6 な、なにその意味
チリンと宝石店の扉がなる音。眼鏡をかけた宝石店の店主はその音を聞き、目を開く。ここは、事前に予約制の宝石店だ。おそらく、この後の予約はなかったのだろう。
不思議と思って、向かうとそこに現れた人物はとんでもない方であった。
「こ、こ、公爵様!?」
「こんにちわ。イザベラ様。突然の訪問申し訳ございません。実は、少々宝石を購入したくて。」
腹黒。
私は自身の横で宝石店の店主に向かって、笑顔を向けて話をする公爵様を見ているのであった。
アポ無しで来るなんて…。こいつ、私より思ったらすぐ行動タイプなんじゃないの?
「それで…。そちらの姫君は?」
「あぁ…。」
宝石店の店主のその質問に対し、公爵様は私を自身の元へ引き寄せるのであった。
「私の婚約者です。」
腹黒。
公爵様のその言葉に店主さんの眼鏡に少しヒビが入った。
な、なんで割れたんだ?
「こ、公爵様に婚約者…ですか!?」
店主はどうも驚いている様子。
そりゃあ、そうよね〜。いつだって女からの誘いには断り続けた男がどこぞの誰かも分からない子爵令嬢を婚約者にするなんて誰も思わないもの。
私は公爵様の腕に引き寄せられながらも、そのようなことを考えていた。
「はじめまして。フィール・スタレンスです。」
私は公爵様と同じような笑みを浮かべてそう言った。
「これは、これは。フィール姫君。今日はなぜこちらに?」
「実は…。」
私は後日、婚約発表をする際に公爵様とお揃いのものを身に着けたいと言うのだた。
まぁ、私としては宝石じゃなくていいのだけれど。
「なるほど!でしたら、私にお任せください!」
店主は自身の胸元に手を当ててはっきりとそう言うのだった。私と公爵様はそのやる気に対し、さっきと同じような笑みを浮かべる。
てきとうでいいよ、てきとうで。
「ピアスか、イヤリングですと…。ピアスがどうでしょうか?その方が1日中つけて要られますし、フィール様は髪が長くいらっしゃるので、ピアスの方が絡まることはないかと…。」
「では、そちらでお願い致します。」
理由がごもっともだ。プロだ。
「かしこまりました。色はどうしますか?」
私はなんでもいいんだけど…。
私は公爵様に目を向ける。すると、公爵様も私と同じ考えの目をしている。
「イザベラ様のお任せでもよろしいでしょうか?」
私の言葉にイザベラは「はいっ!」というのだった。
「すぐにお持ち致しますっ!」
私はイザベラ様が裏方へ行くのを見た後に口を開く。
「あの…。公爵様?ここ、予約制の宝石店ですよね?いつ、ご予約を?」
私の言葉に公爵様はニッコリと笑みを返す。
あ、こいつ。絶対に予約してないじゃん…。イザベラ様…、ごめんさい。
なんでもいいって言った私が馬鹿だったかも知れない。
私は目の前に置かれたピアスを見る。目の前のピアスについた宝石はペールグリーンとガーネット色の宝石。
「実は最近、お互いの瞳の色の宝石を身につけるのが流行っているのです!公爵様と姫君にすごくお似合いになると思いますよ!」
よく小説にある定番の設定ね。
「片耳だけなのですか?」
私の質問に店主はニコッと笑みを浮かべる。
「男性が左耳、女性が右耳にピアスを着けると「守る人・守られる人」を意味しているのですよ。」
私はその言葉に思わず咳き込んでしまう。
な、なにその意味。
私は公爵様に向かって首を横に振ると、公爵様は満面な笑みを浮かべ、店主に「では、これを購入します。」と言うのであった。
な、なに言ってんだよぉ!!両耳でいいだろ!ピアス!
「お買い上げありがとうございます!」
店主も満面な笑みを浮かべてそう言うのであった。




