第三話
「――僕は、ヴィレリアとの婚姻を......受け入れる」
「まぁ♡聞きまして、お父様?リオネル様は私と結婚してくださるって!!」
魔王はヴィレリアの頭を優しく撫でながら微笑んでいる。
――あの魔王が微笑んだ、だと?
「......魔王でもそんな顔するんだな」
「ん?あぁ。それは当たり前であろう。ヴィレリアは私にとって、可愛い可愛い娘なのだからな」
「血のつながりは気にしないのか?それにヴィレイアは"聖女"だぞ?」
僕は最大の疑問をぶつけた。
魔王にとっての敵である聖女をここまで猫可愛がる理由は、一体何なのか。
特別何かあるに違いない。
――そう思っていたのだが。
「理由など。互いに孤独な存在であったからだ。そこに親近感が沸いたに過ぎない」
「......ヴィレリアはどうしてそんなに魔王を父と慕う?」
「だって、お父様だけですもの。わたくしの味方になってくださったのは。......"聖女の力"ははたから見たら異端なようでしたの。それで気味悪がられて迫害されていた所に現れたのがお父様でした」
なるほど。互いの孤独を埋めるための"家族"となったと言うわけか。
......ヴィレリアは出会ったあの日から誰にでも優しい聖女であったと思ったが、その根底にあったのは魔王の存在なのだったのか。
「......ヴィレリア。君はどうして僕を"飼いたい"と?」
「だって、普通の恋愛なんてお別れが来るかもしれないじゃありませんか。それならいっそのこと飼ってしまえば貴方様は私だけのものになる!主導権を握るのはこのわたくしですわ♡」
「......その言い方だと、飽きたら捨てると言うようにも捉えられるね」
「?わたくしが?リオネル様を?あははは!ご冗談を!わたくし、一度に言ったものは決して手放さない主義ですのよ?」
それはそれで恐ろしい。
だが、この婚姻を飲めば魔物と化してしまうことは避けられる。
僕も勇者の端くれ。魔物となり人間を襲うことは避けたい。
「......婚姻は結ぼう。僕は君のものになる」
「まぁ♡嬉しいですわ♡」
「ただ......条件がある」
「「条件?」」
僕がそう言うと、二人揃って首を傾げた。
――僕が出す条件。それはただ一つ。
「人間界の平和を約束してくれ。それならば喜んでこの身を捧げよう」
「......お父様」
「む......。なかなかな条件を出してきたな。しかし愛するヴィレリアの為を思えば......仕方ない。人間界征服は諦めよう」
「!お父様!!大好きですわ♡」
――この身一つで人間界が救えるのであれば安いものだ。
「それで、この枷なのだが......」
「あぁ。外しはしませんわよ?いくら契約を結んだとは言え、貴方様はわたくしの可愛い可愛いペットなんですから♡」
あぁ、もう見ることもない神よ。どうか最後の願いを聞いてくれ。
――このイカれた聖女を私の初恋の彼女に戻してください




