25話 目を覚ました
「では」
エルが前に進み王の近くで膝を折った。
今から治癒魔法を行おうとしてくれている。
しかし、その時だった。
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
王が苦しみ始めた。
「エル、頼む」
彼女の震える右手に手を添える。
「俺が付いてる。お前なら出来るはずだ」
「………すごく安心できます」
深呼吸1つ。
そうして彼女は手を動かし始めた。
「癒しの神よ。我が声に答えて………穢れを浄化したまえ」
エルが詠唱した。
すると光が刺した。
窓の外から眩いばかりの1本の光が入り込んできてそれが王の体に当たった。
「ギャァァアァァァア!!!!!」
そんな音が聞こえる。
よく見ると王の体から穢れが抜けているように見える。
何と言うか亡霊が断末魔を上げながら天に昇っていくようなそんな光景だった。
そうしてしばらく俺達はただ見守っていた。
「………ここは………」
やがて王が体を起こしたのだった。
「や、やりました!」
「よくやったぞ!エル!」
力一杯に彼女の細い体を後ろから抱きしめた。
「ディ、ディラン?!」
驚いているようだがそんなこと気にしてられない。
「よく、やってくれたな」
「本当ですよ。1時はどうなるかと」
アマレウスもシエスタもほっとしているようだ。
「ふん。ディランさんの力のおかげだから私でもできたもーんです」
ティナは相変わらず認めていないらしい。
彼女らしいと言えばそうだが。
「これがエルフの力なんですね」
「すごい………」
反対にユミナとレイはただただその力の強さに驚いているだけだった。
「………お前ら俺の前で何をそんなに騒いでいる」
その時王が眠そうな目で俺達にそう問うてきた。
「王。ここは私が説明を」
アマレウスが1歩踏み出し今までの経緯の説明を始めた。
「ふん。そういうことか。道理でな」
シドと名乗った王は鼻を鳴らすと口を開いた。
「体調がよくならないと思っていたがまさか毒を盛られていたとはな。万死に値する」
「ルクスブルクをどうなさいますか?」
「万回殺す。それだけだ」
そう言い寝台から立ち上がると腰に手を当てたシド王。
「今までの間よくもまぁ好き勝手やってくれたな。あの外道は。殺して殺して殺して殺してやる。それより俺を治したのは誰だ?」
「そちらのエルフでございます」
「ふむ。貴様か。中々美しい顔をしているな」
言い寄られるエル。
「俺の妃にしてやる」
そう言われていたが俺の後ろに引っ込むエル。
「ご、ごめんなさい」
「まさか振られるとはな」
しかし、そうされてもふははははと豪快に笑うシド。
「貴様には何処か俺と同じ空気を感じるよディランとか言ったな?」
「あぁ」
「貴様は俺のライバルにしてやる。喜べよ」
それは喜んでもいいのだろうか。
そんな馬鹿なことを考えてみる。いや、先に話を進めよう。
「これからどうするつもりなんだ?」
「ふむ。お前らだけで先に部屋を出るがいい。そうしてルクスブルクにこう告げよ『俺は死んだ』と。その後何かしでかしたら俺が君臨してこう告げる。『逆賊は貴様だバカタレ。ルクスブルクを捕らえよ、と』自分のした事の罪の重さを自白しその重さを分からせる」
そう言うと俺達に再度視線を送る王。
「頼んだぞ」
「はい。承知しました」
※
ロビーまで戻ってきた俺達。
「どうだったかな王のご容態は」
近付いてきたルクスブルクはそのままアマレウスに訪ねた。
「………亡くなられました」
「亡くなられた?まさか………貴様ら殺したのか?!えぇい!皆の者!この者たちを捕らえよ!王を殺害したと自白したぞ!」
ルクスブルクの声。それと同時に集まってくる他の貴族たちの視線。
その中には近衛兵の物もありガチャガチャと音を鳴らしながらこちらに近付いてきていた。
「ご同行願います」
その中の一際強そうな男近衛騎士団長だろうか、がそう切り出してきたその時だった。
「たわけ。ご同行願うのはそいつらではない」
コツコツと音を鳴らしながら階段を降りてくる音が聞こえる。
それを理解不能な顔で見つめるルクスブルク。
「お、王………どうして………」
「どうして?俺が生きていると都合が悪いのかブタ。俺に毒を盛って散々好き勝手してくれたらしいな。ルクスブルクと宮廷医療師よ」
場は混乱を極める。
死んだと報告された王が直ぐに現れたからだ。
しかしその一方俺は笑いを堪えるのに必死だった。
ルクスブルクの顔に焦りが出ていたから。
「貴様らの言葉は聞いた。俺が死んだことを一切疑わずに指示を出したのは俺が死ぬことを知っていたのだろう?」
「そ、それは………」
「言い訳しようとするなよこのクズ。兵士共その男を捕らえよ!」
王の一言が全てを覆した。
「は、はい!」
「くそ!」
しかしすぐ様に逃げ出そうとするルクスブルク。
それを追いかける近衛兵達。
なのだが
「ぐあっ!」
ザン!
近衛兵の鮮血がその周辺に飛び散った。
そこに予想外のものが現れた。
近衛兵を薄い紙を切り裂くように殺したのは………
「ルクスブルク卿。お先へここは俺が」
「頼んだぞ!ガルディ!」
そこに来たのはルクスブルクの犬だった。
狂犬は俺だけを見てその目をギラギラと光らせている。
そうして噛み付いてきたガルディ。
それが俺とこいつの戦いの始まりだった。




