第四話
――翌朝
「......さま。リオネル様!」
「......ん?ヴィレイア?」
耳元で朝から元気のいい声が響いてきた。
もちろん、声の主はヴィレリアである。
「おはようございますわ♡」
「......おはよう。朝から元気だね」
まぁ、暗いため今が朝なのか夜なのかはわからない。
ヴィレリアが「おはよう」と言ったので今が朝だと思っただけである。
「そんな事より!今日はとっても"大事な日"なんですのよ!」
「"大事な日"?」
「皆さん!お入りになって!!」
ヴィレリアがそう言うと侍女の悪魔達が部屋へと入って来た。
その手には純黒のタキシードや、漆黒や黄金の小物が持たれていた。
「......ヴィレリア?これは一体?」
「今日はわたくし達の"結婚式"ですわ♡わたくしもこれから別室で着替えてまいりますわ。楽しみになさっててくださいな♡」
ヴィレリアはそう言い残すと、僕を置いて部屋を後にした。
ヴィレリアが部屋の扉を閉じた次の瞬間だった。
――たった一瞬で僕の衣装は結婚式の衣装へと替えられた。
「......凄いな」
思わず感嘆の声を漏らす。
すると侍女である悪魔達は照れ臭そうに頭を下げてきた。
悪魔のなせる業と言うわけか。
僕が感心していると、部屋の扉がノックされた。ヴィレリアならばノックなどしないだろう。
......となると――
「勇者よ。準備は整ったかな?」
「......魔王」
「む。もう"お義父さん"と呼んでも構わないのだぞ?」
......驚いた。魔王でもこのような冗談を言うなんて。
まぁ、死んでも"お義父さん"なんて呼ぶつもりはないが。
すると、廊下からバタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
そして次の瞬間、バーンと大きな音を立てて扉が開かれる。
――ヴィレリアだ。
「お父様!ひどいですわ!リオネル様のタキシード姿を最初に見るのはわたくしのはずでしたのに!!」
「すまんすまん。......おぉ。ヴィレリアよ、何と美しい......」
ヴィレリアは純黒に金の刺繍の入ったドレスに黄金に輝くティアラなどの小物で着飾っていた。
――確かにこれは......
「美しい......」
「え?」
「い、いや。何でもない。気にしないでくれ」
バカか僕は。
いくら聖女でも魔王の娘だぞ。
......美しいなどと口を滑らせてはならない。
「さぁさ。主役の準備が整ったのだ。集まってくれた民にお披露目と行こうではないか!」
そう言うと、僕らは魔王に連れられ玉座の間に連れて行かれた。
廊下を進んでいると、周囲には頭を深々と下げる悪魔達が整列している。
そしてついた玉座の間。
扉が開かれると同時に歓声が沸き起こっていた。
『魔聖女様!ご結婚おめでとうございます!!』
『誇り高き魔王様に、バンザーイ!!』
......何という事だろう。
こんなにも大勢の魔物は初めて見た。
それにしても、"魔聖女様"とは?
「ヴィレリア。"魔聖女"とは?」
「わたくしのことですわ。わたくしもお父様に血をいただいたので、立派な魔族ですのよ♡」
「これ。二人とも無駄口を叩くでない。さぁ、皆の前で誓いのキスを」
――まるで人間の様な事をするのだな。
そう思いながら僕らは口づけを交わした。
すると一瞬静かになったかと思いきや、地鳴りがする程の大歓声に包まれた。
魔物達は僕らを祝福している。
僕の隣には、かつて恋した聖女がいる。
――ただ一つ違うのは、その彼女の手には、僕の足の枷に繋がれた鎖が握られていること。
......僕は今日、魔王を討つ勇者でなく、魔王の娘に飼われる――。
彼女の"旦那様"になったのだった。




