第五話
――結婚式が終った。
しかし、玉座の間はいまだ賑やかである。
僕らはと言うと......
「ヴィレリア、どこに行くんだ?」
「どこって......もちろんわたしたちの愛の巣ですわ♡」
......ようするに、寝室に戻ると言うことか。
僕らの関係はすっかり変わってしまった。
つい先日までは共に魔王を討とうと旅をしていた勇者と聖女。
それが、今では――。
「......夫婦、か」
「あら?今更婚姻は取り消せはしなくってよ?」
「分かっている。」
そう返事をすると、そこからは無言で歩く。
部屋につくと、ヴィレリアは明かりをつけ、僕の胸に頭を預けてきた。
「これで......これで手に入れたいものがすべて手に入りましたわ。そうだわ!"ルール"を決めませんか?」
「......"ルール"?」
「ハイ♡」
ヴィレリアは満面の笑みを浮かべ、"ルール"をいくつかあげ始めた。
「まずは、わたくしの許可なくこの部屋を出ないこと」
「......それはペットだからか?」
「もちろんですわ♡」
まさかの即答である。
「次に、お食事はわたくしと共にとること!そして、寝る時も一緒!!」
「......その二つはそんなに重要か?」
何だかこのルール、頭が痛くなるような内容だぞ......
そう思ったのも束の間、次のルールから様子がおかしくなった。
「まだありますわ。リオネル様がケガをしたら必ずわたくしに言うこと。わたくしが絶対治しますわ」
「......」
「これが、最後。......わたくしより先に死なないこと」
「......それが本心だな?」
ヴィレリアは何も言わない。
――何故、そこまでして......
「......僕は、君にそんな風に思わせることをした覚えはない」
「......はい。」
「それに、僕らを騙したこと、魔王と繋がっていたこと、鎖でつないだこと......全部受け入れることは出来ない」
そう言うとヴィレリアの瞳がゆらりと歪んだ。
瞳は涙の膜で覆われていた。
僕は、彼女の頭に手を置いた。
「......それでも、僕は本当の君が見たい。見てみたいんだ」
「!!リオネル様......??」
「正直まだ君の本性が分からない。......でも僕はもう一度だけ君を信じてみようと思う」
そう言うとヴィレリアは思いっきり僕に抱き着いてきた。
いきなりだったのもあって僕は思わず「ぐぇっ」と間抜けな声を出してしまった。
「本当に、ホントの本当に?!」
「あ、あぁ」
「~~!!嬉しいですわ!!」
「く、苦しい......」
先程までのしおらしさはどこへやら。
けれど、少しだけ旅をしていた頃の彼女に戻ったような気がした。
――もちろん足元の枷は健在だ。
僕が彼女のペットである事にも変わりはない。
それでも、この奇妙な新婚生活も悪くないとほんの少しだけ思ってしまったのであった。




