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新たなる来訪者達と

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。



大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


西岡幸子にしおかさちこ・・・桜田家の隣人。


井原雪枝いはらゆきえ・・・風子に屋敷を貸す民宿オーナー。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵実咲まぶちみさき・・・耕平の妻。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。

真淵和弥まぶちかずや・・・耕平と実咲の次男。




ところが、民宿の中に入っても、異変は起きていた。


風晴の母親は、すぐにミステリー同好会メンバーと風晴を夕食に通したが、そこは、昨夜使った広間ではなく、広めの和室だった。長テーブルには、食事が配膳され、座布団が8人分敷いてある。

同好会メンバーはとにかく疲れていてどうでも良かったのだろう。どこということなく座って食べ出した。

経営側の人間である風晴は、こうしなければいけなかった理由にすぐに思い当たった。


『新しいお客さんが入った?』


母はすぐさま うなずいた。


『部屋が空いているか電話が夕方2件あって、、、、、それが、両方ともマスコミ関係者みたいなのよ。中年の男の人が1人さっきもう到着したの。』


風晴の母、風子の話に、食事していたメンバーの はしが止まった。1番最後に入ってきた孝臣も足を止めた。


『孝臣さん、ごめんなさい。部屋はできるだけ離したところにしたし、お風呂は時間制にしました。でも、階段やオープンスペースでは、生徒さん達と顔を合わせてしまうかもしれない。』


『大丈夫です。おばさん。』


水樹の声が強く響いた。


『マスコミが2社、、、、面白いじゃない。彼らの集めてるものを、こっちがもらえるチャンスもあるってことだもの。』


『水樹ちゃんは、またそういうプラス思考だね。好きだなぁ、オレはそういうの。』


桂木が食事を再開しながら言った。


『向こうは私達から奪いにくるわけですよね。かわせるでしょうか?、、、、、プロの方の話術を。』


椎名は少し不安なようだ。


『頭を回転させようよ、椎名。僕達の武器だ。』


神宮寺は、左手にスプーンを持って白米をお腕から食べている。右手は今日はまだ当然痛いのだ。孝臣からだいたいの連絡を受けていた風子は、スプーンをつけておいてくれた。

安西は はしを置いて考え込むように言った。


『"2社"ここに来るってところが僕らの利点に働くかもしれない。お互いに競わせるようにでも、、、、できれば』


正火斗は最後言った。


『なるべく2人以上で行動するようにしよう。一対一で詰め寄られれば、不要なことを漏らしてしまう可能性も上がる。』


ミステリー同好会メンバー達は部長にうなずいた。


ハア、、、と、顧問は大きなため息を漏らした。


『お前らはなぁ、大人を手玉に取ろうとするなよ!』


『はーい!!!』


全員が素晴らしい返事をした。

孝臣は頭を抱えた。


風子はクスクスと笑って、


『心強い味方ね。』


と言った。


『まあ、オレも、西岡のおばさんと対峙するより気が楽かも。』


風晴が言うと、全員が笑った。


が、風子は笑わず、眉間(みけん)にしわを寄せた。


『実は西岡さん、"お客様今年は多いだろうから手伝いにきましょうか"って、さっき言いにきたのよ。"風晴くんも

風子さんもほら、今年は色々大変でしょ"ですって。』


風晴は恐れを感じた。ハイエナは巣穴にも入ろうとしていたのだ。

母は、顔を上げて続けた。


『大丈夫よ。さっき井原さんに連絡したら、手伝いにふさわしい人を1人明日連れて来て下さるって。』


風晴は母に深くうなずいた。

良かった。井原さんなら、ちゃんとした人を紹介してくれるだろう。


安心した風晴と孝臣も食事の席に向かおうとしたが、風子に


『ちょっと』と


引き留められた。

風晴と孝臣は見合ってから、風子について廊下に出た。

3人だけでの 何か、話しがあるのだ。


母は神妙(しんみょう)な顔つきで言った。


『孝臣さんから紹介してもらった弁護士さんから連絡がありました。晴臣さんが風晴に残した生命保険の総額は3億2千万円になるそうです。』


ちょっと 呆気(あっけ)に取られながらも、なんとか孝臣は


『そうですか、、、、。』


と返した。


風晴は、一気に食欲が無くなった。







翌朝、風晴は異様なほど早起きをしてしまった。母もまだ起きない頃だ。

足音を立てないように廊下を歩き、台所に向かう。

シンクに立って蛇口をひねり、バシャバシャと顔を洗った。冷たい水にいくらかスッキリした気持ちになり、タオルを取った。


早く起きたというよりも、ろくに眠れなかった。


絡んだ白骨体のいびつな形と、頭蓋の弾丸の(あと)

目を閉じては浮かんできて、黒竜池の伝説と重なってか、

それは風晴に手を伸ばして来た。そうして暗い闇に引き込まれそうになって、うなされてすぐ目覚めることを繰り返した。

生命保険の総額が上がったことも、気を(たかぶ)らせていた。人生で一生かかっても稼げないだろうと思っていたような金額を、ポンと渡されるなんて、一体誰が想像していただろう。


カタン と音がして、風晴はビクリとした。


音の方を向くと、正火斗が立っていた。流石に彼も眠れなかったんだろうか。


『おはよう。新聞は郵便受けかな?』


彼は聞いた。そうか。確かに昨夜のことの記事がどうなっているのか気になる。


『悪い。まだ取ってきてない。』


風晴は答えた。

正火斗は


『いや、郵便受けに届いてるかも怪しい時間じゃないか』


と言った。


『東京じゃ世帯が多くて遅いんだろ?でも新聞取る家も減ってんのかな。何にせよ、ここは暗いうちに届く。4時くらいには。』


『早いな。じゃあ、入っているかもしれない。』


彼が玄関に向かって行くのが分かった。風晴も後を追った。





真夏だが、外はまだようやく しらいできた程度の明るさだ。玄関から外に出て、2人は門に取り付けてある木製の郵便受けを見に行った。新聞はやはり届いていて、正火斗が下向きの取り口から引き抜いた。

と、ポトリと、1通の茶封筒が落ちた。


(手紙が来てたのか。母さん、取り忘れたのかな。)


風晴は何気なく拾い上げた。が、宛名面を見て違和感を感じた。


"桜田風晴様" とだけあって、住所や切手もない。

字はパソコンで打ったような活字だ。

そもそも、自分の名前で封書が届くのだってあまりないことだ。せいぜい塾紹介のダイレクトメールくらいなのに。


風晴が凝視していたからか、正火斗が


『どうかした?』と


聞いてきた。

風晴は黙って茶封筒を正火斗の方に向けた。

彼はそれだけで異変を察知したのだろう、一段低い声で


『僕が開けようか?』


と言ってくれた。

風晴は首を振って、自分で封を切った。これくらいで怖気付(おじけづ)くのは みっともない。


封筒の中には、一枚の紙が三つ折りになって入っていた。

風晴はそれを取り出す。他には何もない。

風晴が紙を広げ、2人はそれを読んだ。

宛名と同じパソコンの書体。


正火斗は険しい目をした。

風晴は目を見張った。


手紙には 大きく一行だけが書かれていた。




"お前の母親は嘘をついている"





ここまでで黒竜池編終了です。読んで頂いてありがとうございました。

少し休んで、次の本編は、正火斗・水樹・安西の関係 と 黒竜池の行方不明者について調べる 総じて 過去編 の予定です。

過去編に入る前に、断章・道を外れし者の叫び というエピソードが多分入ります。

随時活動報告で知らせますので、引き続き よろしくお願い致します。お休みは5日くらいの予定です。

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― 新着の感想 ―
新聞配達4時は早いな。 あれって、全部が全部その場で印刷している訳じゃなく、輸送に頼る田舎もあって、チラシを入れる朝刊だと早くても4時半から5時に出発だったわ。 終わるのが6時半から7時くらい? ちな…
半分くらいでいったん明日に置いとこうかと思ったんですが、思わず一気に読んでしまいました。 黒竜池編面白かったです♪そして、水樹ちゃんのことを誤解していてごめんなさいw そして、やっぱり風晴くんは優しく…
最後の嘘情報が、新たな波紋を呼ぶ感じで良い引きですね。 保険金問題も再燃しましたし、ドロッドロになりそうな予感……。 (。ŏ﹏ŏ)
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