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22話 信じることにした

 そうしてまた戻ってきた図書室。

 相変わらず誰もいない陰気な場所だ。

 しかし話すのには都合がいい。


「2人ともどうしたんだ?」


 血相を変えたから訊ねてみた。

 アルゲイストというのが何か悪いのだろうか。


「ディランはお父様がどんな仕事をされていたかなどの話は聞いたことはあるか?」

「いや、ないが。かつて貴族だというのは聞いたことがあるが」

「アマレウス様」


 俺を挟んでアマレウスとシエスタが意味深げな視線を送り合う。

 そうして頷いたアマレウスは俺を見て口を開く。


「………ディラン。落ち着いて聞いて欲しい。君のお父様、アルゲイスト卿はルクスブルクに探りを入れていた貴族の1人だ」

「………何だと」

「ホントのことだ。それがバレて彼は咎められた。結果が3区落ちだ」


 俺は初め1区に住んでいたとは聞いたことがあるが物心着いた時には3区だった。

 その理由が………これか。


「あの地震は本当に人為的なものかもしれない」


 アマレウスが多真面目な顔を作った。


「ディラン、これから向かいたい場所がある。来てくれるか?」


 首を捻る俺を連れて彼は王城を出ていく。



「何か思い出せないかい?」


 アマレウスが連れてきたのは廃墟だった。


「ここは君が生まれ育ったはずの家だよ。アルゲイスト家だった場所」

「………何も思い出せない」


 固く閉ざされた門は入れそうにない。

 入るにしてもこんな夕方からは入りにくい。

 見るだけでは何も思い出せない。


「ディラン。一旦帰ろうか。それから話をしよう」


 頷いた俺はアマレウスの言葉に従うことにした。

 ………彼といれば俺はやはり真実に辿り着けるかもしれない。

 思ったことがある。


 自分に探りを入れようとした貴族を全員闇に葬ってきたというルクスブルク。

 それが俺たちアルゲイストを見逃すわけがないということ。

 そうなったら………大消失はあいつが引き起こした可能性まで出てくる。

 とても許せたものでは無いな。


「ディランこの際だから言っておく。お互い隠し事はなしでいかないか?」


 屋敷に戻った後食堂に集まった俺たち。

 アマレウスが最初に口を開いた。


「俺がまだ何か隠しているとでも言いたげだな」

「いや、そうは言っていない。だがそう言うということは何か隠し事があるのではないのか?」


 鎌をかけられたらしい。

 なるほどな。

 惚けることもできるがここはもう腹を割った方がいいかもしれないな。


「別に隠してるわけじゃない。でもまだ話していなかったことを話そうか。桜花病は感染しないと思う」


 そう言うと立ち上がる。


「どういうことだ?」


 アマレウスの言葉にすぐ答えずに食事中のエルに近付くと背後から両肩に手を置いた。


「こいつは桜花病だ」

「え?」

「それは、本当なのですか?」


 アマレウスもシエスタもまさかというような顔をする。


「本当だ。だが色々試してみたがこいつの病気は俺には移らなかった。それがどういうことか分かるか?今出回っている桜花病についての話は全て嘘だ。ここからが問題だが何故宮廷医療師はこんな嘘を流したのか、ということ。あんたなら何か知ってるんじゃないのか?」


 アマレウスに目を向ける。


「それからそっちに座っているレイは施設からの生還者だ。中では悲惨な実験が行われていたらしい」


 一旦息を吐きアマレウスに目をやる。


「俺は腹を割った。今度はお前が割る番だぞ」

「………桜狩りはどうしようもないが衛兵には桜持ちの捜索は適当にさせておくことにしよう。まさかそんなことに使われていたとは………」


 アマレウスの悲痛な顔。

 まさかとは思いつつも本当に治療している可能性も捨てきれなかったのかもしれないな。


「私はルクスブルクを王の座から引きずり下ろしたいと思う。勿論貴族としても下ろして制裁を加えるつもりだ。そのためには武装蜂起も辞さないつもりだ」

「私もディランさんを独占するなら武器を取りますよ」


 そう言ってティナはフォークを天に掲げた。

 それを見て張り詰めていた空気が緩んだ。


「ど、どうして笑うんですか?」

「いや、お前何の話をしてるのか分かってんのかなって」

「ほんとにですよ。緊張感のない人です」

「ほんとに面白い人だね」


 エルやレイすらもくすくす笑い始めた。

 いや、今のは本当に面白かった。


「アマレウス後でまた話そう」


 しかしこの調子でまた話をできるとも思えない。

 後で彼とは話すことにしよう。




「一応ジードにも話を通しておこう」


 アマレウスと別室で会話する。


「ブラッディキャットは強力してくれるだろうか」

「監獄の王だ。それに俺の親友でもある。監獄がやばいと分かれば監獄と住民を守るためにも立ち上がるだろう」


 あいつはそういう男だ。


「あの人は変態ですけど頭としては優秀ですからね」


 何故かティナが胸を張っている。


「何せ私のディランさんの腕を見込んで組織の犬にした才能は認めてあげても良いかもしれません」

「それは先代の行いだがな」


 あくまで俺とブラッディキャットの関係というのは続いてはいるが俺を犬にしたのはやはり先代だしジードは先代ほど俺を使わなかった。

 俺が外部の人間だからだ。


「とまぁそんな訳で頭としてはかなり優秀だ。民を生かすためにも動いてくれるだろう」

「それは心強いな」

「魔法を使える者もいるし何より監獄の環境は厳しくそれに鍛えられた。どんな苦境でも乗り越えてくれるだろうさ」


 そう答えて椅子から立ち上がる。


「もう少しで真実に辿り着けるだろうか。俺は復讐出来るだろうか。兄の約束を果たせるだろうか」

「全部果たせるはずだ」

「そうですよ。ディランさんならきっと」


 2人の返事を受けて顔が綻んだ。

 そうだな。

 きっとやり遂げられるはずだ。


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