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あなたが行く理由1

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。



大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


宝来総司ほうらいそうじ・・・正火斗、水樹の実父。元陽邪馬市市長。桜田晴臣が行方不明になる同日に転落死。


西岡幸子にしおかさちこ・・・桜田家の隣人。


井原雪枝いはらゆきえ・・・風子に屋敷を貸す民宿オーナー。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵実咲まぶちみさき・・・耕平の妻。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。

真淵和弥まぶちかずや・・・耕平と実咲の次男。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。

安藤星那あんどうせいな・・・朝毎新報・新聞記者。


昼ご飯の召集がかかり、風晴達は一階に降りた。

思いがけず、広間が使えた。

北橋と安藤は、どちらも昼ご飯はいらないと出て行ったらしい。2人は情報を得るために駆け回っているのかもしれない。プロの記者達だ。


水樹は


是非(ぜひ)情報を集めてもらいたいものだわ。こっちのためにも。』


と強気な姿勢を崩さなかった。





風子と井原さんが、寿司を取ってくれていた。これも嬉しい驚きだった。予想外のメニューだったので、みんながわぁっとなり、席に着いた。

聖が無反応だったので、風晴は一応隣りから


『生魚が苦手とかあるか?好きなのは?』


と聞くと、


『玉子といくら、、、、食べれる、、、、』


と今日初めて言葉を発したので、みんなは聖の前に玉子の寿司といくら軍艦を集めた。

聖は


『ありがとう、、、』


と礼を述べた。


寿司の昼食では、風晴の母親と井原雪枝と新しい手伝いの大河(おおかわ)弓子が同席した。風晴に、風子は大河を紹介した。


『風晴くんは、お友達達と夏休みを楽しんだらいいよ。あたしはこちらで稼がせてもらっちゃうからさ。娘が今専門学校で、物凄くかかるのよ、色々。』


大河弓子は、そんなことを言う気さくな感じの中年女性だった。井原雪枝と同じくらいの身長だが、横幅はあって、でもテキパキしている感じが伝わってきた。母は助かるだろう。

風晴は


『よろしくお願いします。』


と会釈した。


『真壁さんの歓迎会とあなた方への感謝からお寿司にしたの。みんな本当に昨日はご苦労様でした。』


風子は座りながら頭を下げた。

食べながらだが、周囲も頭を下げてくれた。

井原が、


『まだまだこれからよ。警察がやっと動いてくれて、やっといろんなことが分かってくるかもしれないじゃない。風子さんが1番食べておかないと。』


と、母に寿司を勧めてくれた。

風晴は心の中で彼女に感謝した。







昼食は最後の方でやたらウニが残るとか、正火斗がアナゴのタレの甘さが苦手だと判明するとか、そんなことはあったが無事に終了した。

ミステリー同好会メンバー、、、というか、一流進学校凰翔院(おうしょういん)学園生徒達は課題をやりに2階に上がって行った。

井原はこの後 帰宅すると言っていたが、寿司の桶や醤油の小皿は全て紙製で捨てれば済むものだった。風子と大河で簡単に片付けられるだろう。


風晴は動いた。ただ前を向いて座る聖の元へ行く。


『真淵、オレ大山のおばあちゃんの話聞いてみようと思ってる。大山さん()に、お前も行かないか?』


聖は明確な反応を示した。風晴の方を向く。


『おばあちゃん、、、池に行かないように、、、できる?』


質問までしてきた。


『分からない。正直、行って会っても あんまり話しだってできないかもしれない。でも、もし黒竜池に行ってる理由が聞ければ、やめさせる方法も考え易くなる。きっと。』


聖は立ち上がった。

風晴は、行くという判断だと ()み取った。

案の定、歩き出すと聖はついてきた。








『おばあちゃんはねぇ、10年くらい前から、散歩はしてたのよ。子供の頃から知ってる道だろうから、黒竜池にも行ってたかもしれない。ただ、あの頃は時間決めてて3時に出て4時まで とか。夏は4時半に出て5時半に帰るとか、こっちにも教えて、それで時間通りにも帰ってきてくれてたから。だから問題なくて。こっちも心配なかったの。』


大山家の長男のお嫁さん 和子(かずこ)は、風晴が"夏休みの自由研究で黒竜池の伝説を調べたくて、おばあちゃんから聞ければと思ってきました"と言うと、意外にも快く迎え入れてくれた。

ただ、これは 


『同じ班の真淵聖です。真淵巡査部長の息子さんの。』


と、風晴が聖を紹介したからかもしれない。

和子は


『まあまあ、いつもお世話になって!』


と、聖に深く頭を下げた。

聖は立っているだけだったが、凄く役に立っている。誘って本当に良かったと風晴は思っていた。

それで和子は義母の和室部屋に2人を案内しながら、もう聖におばあちゃんについて話しだしたのだ。


『以前、一度主人と2人だけでおばあちゃんを探したこともあったのよ。"うちのおばあちゃん見ませんでしたか?"って、あちこちに聞いても回ってね。その時おばあちゃん見つけたら、転んで頭から血を流していたの。すぐ病院に連れて行ったけどね、お医者様には"危険な道を歩かせないように"って怒られてしまって。

ご近所からは、、、、あたし達がおばあちゃんを転ばさせただの、石で殴ったんじゃないか だの あることないこと、、、言われてしまってね。』


和子は肩で息をついた。風晴は彼女の気持ちが良く分かった。


『それで、それからはあの人と相談して駐在さんと一緒に探すようにしたの。そしたら、見つけた時どういう状態でも周囲に、、、、分かってもらえるじゃない?

おばあちゃんにも駐在さんにも、申し訳ない考え方だけど、あたしもあの人もおばあちゃんだけをみてる生活はできなくて。、、、、ほんとに、お父さんにはいつもごめんなさいね。』


最後に和子は、聖を見てそう言った。

風晴は聖の反応が不安だったが、聖は和子を見返して


『、、、分かりました。』


ときちんと返した。

風晴は、誰もいなければ拍手していたかもしれない。


やがて3人は一つのふすまの前で止まった。

和子が


『おばあちゃん、高校生の子達がね、黒竜池のことを聞きたいんだって。、、、入りますよ。』


と声をかけてスッとふすまを開けた。


大きな網戸入りの窓が空いていて、扇風機もゆるく回っている。外の明るい日差しも充分入っているのに、

その背景を背負う人物は表情がひどく険しかった。

やや薄くなった白髪を後ろに一つまとめ、いくつもの死斑と(しわ)を刻んだ顔で 大山キエはボソリと言った。



『あの池は、子供を殺す親を許さないのさ。』



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― 新着の感想 ―
推理は小休止ですね。(隠された伏線があったらどうしよう?) お寿司は、家族以外と食べたときに苦手なネタを知るアルアルですね。 割りと偏りある寿司ネタを食べてきたことをそこで初めて知ること多いです。 …
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