23話 話し合い
次の日俺はエルとレイを連れて監獄に戻ってきていた。
長年暮らしていただけあってこの監獄の空気は懐かしさすら感じるほどだ。
相変わらずゴミは当然のように散らかされて死体はゴロゴロ。
素敵な場所だな。
「よう」
「あぁ。偶然だな」
関所から出てきたところ偶然ジードに出くわした。
「上級国民様がこんなところに何の用だ。それと隣の2人はどういう意味だ?」
「お前に話がある」
怪訝な顔をするジードだが俺の言葉に頷いてくれた。
そうして移動する。
場所はいつもの場所だ。
「酒と煙草だ」
「どちらもいらん」
「そうか。なら俺だけでも」
俺の前に置いたそれらを自分の前に起き直すジード。
彼がソファに身を鎮めるのを待ってから口を開く。
「久しぶりの挨拶に来たわけじゃないのは理解できるよな」
「もちろんですとも!で、何の用なんだ」
隣にいるエルの肩に手を回して抱き寄せた。
「ディ、ディラン?」
顔を赤く染めるエルとは対象的な反応を見せるジード。
「………お前正気か?」
怪訝な顔をする。
理由はもちろん俺が感染すると言われている行為をしたからだろう。
桜花病は接触することで感染すると言われていた。
「正気だ。俺はこいつとは何度も触れ合った。それこそ桜花病が感染すると言われている接触もした。だが感染はしなかった。それこそ初めて触れ合ったのはお前に任務を指示された日だ。それ以降も触れ合ったが感染している兆しはない」
「………続きを話せ。お前が例え自暴自棄になったとしてもとち狂うような奴じゃないことは俺が1番理解している」
一応は俺の話を信用してくれるらしい。
続きを話そうか。
「桜花病は感染しないと思う。そしてもう1つ。今出回っている桜花病の噂は全てデマだ」
「何だと」
流石に驚きを隠せないらしいジード。
無理もないだろう。
続きを話そうか。現状の情報をまとめるいい機会でもある。
「それから10年前の震災。あれもまた自然に起きたものじゃない。人為的に引き起こされたものである可能性が高い」
「証拠は?」
「俺は貴族の家に生まれた。だが親父が怪しい貴族に探りを入れた結果3区に落とされた。それからしばらくしての地震だ。これが偶然と考えられるか?ちなみに他に探りを入れた貴族も皆闇に葬られた」
「………」
「もう1つ確認したいことがある。ジードいいものを見せられるかもしれない同行してくれないだろうか」
「構わんよ」
そう言い立ち上がるジード。
「お前がそこまで言い切るような何かを見つけたってことだろう?詳しく聞かせてくれ」
※
3区にやってきた俺達はかつて海に飲み込まれた地区まで来ていた。
災害以降ここに来るのは初めてだ。
「ひでぇなこりゃ」
ジードがそれを見て呟いた。
今まで普通に道が続いていたのにとある地点を境にそれがプツリと途切れている。
後は真っ白な空が見えるだけ。
そこから1歩踏み出せばお空のお星様になれるという訳だ。
実際震災で全てを失い壊れた人間がここに飛び込むのは珍しいことではない。
「とまぁ見せたいのはこれじゃない」
そう言って近くにあった廃墟を指さす。
この辺りは既に誰も住んでいない。
当たり前だ。こんな死に近い場所には誰も住みたがらない。
「ここは?」
「アルゲイスト家の2つ目の家みたいなものだ」
ドアノブを回してみるがやはり鍵がかかっている。
針金を取り出すと鍵穴に差し込んで開けて中に入る。
俺の考えが正しければ………ここには何かあるはずだ。
俺もここには来たことがない。
だが何となく分かるのだ。
「大切な情報はバックアップを取っているだろう。親父が慎重ならこの家に調べた事が残っていると思う」
逆に何も残していなければ完全に空回りだが。俺は親父を信じている。
この家はほぼ使っていなかったからルクスブルクの私兵も来ていないだろう。
荒らされてないように見えるし。
「手分けして探そう。何か見つけたら教えてくれ」
全員で捜査をすること1時間。
食堂に集まった。
「なにか見つけか?」
首を振る3人。
だが俺は見つけた手帳をみんなに見せる。
「中を見ていくか」
パラッと1枚目を捲った。
「マジかよ………」
読み終わった時ジードですら信じられないものを見たような目をしていた。
「だが、事実だ。これは親父が探し出してくれた真実」
辿り着けた真実は俺とはさほど違わないらしいがそれでも1つ知れたことがある。
「なら、この島は何に浮かされてるんだ?」
この手帳にはこの島を浮かせているのは巫女ではないと確かに明記されていた。
おかしいと思っていた。
巫女がこんな巨大な島を浮かせ続けられる訳が無い。
「それは分からない。でもこの国が何かを隠しているのは分かるだろう?」
「それは分かるが」
「ジード。頼みがある」
そう言い彼の目を見る?
「何だよ」
「有事の際は力を貸して欲しい。前に会ったアマレウスを覚えているか?」
「あの貴族だろ。覚えてるよ」
「彼は今とある貴族を止めるために最悪の場合武装蜂起も辞さないと言っている。その時は全面戦争になるだろう。そうなった場合………力を貸して欲しい。監獄やそこに暮らす住民たちを守るためにも」
こちらの話もしておこうか。
「この国は監獄を既に見捨てている。それはアマレウスにも聞いた。理由を言うとな。地震を起こせる場所は恐らく選ぶことが出来るんだよ。あの震災だってそうさ。いずれ消える監獄に支援する必要なんて、端からないんだよ」
「………今更様子を見る必要も無いってことか」
残念だがそういう訳だ。
今更顔色を見て武器を取らないなんて馬鹿げている。
「その時は頼めるか?」
「あぁ。俺は監獄の王としてお前たちに協力しよう。その時は指示を出してくれ。監獄は俺が救おう」
その目は監獄の王として相応しいものに見えた。




