田晴臣が行方不明になる同日に転落死。


大河弓子おおかわゆみこ・・・夏休みの間の民宿の手伝い人。


大山おおやまキエ・・・黒竜池によく行く老婆。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵実咲まぶちみさき・・・耕平の妻。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。


 

「ありがとうございました!」


 風晴はワゴンカーから降りて、聖の母親に一礼した。


「こちらこそありがとう、風晴くん。またね」


 聖のお母さんは、風晴に会釈してくれた。

 聖は一度目を合わせただけ。手も振ってよこさないが、風晴はそれが彼の挨拶なのだろうと思った。

 明日の黒竜池リストの調査に、聖も加わりたいと言った。集合時間や内容を伝えるために、2人は車内でLINE交換した。

 バックミラーで、聖のお母さんはそれをチラチラと見ていた。







「おかえり」


 車を見送っていた背中に、門の外からその言葉をかけられて風晴は少し驚いた。

 声の方には安西がいる。ペットボトルのスポーツドリンクを持っていた。風晴はすぐ、彼が自動販売機に行ったのだと分かった。


「課題終わったのか?」


 と聞くと


「山のように出すんだよ、僕らの高校──1、2年には。だから夏休み終わって、課題提出の教科のある前日まで、きっと終われない」


 と安西は苦笑いしながら答えた。


「1、2年って……3年は?」


「ほとんど出てないはず。もう受験勉強は自分で組めってこと」


 は──……と、風晴は息がこぼれた。

 どっちが優しいか分からない。いや、どっちも酷くないか?


 安西に大山家に行ったことを話そうとして、口を少し空いたまま風晴は止まった。


「どうした?」


 安西は異変に気づいた。

 動きを止めて一点を見つめる 風晴の視線を追う。

 そこにはポストがあった。取り出し口から茶封筒の端が、わずかに見えていた。


「手紙? ああ……手紙が来てるよ」


 安西はポストを指差した。風晴に"取ったらいいじゃないか"と言うように。彼は何も知らない。

 風晴は踏み出して、取り出し口を開けた。


 ()()茶封筒が()()ある。


 早朝見つけた物と同じように、“桜田風晴様"とだけある。

 住所や郵便番号、切手もない。差出人は言うまでもなく、

 見当たらない。1通目と全く同じだ。

 風晴はやはり糊付けもされていない封筒口をあけて、やはり3枚に折りたたまれている紙を取り出す。やはり他に入っているものはない。

 風晴の無言の所作に、異様な緊張感を感じたのだろう。安西が


「何? 何の手紙?」


 と聞いてきた。

 風晴は答えず紙を開いて文章を見てから、安西の方に手紙を向けた。読めるように。

 安西は眼鏡に手をやって、紙に顔を近づける。


 "彼女は秘密を持っている"


 そこには一文だけがあった──また。

 安西は手紙から目を外し、風晴に


「これ、どういうこと?」


 と尋ねた。

 風晴は再び、答えの代わりに──朝から尻ポケットに二つ折りで入れていた茶封筒を出した。

 安西が凝視する。(しわ)にはなっているが、同じものだと気づいたのだろう。

 風晴はそこからやはり白い紙を出し、広げる。

 今度は、安西の方が手紙を覗きに来た。


 “お前の母親は嘘をついている"


 二人は顔を見合わせた。


「風晴、これって…………」


「ああ、オレもわけわかんなくなってきた。とりあえず聞いてはみる! ── けどなんかオレ、なんて返ってくるか答えわかるんだよなぁ…………」


 ぶつくさ言いながら、風晴は手紙を素早く たたんだ。門から進み玄関を開ける。安西は後ろから慌ててついてきた。

 台所に母親の姿を確認する。他のことをしているのか帰ったのか、大河さんの姿はない。


「母さん」


 風晴は声をかけた。


「まず"ただいま"でしょ! 聖くん大丈夫だった?」


「大丈夫。母さん、オレに嘘ついてたり秘密ってある?」


 風子は振り返って、息子の顔をまじまじと見つめた。


「あんたは大丈夫? 変なもの道端で食べたんじゃないでしょうね?」


 風晴には、何故か────ホッとした自分がいた。


「いや、それは食ってないから大丈夫。だけど……」


「ケチャップが足りなくて、大河さんスーパー行ってくれてるのよ。バカなこと言ってる暇あるなら手伝って」


 風子はそう言ってエプロンを投げてよこした。

 風晴は後ろにいた安西に


「後で話す」


 と伝えた。安西はうなずいた。

 彼はペットボトルを持ってそのまま2階に向かい、風晴はエプロンを付けて手を洗った。

 ボールの中のひき肉と玉子と玉ねぎ、パン粉を練り始める。


(今日はハンバーグか…………)


 母は無言で牛乳パックを渡してきた。飲めと言うことではない。うちのハンバーグは水を加えたりはせず、パン粉に牛乳を加えて練る。この方が牛肉の風味が強くなる。風晴が目分量で牛乳を注ぎ、止めた。母はそのタイミングにうなずく。

 互いに 分かっていた。

 いつもこうして2人で作ってきたのだから──







 3年の正火斗は、課題がさほど多いわけでもない。

 神宮寺や桂木、水樹に2種類のベルヌーイ定理やら、ファンデルワールス力やら、インパルス信号とデルタ関数について説いたりはしたが、(3人は頭を抱えていた)後はオープンスペースに出て本を読んでいた。内容がひと段落して、正火斗は眼鏡をはずして眉間を揉みほぐした。

 ずっと同じ姿勢でいたからか立ち上がりたくなり、何気なく窓辺に歩いた。

 ちょうど風晴の帰宅と安西とのやりとりが見えた。そのようすから正火斗は、2通目の茶封筒の怪文書が届いたのだろうと察しをつけた。


(それにしても昨夜から早朝に1通。日中に1通。頻度が高い。…………よっぽど身近な人間なのだろうか)


 考えを巡らせていると、不意に正火斗のスマートフォンが震えた。

 知らない番号なら取らないが、表示は"公衆電話"からだった。

 正火斗は画面を見つめていたが、"通話"を押した。出てみる。


「良かった」


 男の声だった。


「オレのスマホからじゃ出ないと思ってた。こっちで正解だった」


 正火斗は切ろうとした。こういうのは相手にしないに限る。だが相手は


「君は宝来総司の息子だよね? 大道は名乗っていても」


 と言ってきた。切ろうとした指が止まる。


「オレは君のお父さんは()()()()と思っている」


 そして 電話の相手は


「オレと組まないか?」


 と言った。


「オレは……」ブツッ


 正火斗は通話を切った。

 しかし──手に持つスマートフォンを見つめる。


(一体誰だったんだろう? それにどうやって 番号を知ったのか……)


 暗くなったその画面はただ沈黙が続いた。







本日もお読みいただきまして、大変ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
男の声だとジャーナリストの北橋っぽいが、それだと気づくよなあ。 変声器は使ってないようだし、AI音声でなければ新キャラか? 単純に声を作った可能性もあるか。 封筒と同一人物っぽいけど……………?
男の声……。 登場人物の欄を2度、いや、5度見くらいしましたw (´ε`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ