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魔族への誘い  作者: 銅 ボンド(アカガネ ボンド)
ようこそ魔族領へ!
11/14

第011話 訓練

褐色肌のエルフの母からゴブリンとして生を受けてから早くも2ヶ月。

私は領主に麻酔針で麻痺させられ無理矢理にも生まれ落ちた大陸の王都へ連れて来られると転生者認定された。


現在1人兵舎と思われる建物の教室でポツンと座る事3時間。

1人教室と言う大きな空間ではネットがあっても寂しいのだ。

ましてや生まれたてのゴブリンが右も左もわからずただ放置されていると言うこの状況。耐えがたし。


するとガラリと扉が開く音がすると反射的に「起立」と叫び立ち上がってしまった。

転生者のチート能力「脳内ネット」で異世界から繋がる21世紀の地球のSNSで小学校の思い出スレッドを立ち上げ、今はもうオフ会も叶わぬであろう人達と雑談に熱中したのは不味かったか?


メイドの服を着たウサギの獣人が怯えた様にお盆に乗った食器をカタカタ言わせながら食事を私の机の上に置くと早速さと去っていく。

お礼を言い忘れた事に気づき既に教室の外に居るウサギの獣人に「有難うございますっ!」と叫んでお礼を言って席に着く。


ふぅ、食事をわざわざ持ってきてくれたらしく授業の時間などではないらしい。


その後、ウサギの獣人は「あの幼体で軍人如き規律、あれは『軍人(ソルジャー)』だ」とメイド仲間に伝えたところ伝達がどこかで曲がり南の中央都市全域に噂が流れる頃にはゴブリン将軍(ジェネラル)がトロッター(巡る者)として密かに滞在していると囁かれた。


そんな大事件の余震が私の預かり知らぬ地層で起きているとも夢にも思わず1人教室で給食を楽しんでいた。

都市の食事とあって中々の味であった。

考えてみればギガカリウス家の別邸で食べていた食べ物は味っ気のない素朴で単調な食べ物ばかりであった。

その点、都市のしかも宮殿の兵站から支給されていると思われるこの食事に毎日ありつけると考えると都市の生活も案外悪い物でもないと思えて来た。


いつか余裕が出来たら母だけを呼び寄せることもできるかもしれない、などと妄想を膨らませて食事を楽しんだ。


食事も終わり卓上に空の配膳を置いたまま教師が入って来ては面倒な事になりそうなので皿を綺麗に重ねて隅っこの机に置いておく。


さてこのままどうしたものかと思案に暮れていると黒板にチョークと黒板消しを見つける。

黒板に覚えたての文字を書き消すと言う作業を繰り返すと白いチョークの粉がたっぷりついた黒板消しを見て抗いがたい衝(・)動(・)に駆られる。


私は椅子をドアのところに移動させるとその上に登り黒板消しを少し開けたドアに挟む。

これで次に入って来た者はチョークまみれと言うよくある悪戯だ。


私は早く獲物が来ないかなーと思っていると廊下からツカツカ歩いてくる足跡が聞こえた。

人物が近づくに連れ私は少しがっかりした。

黒板消しを仕掛けた反対側から歩いてくるからだ。

そしてその人物とは私に「ゲェ」っと汚い声を出した美女だった。 

教室に入ってくるとやる気のなさそうに

「今日は帰って寝ろ!授業は明日からだ。夜明けと共に兵舎の前に集合しろ。」と言った。


彼女が先生か。

先生はそのまま教室を出ていく時に私も彼女の後について出ようとすると彼女は私に「私に近づくな。反対側から出ればいいだろう」と私を突き放した。


ちょっとショック。

と落ち込んで教室を出る時、頭に黒板消しが落ちて来た。


先生は「ぷふっ(笑)」っと吐き出すと

「ゴブリンは間抜けだ。仕掛けた罠を忘れ、自分で引っ掛かるのだからな。ぷふっ(笑)」


ムカつく笑い方だ。


その後私は兵舎で働くメイドらしき獣人に声をかけると個室の寝室を使う様に案内された。そうして私はその日は新しいフカフカのベッドでネットサーフ(睡眠)に落ちた。


翌朝、私は兵舎の入り口に来ると空の台車が置いてあった。

なんだろうと思って近づいて見ると上の方から

「遅い!」っと声が掛かる。

見上げて見ると兵舎の2階から薄いドレスのような寝巻き姿の先生が上半身だけを乗り出していた。

「明日は2刻早く来い!訓練を始める!先ずは体力作りだ。台車を引いて街を回ってこい!後は街の住民が協力してくれる!行け!」

先生は乗馬用の長鞭を持っていてヒュッと風を切る様な音を鳴らして鞭を払い街の方を指した。

先生の薄い寝巻きの上からでも分かる形の良い亜人の胸が腕の動きに合わせて揺れていた。

私が台車を引き始めると、先生は欠伸をして部屋に引っ込んだ。


取り敢えず言われた通りに台車を押して街に出ると住民が家の前で早くこっちへ来いと急かしている。

そして強烈な匂いを放つ桶を台車に乗せるとさっさと行けっと急かされる。


うんこの回収かよ。どこの中世だ?


逆らうことも出来ず、遅い!遅い!と言われながらも懸命に台車を引くが街の途中まで来ると増えた桶と街中のうんこで台車の重さが尋常じゃない。


幼児虐待だ!


っと言いたくなるが周りの大人の遅い!のクレームも絶えず、逆らう事も出来ない。そして城下町を通り過ぎて城壁まで来るとさっさと出ろと言われた。


城壁を出ると外には沢山のボロ切れを纏った人たちがいてこれまた遅い!と言って各々桶を取り彼らが持ってきたであろう空の桶に私が運んだ桶の中身を移し替えると散らばる様に去っていった。

再び台車を引き城下町街に戻ると、それぞれ町の人たちが台車に積まれ空になった桶を回収して去っていく。


これ朝のルーチンになるの?と思うと気が滅入る。


私が空の台車を引いて兵舎に戻る頃にはお昼近くまでかかってしまった。

私は兵舎に入ると湯浴みをして汗を流すと擬態のクリームで身なりを整えてから教室に入るとそこには8人のウサギの獣人のメイドがそれぞれ魔族と思わしき幼児や卵を抱えて座っていた。


そして先生は手に馬用の長鞭をピシッと教壇に打ち付けると嫌味な自己紹介を挟み初めての授業を開始するのであった。

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