3 知ってるわよ
「お前はしばらくここにいろ。」
私は傭兵にそう言われ、王宮の地下牢にて監禁されるのであった。
「といっても、一生だろうが。王が助かっている間は王はたとえ、自分の身が危機的状況でも女は処刑をしない。…現王が女好きで運もいいことだな。」
現王である王は相当な女好きだ。それは、小説でも書いてあった。王が殺害される以前にも何度か王は殺害未遂にあっていた。だが彼は女好きだったため、処刑とまではせず、刑務所送りになったという。
優しいのも懲り懲りよね〜。あ〜、女に生まれてよかった〜。
私は牢獄の中であくびをしながら、身体を伸ばしていた。
処刑されないって聞いて、なんか安心しちゃった。…っていうことは、王は助かっているのよね?
私は安堵のため息をつき、牢屋の外を頬杖をつきながら、見ているのであった。
私がいなかったら、王は死んでいたっていうのに、何様よ。それに、証拠もなしで私を連行するなんて失礼じゃない?それに、いつの間にか、ウェイターはどこかに行っちゃってるし。
「守備の方は?」
「みなが主の方へ向いていらしたので油断した、とのことです。」
薄暗い廊下を歩きながら、自身の護衛である《トーマス》のその発言を聞き、アランはため息をついている。
「王を殺したであろう容疑のかかった女が地下牢に監禁されているとのことです。」
アランとトーマスは、地下牢に繋がる階段を歩いていく。
「証拠がないのか?」
「…はい。王が倒れる直後、近くにいた怪しい人物はその女だけだったそうで…。」
「分かった。」
面倒なことだ。
アランは尋問の天才である。おそらく、ここへ来たのも、女に証拠がない以上、吐かさざる負えないからという依頼でここに来たのだろう。
アランとトーマスは地下牢に向かっていった。
私は足音が聞こえるなり、目を覚ます。
こんな時間に一体誰よ。
私は目をこすりながら、牢の鉄格子の前にいる人物を見る。
!? アラン!?
「はじめまして。私は公爵であるアラン・アントニーと申します。」
知ってるわよ、もう。
アランは笑みを浮かべながらそう言うのだった。一見、どこからどう見ても美形イケメンの笑み。だが、私は知っている。
あの男のこの笑みもすべて偽りということを。
「ご挨拶が遅れ、誠に申し訳ございません。私はフィール・スタレンスと申します。」
私はドレスの裾を掴み、丁重に挨拶をする。
「これは、これは。実に礼儀の良いご令嬢なことで。」
流石腹黒。偽りの笑みも完璧なことね。
小説では、この男は尋問が特技だと書かれているのであった。だから、主人公であるエミリアが危機的状況にあったとき、尋問を行ったとか。
尋問が特技って…。強すぎるでしょ?
「それで。公爵様はどういったご要件で?」
私の質問に公爵様はフッと柔らかな笑みを浮かべる。
「貴方様もご存知だとは思いますが、我が国の国王の殺人未遂がこの王宮で行われていたパーティーで起こってしまいまして…。その調査であなたに容疑がかかっているため、事情聴取という形で訪れさせてもらいました。」
いや、無理あるだろ。絶対に証拠がなかったから、私に吐かせようとしてるよね!?
私は内心でそう思いながらも、平然を装って冷静に微笑みながら口を開く。
「姫君は事件当時王の目の前にいたそうですね?」
「はい。目の前で拝見致しましたわ。王が無事だとよいのですが…。」
「王が倒れる直前に王の持っていたワイングラスを奪い取ったと?」
「実はウェイトレスさんが瓶を持っていらっしゃいまして…。それでもしや、ワイングラスの中身に異物を入れた可能性があると考えまして…。」
「確証もないのに奪い取ったのですか?」
いや、結構あったよ。小説のシナリオ的に知ってました〜。とは、いえないし!どうせ、馬鹿にされるだけでしょ!?
「実は、私。思ったらすぐ行動タイプですので…。」
いやいや無理があるよ私!こんな嘘、尋問のプロがすぐ見破るに決まってるじゃん!
「ほう。」
公爵様は鉄格子の側に近づいてきて、私の腕を少し引き、耳元でこう囁く。
「はやく吐いたほうがいい。お前の家族がどうなるか分からないからな。」
公爵様の声色と顔が変わったのはそのときであった。
ようやく本性がお出ましのようね。やっぱり仮面の下には悪魔が眠っていたみたい。
私は公爵様の言葉に少しうつむきながら考えている。
その脅しは私には通用しないわよ。
「どうぞ、ご勝手に。」
私は公爵様の手を振り払い、そう言った。
「私には必要ない存在ですので。」
正直1人で生きていけるし。
私の言葉に公爵様とその護衛騎士であろうお方が驚きの様子を見せるのであった。
「尋問は以上ですか?」
私は腕を組んでそう公爵様に呟くのであった。おそらく、公爵様に向かってこんな態度を取る女性は私ぐらいだろう。当たり前だ。この国の人気者であるアランが女性から好かれないなどあり得ないに近い存在と言ってもいいだろう。
さぁ?これで、私を見損なったでしょう?さっさと帰った帰った。私はこの牢獄で満喫した暮らしを送れるように準備しなきゃなんだから。
私は横目でチラッ公爵様を見るのであった。
公爵様は怒ると思っていたが、なぜか急に笑いだすのであった。
どういうこと!?なんで笑うの!笑う要素一個もないじゃん!
どうやら、護衛騎士もこの状況についていけていない様子で驚いた表情を見せている。
「俺はお前のような女ははじめてみた。」
私は一人称が「私」から、「俺」に変わったのを見過ごさないのであった。
公爵様にこんな態度を出す女ははじめてだったのかしら?…それでもこんな笑うか?
「お前はつまり、「殺人未遂を起こしていない」と、言うのか?」
公爵様の質問に対し、私は「はい。」と答える。
「このままだと、お前は処刑されるかもだぞ?」
公爵様のその言葉に私は発狂をした顔になるのであった。
ど、ど、ど、どういうこと!?流石の王子もキレた!?とか!?
「王は反対するだろうが、王派の連中が嘆いている。」
どうしよう。この人生でも、大人しく死ねってわけ?冗談じゃない。
「そこで、どうだ?一つ俺と賭けをしないか?」
私はその言葉に首を傾げながらも耳を傾けるのであった。
「俺と1年間婚約するのはどうだ?そうすれば1年はお前にかかっている容疑に目を瞑るよう、促してやろう。」
私はその言葉に唖然としてしまう。
「そして、お前は1年以内に真犯人を俺の前に差し出すことができれば勝ち。婚約を破棄したあとは好きにして良い。ただし、できなければ…。分かっているな?」
私はその提案に思わず息を呑んでしまう。
「…公爵様へのメリットは?」
「あぁ。丁度、婚約者を作ってしたいことがあった。それといい女避けになる。いい機会だ。」
私はその言葉に思わず「あ、はぁ。」とてきとうに答えてしまう。
いやいやいや。私を殺す予定の男と婚約をしろ?ムリムリムリ。でも…。
私は自分の拳を握りしめる。
このままだったら、私は処刑。なにもしないで死ねっていうの?冤罪で?そんなの嫌!
私は公爵様に真っすぐな目を向けて口を開く。
「その賭け、受けてたちます!」
私の言葉に公爵様はニヤっと笑みを浮かべた。
「そうきたな。傭兵、姫君を出せ。」
傭兵はその言葉通り、私を牢から出してくれる。
「頑張ってくださいね。真犯人を見つけることを。」
公爵様は声色をそう変えて私にそう言うのだった。
「腹黒…。」
私は静かにそう呟くのであった。
お久しぶりですっ!夏休み中サボってた分、しばらく投稿頑張ります。
…んまぁ、この作品はあんまり期待しないでください。




