第007話 主人
翌朝、私はシーツに包まれて母に抱きかかえられ初めて生まれた部屋を出た。
我々が住む2階から1階に降りて母と伴侶の男(私は彼を父と呼ぶことにした)は1階に住む住民たちに声をかけると私を隠すように建物を出た。
そして隣にある大きな屋敷に入ると長く続く廊下を歩き小ぢんまりとした部屋に入った。
父と母が緊張しているのがわかる。
二人は使用人だったのだろうか?
その子供がゴブリンだった場合私や両親はどうなるのだろうか。
私は不安になると、半眼(瞼を半分閉じて)で瞳孔を隠した。
ドアが開き不思議な血の匂いを纏ったヒトが2人が入ってきた。
明るい声でしかし不思議と歯切れの悪い父と母が使うものとは違う言語で二人に話しかけると
二人は頭を下げて礼をした。
男「オコサン、ブジ二 ウマレタンヤッテ?ホンマ二オメデトサン」
父と母「オオキニ」
はぁ? 今日本語だったよね? 関西弁?どうなってるんだ?
そして母は震える手で私を彼らのほうに向ける。
私は目をチラッと開けてみると肌の色は白く整った顔立ちの若い男女が私をのぞき込んでいた。
すると女の方から手をたたいて少し跳ねるようなしぐさで明るい声を出して男のほうに語り掛ける。
男もそれにこたえるように落ち着いた声で返し少し不思議な笑い声をあげた。
貴族の女「ワァ! イズネーワンデフ! ビビークリテー!」
貴族の男「イー! レー ラーズ デ トーステ ツーナ! キィチチチチチ」
おい!ちょっと待てお前ら今明らかに違う言語使ったろ!
勘弁してくれ言語に疎いんだよ。
父母でも違う言葉でしゃべっているのに、こちらの貴族らしい方々は別の言語を操るのか。
異世界ライフいろいろ終わったかもしれん。
しかし母と貴族の人たちの会話は明らかに関西弁だったよな?
そんなことを考えている間に気が付けば周りで忙しなく皆が動きだした。
この屋敷の主人らしき男は手を振り何かを母に合図すると私はシーツを取られ自力で立たされた。
すると貴族の女は小さめの服を持ってくると私を着せ替え人形のように着せては脱がせるという行為を繰り返した。
ぴったりの服を着せられると父は仕事を押し付けられたのか別行動となった。
私は母と貴族の女に連れられてある一室に入ると大きな机と鏡の前に立たされた。
すると再び上着を脱がされ真っ白いクリームのようなものを顔に塗りたくられた。
そして3人で鏡をのぞき込むと私は白粉を塗られた白い肌のエルフのような顔になるが胸から下がゴブリンなのでエルフの頭をゴブリンの体に取ってつけたようなバランスの悪い生き物になってしまった。
母と貴族の女は腹を抱えて笑い出し、これはダメだと手を振って「アカン、アカン」と言って否定した。
水が張った桶を母は持ってくると片手に鉄の棒を持って現れた。
鉄の棒の先端は蚊取り線香の渦巻きのように螺旋を描いている。
母はこの棒を貴族の女に渡すと見る見ると棒がオレンジ色に輝く。
そして棒を桶の水につけると「ジュゥ」っと音を立てて水がお湯に代わった。
お湯で濡らした布で私の白粉をふき取ると貴族の女は白いクリームに茶色い塗料を混ぜて母の腕に塗り色を確かめた。
そして母と同じ肌の色のクリームを私に塗りたくると先ほどのエルフよりいくらかマシな見た目になる。
そして貴族の女は私の頭の上に手をかざし「セノビシテナ」と私と母に言った。
私はまんま「背伸び」ということでつま先立ちになると母は「グー」と良くやったいう意味らしき声を出した。
つま先立ちになった私はいくらかバランスが取れて見えるらしい。再びを服を着なおすとダークエルフの子供のような出で立ちになる。この時から私は常に爪先立ちで歩かされることになった。
こうして貴族の女に連れられてある部屋に入ると貴族ほど豪華な服装ではないがスマートなスーツ姿の男が書斎のような一室で出迎えた。
男と貴族の女は何かを話た後、母と貴族の女は部屋を出て行ってしまった。
男は私を黒板の前に座らせて黒板に文字を書いた。
私には読めなかった。
すると男は自分を指して「ドクトル」と言った。
私は男を「ドクトル」と呼んだ。
すると「ドクトル」はしばらく考えたのち、目の前で本を開いた。
何やら図鑑のような魔物の一覧が載っている。
その中に「ダニ」のような魔物を指さし「メストル」と言った。
私はダニのような魔物を指し「メストル」と復唱すると「ドクトル」は頷いた。
そして次のページを開いたときダニが化粧をしてヒト型に擬態している様が描かれていた。
貴族の男、貴族の女、そして目の前の「ドクトル」はダニの魔物のようだ。
そしてダークエルフを見せられ、女を指し「ムームー」と呼ぶと「ドクトル」は頷き、ダークエルフの男を「ファーファー」と呼び指をさすと「ドクトル」は首を振った。
「ドクトル」がページをめくり私を指さして本の図の生き物を示した。
私は「ゴブリン・・・」とつぶやくとドクトルは頷いた。




