8 分かってんでしょ
夜会。この小説の世界じゃあ、婚約者を連れないと入れないらしい。その夜会での情報の伝わりははやいとか。
「今日も公爵様素敵〜。」
「ねぇ、見て。公爵様のお隣にいるお方。すごく綺麗ですわ〜。」
「なんか婚約者らしいのよ!」
ある女の発言により、夜会の場ではその話が絶たないのであった。
痛い…。
私は耳にガーネット色のピアスをつけているのであった。私は公爵様に怒っていた。
3・2・1でって言ったのに…。なんで2の終わりらへんでやるのよ!
「どうかされましたか?和が愛しい婚約者さん。」
腹黒めっ。
「あら。ご心配をなさってくださってありがとうございます。公爵様…ではなく、アラン。」
私が公爵様を呼び捨てをしたことにより、周囲は一層に騒がしくなった。
「おお!これは、公爵様。こちらが婚約者様ですか?」
パーティーの主催であるゴウェイン伯爵が挨拶をしてくるのであった。
「いや〜、しかしお美しい姫君だ。公爵様はよくお見つけになられましたね。」
ゴウェイン伯爵は自身のひげを片手で触り、もう片方ではワイングラスを持っているのだった。ゴウェインは私にワイングラスを渡してくるのであった。
「こんなに素晴らしいお方に出会えて、私は幸せものですね。」
私はその言葉に咳き込んでしまう。
「だ、大丈夫ですか?姫君。」
「いつものことだ。大丈夫だろう。」
そういえば、私、いっつもこういうので吹き出したり咳き込んでいるよね?
「いつものことですって。」
「まさか、普段からご一緒なのですの?」
なんか、どんどん噂が増えて行く気がする予感…。
「おい、フィールってあんな雰囲気だったか?」
「もっと、なんか…こう。うるさくて、可愛い生命体…って感じだったよな?」
「じゃああれは誰なんだ!おしとやかで美しい、気品のある令嬢は!」
フィールだが?まぁ、中身は違うけど。
「あのピアス…、お互いつけている宝石がお互いの瞳の色ですの!?」
「しかも、片方だけにつけていらして…!」
やっぱり、ピアス効果はあったようね…。
私がワインを飲みながら、辺りを見渡していると、なにやら男性陣が集まっているのを目撃するのであった。
あの人達…多分、国王と親しかった人物たちじゃない?
私は恐る恐る男性陣の方の方に置いてあるケーキに近づき、切り分けながら耳を傾ける。
「王もお気の毒に…。」
「よもや毒を盛られるとは。」
「フィールという令嬢…。容疑者じゃ、なかったのか?」
「馬鹿言え。公爵様の婚約者なのだぞ?」
「じゃあ、誰が犯人なんだ!」
それが私にもわからないのよね〜。
私はケーキを頬張る。
「…毒が盛られたとなれば、王が恨まれていた、ということだろう?」
「と、いいますと?」
「王と接触していた者がおそらく犯人なのだろう。ならば、これまで王と接触していた人物を当たればいいんじゃないか!?」
「決めつけるのははやいですな。第一、接触していた人物の記録など、誰がしていて…。」
そうよ!そんな都合のいい人物、いたら苦労しな…。あ!?一人いるかも!確か名前は…。
「王の専属秘書…、オリビア・エンライトだ。」
「そう!その人よ!」
私は思わず、男性陣の話にそう言ってしまう。男性陣は私を見るなり目を丸くしていた。
…あ。これ、気まずいやつだ…。
「ご無礼な態度をお許しくださいませ、パペリット伯爵、シリエル伯爵、ヘンダーセル伯爵。」
私は頭を下げて、お詫びをするのであった。3人は私の発言に驚いた表情を見せた。
「な、なぜ、私どもの名前を!?」
舐めてんの?こいつら。さっき挨拶したじゃん。
「あらあら、シリエル伯爵。先程、挨拶したばかりではないですか。」
私は口元に手を当てながらニコッと笑ってそう言うのであった。
「この夜会の場でこれだけの人数の中、名前を覚えてくださるなんて…!」
パペリット伯爵は涙目でこちらを見ているのであった。
まぁ、小説の中でも、出てきたから覚えてるんだけどね。
パペリット伯爵は私の手を取り、口を開くのであった。
「是非とも今度我が家へいらしてください!」
私はその言葉に「はい…。是非…。」っと発する。すると、シリエル伯爵とヘンダーセル伯爵も続けて言うのだった。
ったく、どんだけ家に招き入れたいの。
「では、フィールとともに私も同席しても構わないませんか?」
突然公爵様が私の背後に登場をし、そう発するのであった。
い、いつの間に!?しかも、背高っ!
公爵様の言葉にトリプル伯爵たちはなにやら慌てているのであった。
「こ、公爵様が足を運んでくれるとは嬉しい限りです!」
…なんで慌てているんだ?
私は内心でそう思いながらも公爵様の顔を見る。私は公爵様に「邪魔するな!」という顔を向けた。公爵様は私の顔を見るなり目を開くのであった。
あれ?流石の公爵様も、この表情にはびっくりなのかな?
すると公爵様はフッと笑みを浮かべ、白い手袋をした手で私の顔に手を伸ばす。
「!?」
これも、なにかの演技!?にしても、急に触るなんておかしいでしょ!?え、ちょ、は?どーゆこと!?
私が驚きのあまりに目をつぶると公爵様は私の口元に手を当て、なにかを拭っているのだった。
「口の端にクリームがついていたようだが?」
公爵様はそう言って、にこやかな表情を向ける。この会場全体の視線も温かなものもあれば、殺意にも満ちていた。
そんななか、私は顔を赤面させている。
うっそでしょ!?私、さっきから口の端にクリームがついたままトリプル伯爵と話しての?じゃあ、さっき、公爵様が驚いてたのは私が口の端にクリームが付いているのに気づいていなかったから…!?
私は公爵様を見るとにこやかな表情が悪魔の笑みに見えてしまうのであった。
絶対、私の今の気持ち、分かってんでしょ!もぉ!




