少しばかりの寄り道を
ー登場人物紹介ー
◆桜田風晴・・・田舎の農業高校2年。
◆桜田風子・・・風晴の母親。民宿を営む。
◆桜田晴臣・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。
◆桜田孝臣・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。
◆大道正火斗・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。
◆安西秀一・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆桂木慎・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。
◆神宮寺清雅・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
◆椎名美鈴・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。
麦茶と菓子が女子部屋に到着すると、わぁっと2人は迎えられた。すぐさま菓子袋は開けられ、グラスの麦茶が皆半分以下になる。
「麦茶は大体いつもあるようにしてるけど。後は出て左に行った先にすぐ自動販売機はある。言っとくけどコンビニはチャリで20分はかかるし、11時には閉まるから」
風晴はそんな彼らの様子を見て教えた。
「え────!? それコンビニって言わないでしょ?」
水樹はふくれ顔だ。それでも彼女の顔はキレイだ。
「意外とそう言うコンビニあるんだよ、地方は。で、朝5時くらいからまたやる」
孝臣が地方あるあるを披露する。
風晴は近隣情報を追加した。
「コンビニよりかはスーパーが近い。歩きで15分くらいで
ミマルマーケットっての。ただし7時半で閉まる」
「アイス溶けちゃうじゃん。夏なのに買いに行けないのかよ…………」
桂木が絶望的な声をあげた。皆も険しい顔をしている。
高校生にとっては非常事態なのだ。
年配者らしく孝臣は解決策を提示した。
「アイスは溶ける前に道端で食うのさ。こういう田舎はそれがいい! だけど棒付きアイスは最後に気を付けろ。棒周りに残るアイスのバランスが悪いと落ちるぞ。
カップのアイスだって安心はできないんだ。会計の後のサッカー台でお店の善意で置いてある使い捨てスプーンを必ず取ってこなくちゃならない──必ず だ。それを忘れてみろ、アイスをアイスのうちでは食えなくなる」
「シェ、シェイクになるとか?」
椎名はいくらかでも期待を込めた。
「そんなオシャレに生まれ変わらないぜ? アレ、紙ケースが歪むから飲むのも難しいし。手べったべたになる。これは絶対」
風晴は現実を教えた。いかに厳しくとも、だ。
「レジのオバサンはな、3タイプいるんだ」
孝臣は指を3本立てて話しだした。
「一つは"そちらにアイスのスプーン置いてありますからご自由にどうぞー“って、最後に一文で締めくくるタイプ。これは結構分かりやすいし素直に助かる。
二つ目はお前らも聞き慣れた感のある"アイスにスプーンは御入用ですか?"って尋ねてきて"いる"と答えると"台の方からどうぞー"ってなる二文タイプだ。
アレは心理的な引っ掛けがある。コンビニやりとりに慣れすぎてると、店員がもう袋に入れてくれたような気になりうる。
うっかり台を通り過ぎてみろ、もう戻れないってのに」
「それは戻って取っていいから」
風晴は訂正を入れたが、みんなの耳に届いているかは定かではない。
「三つ目のオバサンこそが問題だ。最後のタイプのオバサンはな……」
風晴は答えを知っている──が、孝臣に全てを任せた。
「何も言わないんだ」
風晴を除く全員が目を見開く。
「このタイプのオバサンは堂々と何も言わないんだ。ただ かしこまって手を前にくんでレジが済んだ客を横目で見送る」
「え? ええ? じゃあ、スプーンは…………? スプーンはどうなるんですか? 手に入れるための情報は、その人から入手するシステムになってるんじゃないんですか?」
神宮寺が必死にきいた。多分RPG好きなのかもしれない。
「神宮寺、世間はそんなに甘くないんだ。
スーパーのオバサンはな、自力で見つけてこそってことを私達に教えてくれてる」
孝臣は無駄にいい感じに締めくくった。
「え────!? 田舎怖い!!!」
「アイスのスプーン取る、アイスのスプーン取る、アイスのスプーン取って帰る…………」
「それ業務違反とか何かにはならないんですか?」
「オレは棒アイスでいいよ! もう!」
あちこちから悲鳴まがいの声があがる。
風晴はなんだかおかしくなってきて、1人口を押さえてうつむいていた。
だが横から視線を感じて目を向けた。
そこで正火斗と目が合った。
麦茶と菓子を持ってきて再度集ったとき、隣りになっていたようだった。
彼は風晴を見たまま
「田舎のスーパーの注意点は肝に銘じましたよ。
さあ、そろそろ本題に入らないか?」
と皆に言った。
風晴の頭の中で、さっきの安西の言葉が甦る。
"彼はそう、この事件を調べたがっていたんじゃないかな。君のお父さんの事件を"
書くべきところも書きましたが、結構な寄り道も楽しんでしまいました。
次こそ!風晴話します!なんだかすみません!
引き続き宜しくお願いします。
追記.スーパーの買ったものを袋詰めする台はホントにサッカー台と言う名称です。




