26話 引き算
「おらぁ!」
剣を叩きつけてくるガルディ。
それをナイフで受け流した。
「遅い」
それで生じた隙。
首にナイフを突き刺した。
「は………?」
ナイフを抜くとそのまま蹴り倒す。
俺は鮮血を浴びるが気にしたことではない。
ガルディの血は床を濡らしていく。
その中で横たわる奴の体。
どうやら何が起きているのか理解できないらしい。
「殺しで俺に勝てると思うな。狂犬風情が」
魔法で凍らせてから砕く。
それで塵一つ残らなかった。
「ば、ば、馬鹿な!監獄出身のガルディが一瞬でやられただと?!」
どこ出身だろうが毎日殺してきた俺には及ばないだろう。
俺以上に罪を重ねた奴はそういないはずだから。
ティナ達をその場に残して叫ぶルクスブルクを追いかける。
「凍れ」
相手の足元に氷を出現させてそれで動きを止める。
「ひ、ひぃいぃぃ!!!!何なんだお前!!!!」
「━━━━ディラン・アルゲイスト。貴様の殺した一家の生き残りさ」
※
ルクスブルクは地下牢に放り込まれた。
話を聞きたいのは山々だがあいつには罪が多すぎるので先にアマレウスとシドが聞いている。
俺の復讐は終わった。
「ディアン………」
王城の庭園で空に向かって呟いてみた。
お前が生かしてくれたお陰で俺はあいつに復讐できた。でもまだ真実には届いていない。
「………何故あの震災は起きたのか」
俺はまだそれを知れていない。
本当に口封じのために殺されたのだろうか。
ならばどうやって。
「そういえばあの時は俺とディアンとユミナで買い出しに行ったよな」
両親が行かせたのだ。
もしかしたら俺たちを助けるために行かせたのだろうか。
今となっては分からないが。
恐らくそうだろう。
「あんまりすっきりした顔してないね」
そんな俺の横にレイが並んできた。
「復讐って終わったあとは魂が抜けたみたいになるみたいだけど」
「別に復讐のためだけに生きたわけじゃないってのがでかいんじゃないか」
俺にとっての復讐は目的の一つでしかない。
それだけが目的ではなかったからかもだろうな。
「俺はまだ真実に辿り着けていない」
「真実って何なの?」
「この島が浮いている本当の理由。それと桜花病について、だ」
そうして話していた時。
「ギギャァァア!!!!!」
声の聞こえた方上空を見るとワイバーンがいた。
「凍てつけ」
こちらに向けて滑空してくるワイバーンに向けて氷の弾を飛ばした。
瞬時に氷り俺のすぐ横に墜落したそいつ。
既に死んでいる。
「それと今は俺は幸せだと思ってるよ」
「幸せ?」
「あぁ。レイ達といると悪い気はしない。幸せに生きてくれ。兄との約束でもあるんだよ」
「私といると?」
「そうだな」
空を見上げる。
それにしてもワイバーンがこんなところにくるなんて珍しいな。
普段は人の居ないようなところにいるのに。
「まだ何か起きようとしてるんだろうか」
「嫌なこと言わないでよ。私もディランといると楽しいのに」
俯くレイ。
「悪かったな」
「私の桜花病治るのかな」
「それもなんだよ。桜花病が結局何なのか俺もわかっていない」
だがこれの研究に莫大な私財を使ったルクスブルクなら何か知っているかもしれない。
「今はただ待つことしか出来ない」
「そうだね」
俺の手を繋いできたレイ。
「どうしたんだ?」
「何となく繋ぎたくなってきたから」
頬を赤らめるレイ。
「なら私も繋ぎたいから繋ぎますー」
その反対側に来たティナ。
「私今ディランさんと………繋がってます」
また息を荒げようとしていた。
「今夜は逃がしませんからね」
「………」
凄まじいことを言われた気がするのだが気のせいだろうか。
※
夜俺も地下牢に呼ばれたのでルクスブルクの前まで来た。
「さて、全部話してもらおうかルクスブルク。貴様が施設で何をしていたのかを」
シドの問いかけ。
「私は何も。黒爪の生成だけですよ」
「やはり黒爪は桜花病罹患者の成れの果てだったのか」
アマレウスが呟く。
そこはやはりそうだったらしい。
「とは言え真の目的はそこではありませんでしたがね」
「どういうことだ」
「私はこの国の存続を目指していただけですよ」
「それがどうして黒爪に繋がる」
シドとルクスブルクの会話を黙って眺める。
「通常このリーヴァスには引き算しか用意されていないのですよ」
「引き算?」
「シド王はご存知ないのですね」
皮肉げにクックックと笑うルクスブルク。
「この浮遊島を浮かせているのは巫女ではありません」
「何だと」
やはり巫女ではないのか。
「何だと思いますか?」
「そんなもの知るわけないだろ。答えよ」
「これを聞くともう戻れませんよ?もう何も知らないで押し通せませんよ」
俺達を見て皮肉げに笑うルクスブルク。
何でこんな笑い方が出来るのだこいつは。
「ここから東の森の億に滝があります。その滝の裏側には洞窟が存在します。その先にあなた方が知りたがっているものがあります。即ちこの浮遊島を浮かせているものが」
それを聞いて俺を見るシド。
「行ってくれるかディラン」
「あぁ」
快諾する。
なんだか嫌な予感がするが行かないことにはどうしようもない。
そう答えるとシドはもう一度ルクスブルクを見た。
「引き算に関しては後でまた聞く」
「えぇ、お待ちしていますよ。あなた達の顔に絶望の色が浮かぶのが今から楽しみだ」




