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魔族への誘い  作者: 銅 ボンド(アカガネ ボンド)
ようこそ魔族領へ!
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第002話 転生

胎児は夢を見るか? 

発狂しそうな小説にそんなことが書いてあった。 

私は発狂しておりません。



前身、ビルの崩壊に巻き込まれた30代の男は死んだと思われたが、

なぜか意識がネットに接続できる環境にある。

それ以上の情報はない。

少なくともあの状態では肉体が助かる見込みはないと思う。

多分脳味噌だけ残っているという勝手な推測の基、偉大なる知識の海にその意識を投じているだけだ。

私は発狂しておりません。



さておき無限ネットサーフはいろいろ飽きてきたので

著作権切れのテキスト化された小説を某ウェブサイトで読み漁っているわけで。

監視されていると思って個人を特定できるサイトやページにアクセスを避けているのだ。

結果あまり面白くないページやニュースサイトにしか目を通していないし、

肉体が無いからなのか感情が欠落しているのではと思える事態に不思議と冷静な自分がいる。

私は発狂しておりません。


いずれにしても、どの様な物語を読んだとしても今は心躍ることもなければ、

胸キュンすることもないわけですよ。

多分心臓がない。心は肉体の別のどこかにあるということだろうか?

魂と心は別物?よくわからない。


嘗てはホモ・サピエンス(ヒト)のオスであった私も試しに最近流行りの美人女優なんぞのホームページを拝見してみた。

ふむ「美しい!」「きれい!」「かわいい!」などの感想が出るわけもなく

「顔がバランスよく整っている」ぐらいしか思いつかなくなってしまった。

どこで落とした私の感情・・・・

私は発狂しておりません。



だがどういう訳だか時間が経つにつれ徐々に感覚が生じるようなってきている。

微量だが周りの振動を感じるのである。

そして「自分」の領域のような膜を感じていて物理的に外部から必要なものを取り込んでいる。

自分が安全だと感じる範囲または、自分が個として存在するための領域がありその周りに何かしらの餌となる栄養素が周りにあふれている。

私は原始的な生物になったのだろうか?それでも思考がネットにつながるのはなぜか?

疑問は尽きない。

私は発狂しておりません。



私はネットにつながったまま時刻を記録しておくことにした。

とりあえず今ネットに接続した日本時間UTC+9 は 西暦20xx年xx月xx日 19:38PMである。

ネットでテキストメモ残せるのみんなはご存じであろうか? 

ぜひブラウザのURLに入れてみてほしい『data:text/html,<html contenteditable>』

こうしてなんとなく毎日の記録と思考の整理のため私はメモ書きをつづけた。


すると日に日に周りの環境を感じ取れるようになる。

今確認できているのは鼓動の振動が二つ、

大きなものと小さいものを感じ始めると、

徐々にそれを音として捉えられるようになり、それを聴くことが日常となる。


今の私にあるのはひたすらに「この鼓動を感じ続けるために取り込まなきゃ!」という原始的な使命感のみ。

だが意識をしなくても体が自律的に周りから取り込むのでネットサーフしたり記録したりする日々が続く。


気が付けば一か月ほどか?

私はさらに広範囲の音を感じ取れるようになり手足の感覚が生まれる。

そして私は今転生して何らかの形で新しい生を受けることができたのだと思った。

私は原始的な生物ではないと確信を持った。

それは自分の体積の尺度で思いのままに動くことができないからだ。

私は今、何らかの理由で閉鎖されている空間にいる。

また「栄養素がもっと欲しい」という要求は絶え間なく沸き起こるが、獲物を探し取り込むという行動を必要とせず今は自然に自分の領域に存在する栄養素を取り込めているので満足感がある。

そしてなんとなくこの空間にいる間は安全であると大きな振動を聴いている間は私は安心するのである。


私の意識の中で考えられる可能性は3つ・・・

卵の中にいるか

母親の胎内に居るか

人工的な試験管の中にいるか


可能性が高いのが試験管である。

それはおそらく自分の鼓動である振動と、更に大きな振動を直に感じるからだ。

これは超科学の世界かな~、ネットに繋がるし。


だが懸念事項がある悪の組織が私の肉体を改造する目的で拉致、監禁していたらどうしよう。 

体を与えられてもモブ気質の私はただの消耗品の戦闘員で「イーッ」しか言えなくなっている可能性が非常に高い。

まぁ改造されてたら「1号」のような正義感を捨てて逃げることにしよう。


私は発狂しておりません。

ドグラ・マグラを読破しておりません。

途中まで読んでますが最後まで読むのが怖くなりました。


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